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バスケBリーグCS展望、激動のシーズンで最後に笑うのは?

2022 5/12 11:00ヨシモトカズキ
千葉ジェッツの富樫勇樹,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

最終節まで決まらなかったCS対戦カード、13日開幕

今シーズンのBリーグは新型コロナウイルスの影響、中でもオミクロン株が主流になった1月以降に試合中止が相次いだ。感染拡大したチームはもちろん、試合がない期間が長かったチームも選手のコンディション調整には手を焼いたことだろう。4月以降は感染が落ち着き、代替試合も含めてようやく連戦をこなしている状況だ。

消滅している試合もあり、当初予定されていた60試合をこなせないクラブが多く、最も試合数が少ない千葉ジェッツは15試合が消化できないままシーズンが終了。順位の確定も難しく、最終節までチャンピオンシップ(CS)のカードが決まらなかった。

特にワイルドカード争いは混迷を極め、2つ目の椅子をシーホース三河、サンロッカーズ渋谷、秋田ノーザンハピネッツで争っていたが、最終戦で秋田が椅子を勝ち取り初出場を決めた。また東地区の優勝も最終戦で千葉が勝ち取るなど、最後節まで出場クラブとCSの対戦カードが決まらなかったのは史上初。それだけ混戦だったと言えるだろう。

上位8チームによるCSは5月13日から始まる。各カードの見どころを紹介する。

3季連続敗退の屈辱晴らしたい琉球、秋田は3Pシュートに活路

その中で一足早く地区優勝を決め、CSの第1シードを獲得したのが琉球ゴールデンキングスだ。終盤は日本人選手のケガに苦しんだものの、外国籍選手が安定した活躍を見せ9割近い勝率(.875)を記録した。

かつては得点力不足に悩まされていたが、昨シーズン#13ドウェイン・エバンス、#30今村佳太が加入し、Bリーグ入り後初めてチーム平均得点が80点台に(82.8)。今シーズンは#4コー・フリッピン、#7アレン・ダーラムが加わったことで、84.4と数字をさらに伸ばした。

強固なディフェンスをウリにしていた堅実なチームから、今では爆発力も期待できるチームに。今シーズンこそ3季連続で敗れているセミファイナルを勝ち抜き、ファイナルへ歩みを進めたい。

そして最高勝率を残した琉球に対するのが秋田だ。争っていた3クラブの中で最も不利な状況だったが、三河とSR渋谷が最終節に2連敗した一方で秋田は連勝し、初のCS出場を決めた。

前田顕蔵ヘッドコーチの下、堅いディフェンスを持ち味としている秋田は今シーズンも失点でリーグ4位の75.7、スティールはリーグトップタイの8.9本だ。また#5田口成浩、#7ジョーダン・グリン、#51古川孝敏の3Pシュートも脅威で、こちらはリーグ1位の37.8%を誇る。

琉球が攻守ともに優勢ではあるが、激戦を勝ち抜いた秋田の勢いは侮れず、秋田は3Pシュート次第で勝機が見えてくるだろう。

初出場の島根と経験豊富なA東京、ケガ人の復帰がカギ

続いての山は西地区2位の島根スサノオマジックと東地区3位のアルバルク東京だ。

島根は#3安藤誓哉、#14金丸晃輔を補強して今オフの主役となり、シーズンに入っても安定した成績を残した。リーグ4位の86.9点を構成するのは、安藤と金丸そして外国籍選手3名だが、中でも注目は#7ペリン・ビュフォードだ。

ビュフォードはチーム事情でベンチ出場が多かったが、身体能力を生かしたドライブに、リバウンド、アシストと様々なプレーをこなす。198cmのSFで日本人とマッチアップすることが多く、対峙する選手たちは手を焼く存在だ。

3年ぶりの王者を目指すA東京は、#11セバスチャン・サイズ、#22ライアン・ロシターなどエース級の選手をそろえ、優勝への意気込みが感じられた。しかし、なかなか噛み合わず、追い打ちをかけるようにロシターと#53アレックス・カークが負傷で終盤は欠場。最後の10試合を5勝5敗で終えている。

全てはこの2選手が復帰できるかにかかっており、不在となればA東京はかなり不利な状況になる。復帰を願いながら、不在の間に成長を遂げた#8吉井裕鷹、#21平岩玄らでインサイドを踏ん張りたい。

