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日本人未踏の世界ウェルター級王座狙う佐々木尽が小原佳太と国内最強決定戦

2023 2/17 06:00SPAIA編集部
佐々木尽と小原佳太,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

4月8日にWBOアジアパシフィック・ウェルター級王座戦

日本ボクシング界で事実上、最重量のミドル級までで唯一世界王者が誕生していないのがウェルター級だ。リミットは147ポンド(66.68キロ)。最多の20人が世界王者となっているフライ級(50.8キロ)を始め、軽量級では多くのボクサーがベルトを巻いてきたが、ウェルター級だけは世界挑戦すら難しい「高い壁」となっている。

4月8日、東京・有明アリーナで行われるWBOアジアパシフィックウェルター級タイトルマッチで、王者・佐々木尽(21=八王子中屋)が元王者・小原佳太(36=三迫)の挑戦を受ける。まさしく日本ウェルター級の頂上決戦と言える一戦は、同じリングで行われる那須川天心(24=帝拳)のデビュー戦に見劣りしない注目のファイトだ。

2月13日の会見で「日本初のウェルター級世界王者に輝く男、佐々木尽です」と自己紹介した佐々木は、2018年8月にプロデビュー。2021年10月の日本・WBOアジアパシフィックスーパーライト級王座決定戦では平岡アンディ(26=大橋)に11回TKO負けしたが、2023年1月にWBOアジアパシフィックウェルター級王者・豊嶋亮太(27=帝拳)に1回TKO勝ちで王座を獲得した。

最大の魅力は14勝(13KO)1敗1分の戦績が示す通り、重量級らしい破格のパンチ力だ。特に左フックは強烈で、豊嶋を1回で倒した試合は圧巻だった。ガードを固めるディフェンスは攻め込まれやすく、平岡戦のように打たれると脆さを露呈することもあるが、まだ21歳と若いだけに今後の成長が見込める。

世界挑戦経験もある小原

一方の小原は黒沢尻工から東洋大に進学し、国体優勝などアマチュアで70戦の実績を残してプロ転向。2010年8月にプロデビューし、2013年4月に日本スーパーライト級王座、2014年4月に東洋太平洋スーパーライト級王座を獲得した。

2016年9月にはモスクワで世界初挑戦したが、IBFスーパーライト級王者エドゥアルド・トロヤノフスキー(ロシア)に2回TKO負け。その後、1階級上げて2017年8月にWBOアジアパシフィックウェルター級王座を獲得した。

しかし、2019年3月には米フィラデルフィアで行われたクドラティーリョ・アブドカクロフ(ウズベキスタン)とのIBFウェルター級挑戦者決定戦で12回判定負け。2020年2月に永野祐樹に7回TKO勝ちで日本ウェルター級王座を獲得した。

アマチュアも含めて長く第一線で活躍してきたことを裏付けるかのような正統派のボクサー。好戦的な佐々木とは真逆のタイプだが、戦績は26勝(23KO)4敗1分と一発当たれば倒せるパワーを秘めている。

経験の小原か、勢いの佐々木か

試合は重量級ならではの見応え十分の攻防が展開されるだろう。距離を詰めたい佐々木が前に出て、序盤は速い左ジャブでアウトボクシングをしたい小原の駆け引きは、両者とも一発で終わらせるパンチ力を持つだけに一瞬たりとも気が抜けない。

経験と技術では小原にやや分があるが、勢いと成長性で佐々木がノックアウトする可能性も十分。2人が戦って判定までいく可能性は低く、いずれにしてもKO決着だろう。

佐々木は「那須川天心選手のデビュー戦で注目度が高いんで、僕にとってもたくさんのお客さんに見てもらえるチャンス。ここで一番輝く試合を見せて、皆さんの脳内にインプットするような衝撃的な試合を見せたい」と意気込む。

対する小原は「また小原が若者の夢を摘むのかという試合だと思います。これに勝っても多分まだ世界は見えない。でも、チャンスは近付くと思うし、次につながる試合だと思います」とベテランらしく落ち着いた口調で語った。

世界王者はパウンド・フォー・パウンド3位と4位

この試合の意味を問われた佐々木は「世界への切符、ですね」と先を見据えるものの、小原が指摘するように、どちらが「日本最強」を証明してもウェルター級で世界挑戦するのは簡単ではない。

現在、世界タイトルを保持するのはWBA・WBC・IBFがエロール・スペンス・ジュニア(アメリカ)。28戦全勝(22KO)のレコードを誇り、世界で最も権威があるとされるボクシング誌「ザ・リング」のパウンド・フォー・パウンド(PFP)で4位にランクされる世界的強豪だ。

さらにWBO王者はPFP3位のテレンス・クロフォード(アメリカ)。こちらはスーパーライト級で4団体統一し、38戦全勝(29KO)と負け知らずだ。

現在、佐々木はWBA14位、小原はWBC18位、WBO8位にランクされており、勝った方はランキングも上昇するだろう。とはいえ、全階級を通じてもトップクラスの王者と世界戦で戦うには、さらに海外の上位ランカーに勝つなどいくつものハードルをクリアする必要がある。

先はまだまだ長いが、まずは「日本最強」を証明しないと何も始まらない。KO必至のウェルター級頂上決戦に注目だ。

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