“世界2位のリーグ”を目指すため、まずはアジアから地盤を固める
Bリーグでは2020−21シーズンよりアジア特別選手枠を設けた。これは中国、チャイニーズ・タイペイ、インドネシア、フィリピン、韓国籍の選手を各クラブ1名獲得できるもの。ただし帰化選手との併用はできないことになっている。
枠を設けたBリーグの狙いはいくつかあり、オンコートでは競技力の向上が最も大きい。彼らには日本人にはない身体能力や身のこなしがあり、これまでの国内リーグではなかなか味わうことができなかった。常にこうした経験ができることは、国際大会を戦う上で大きなプラスだ。
またBリーグはNBAに次ぐ“世界2位のリーグ”を目指しているなど、ビジネス的な背景もある(現在はユーロリーグ、中国リーグに次ぐ4位)。バスケットボールが日本以上に人気スポーツになっている国もあり、各国の選手が日本でプレーするとなれば、Bリーグの注目度はそれぞれの国で高まる。
海外向けの事業を展開する企業のスポンサーを獲得し、視聴率が取れると分かればテレビ放映も予想される。ビジネスにおいては様々な好転が期待でき、技術力を高めながらこうした事業を展開できることは、リーグ拡大を目指すBリーグにとって大きなメリットだ。
バスケットが国技のフィリピンから多くの選手がBリーグ入り
アジア枠が解禁された昨シーズンより特徴的なのは、フィリピン人の多さだ。大学時代に大スターだったサーディ・ラベナがPBA(フィリピン・バスケットボール・リーグ)を介さず三遠ネオフェニックスに加入。今シーズンはラベナを含めフィリピンから8名が加わっている。
フィリピンはバスケットボールが国技で、FIBAランキングは33位(日本は37位)。国技ということで選手の人気は高く、ラベナはTwitterのフォロワーが17.7万、インスタグラムが34.9万と、日本人選手と比べれば群を抜く。各国で人気がある選手に日本でプレーする機会を設け、その人気をBリーグに還元することもアジア特別枠を設けた理由の一つだ。
なおフィリピンは日本に比べて賃金が低く、PBA自体も低年俸のため高い賃金を求めてBリーグに活動の場を移している。そして今シーズンに関しては、新型コロナウイルスの影響で自国の国内リーグの開催が不透明であることから、インドネシアや台湾からも選手が加わり12名に(開幕時。2月末時点では11名)。さらに高校から日本に留学をしていた中国人選手もこの制度を利用している。
国を背負う選手がBリーグで経験を積む
多くのクラブが活用しているアジア特別枠だが、残念ながらエース級の活躍を見せる選手はいないのが現状だ。ここ数年、長期間日本でプレーしている外国籍選手が帰化するケースが多くなり、資金力のあるクラブは活躍が計算できる彼らを擁している。
先述した通り、帰化選手とアジア特別枠は登録上共存できず、資金が潤沢ではないものの新たなスパイスを加えたいクラブがアジア特別枠を利用している。ただし若く、今後の成長が期待できるアジア特別枠の選手は多い。特にフィリピン人は身体能力に優れ、元々育成を見据えて獲得をしている。
実際、三遠入りしたラベナは昨シーズンこそ合流の遅れやケガで18試合の出場に終わったが、今シーズンは攻撃のオプションが格上げされ、外国籍選手に次ぐ得点源に。フリースロー成功数が2倍(1.1→2.2)になり、ゴール付近のシュート成功率も向上。平均得点は9.1から12.7に上がり、リバウンドやアシストといった主要成績が改善されている。
最も成長が期待されるのが、今季富山グラウジーズに入った#24ドワイト・ラモス。フィリピンの次代のエースと目されている23歳はフィジカルの強さと滑らかな身のこなしで、ラベナ同様シューティングガードながらペイント付近の得点力が高い。外角シュートの精度を高めれば、平均9.8得点の上積みは十分可能だ。
また30歳手前でBリーグ入りした、キーファー・ラベナ(滋賀レイクスターズ#15)とレイ・パークスジュニア(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ#1)は実績があり、共に2桁得点を記録。中でもパークスの突破力は日本人シューターが多い名古屋Dの中で、貴重な戦力になっている。
現状、アジア特別枠は2020−21シーズンと2021−22シーズンの運用が決定しているが、来シーズン以降は未定だ。また上位クラブで運用されていないことから分かる通り、現状アジア特別枠の選手たちが戦力としては大きな期待がされていない。
しかし中位〜下位のクラブでは主力として活躍しており、今後継続すればフィリピンに加え中国や韓国からの加入も予想される。そうなればBリーグは活気付き、さらなる拡大が期待できるだろう。
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