2冠を目指す川崎、名古屋Dとのオフェンスの戦いに

天皇杯との2冠を目指す川崎ブレイブサンダース。絶対的な得点源の#22ニック・ファジーカス、スタメンに定着した#0藤井祐眞が10.5から14.1に得点を伸ばすなど、攻撃力が魅力のチーム。平均88.2得点はリーグNo.1だ。

さらにはブロックが得意の#35ジョーダン・ヒース、ベストディフェンダーに2年連続で輝いている藤井、迫力満点の#7篠山竜青を軸にディフェンスも強固だ。見据えるのは優勝しかない。

ただしクォーターファイナルで相まみえる名古屋ダイヤモンドドルフィンズも、平均得点がリーグ3位の87.4と、攻撃を武器としている。絶対的な得点源はいないものの、外国籍選手から日本人選手まで平均的に得点を稼いでいる。

気になるのはA東京と同様に外国籍選手のケガで、#4コティ・クラーク、#16オヴィ・ソコが終盤に欠場。それでも琉球に勝利するなど、限られた戦力でも勝ち切る力はある。しかし川崎は高さを武器にしており、外国籍選手の復帰は勝利のためには欠かせないピースになるだろう。

川崎が優位ではあるが、オフェンスを指揮する#2齋藤拓実や#3伊藤達哉の若きガード陣が繰り出すゲームメイクに期待したい。

直接対決は五分、CSを占うシリーズとなる千葉vs宇都宮

最後の山は昨シーズンのファイナルの再戦となる千葉ジェッツと宇都宮ブレックスの対戦。このシリーズで最注目のカードだ。

東地区で優勝した千葉は今シーズンも#2富樫勇樹を軸にした得点力が武器で、88.1得点はリーグ2位、オフェンスレーティング113.5はリーグトップだ。今シーズンより加入した#33ジョン・ムーニー、#34クリストファー・スミスも共に平均得点15点以上と貢献し、#13大倉颯太ら若い選手も台頭。シーズン勝率は琉球に次ぐ2位となったが、王者に死角はない。

特に千葉は新型コロナウイルスの影響を最も受けているクラブで、60試合中15試合が中止に。試合がコンスタントに実施されずコンディション調整が難しい中、立派な数字を残している。

対する宇都宮は、今シーズンは変革の年だった。日本人選手に大きな変動はなかったが、長年チームを支えたロシターがA東京に、ジェフ・ギブスが長崎ヴェルカに移籍。両選手とも精神的支柱であり、数字に現れない部分でも抜けた穴は大きかった。

それでも安齋竜三ヘッドコーチや#0田臥勇太を中心に積み上げてきたチーム力は強固で、69.1失点はリーグ最少。激しいディフェンスで相手を苦しめ、#6比江島慎、#40ジョシュ・スコットに、新加入の#42アイザック・フォトゥが内外角で得点していった。平均得点79.8はリーグ中位ながら決して得点力が低いわけではなく、オフェンスレーティング107.5は同7位とハイスコアゲームについていけるオフェンス力も誇る。

そうした両クラブの対戦は、シーズン成績でも2勝2敗と五分。直近の4月30日、5月1日の試合では両試合ともに3点差で星を分け合っている。

CSで勝敗を左右するのは、互いの“矛”が十分に発揮できるかだ。先述した直近の試合では74−71で千葉、72−69で宇都宮が勝利とロースコアゲームに。両試合ともに宇都宮のペースだったが、初戦で千葉が驚異の粘りを見せて逆転勝利を収めている。

この2試合以外は100−75で宇都宮、93−66で千葉という結果から見えてくるように、宇都宮は千葉を70点前後に抑えることができれば勝機は見えてくる。逆に千葉は80点以上取ることが勝利には不可欠だ。

4試合中3試合で優位に進めている宇都宮に分があるが、4月30日の試合で千葉が見せた爆発力を宇都宮は警戒しなければならない。いずれにしても今シーズンのCSを大きく左右するシリーズになることは間違いない。

試合中止が続いた激動の5シーズン目も残りわずか。どのクラブが最後に笑顔を見せられるのか――激闘の火蓋が切られる。

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