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阪神・大山悠輔が真の4番になるために必要なもの

阪神の大山悠輔選手ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

開幕から4番を任されるも106試合目に6番降格

2019年の阪神で主に4番を打ったのは、大卒3年目の大山悠輔。1年目の矢野阪神を象徴する用兵のひとつで、大山は開幕から4番を任され続けた。しかし成績が安定せず、106試合目の8月10日から6番に降格。

この時点で阪神はリーグ4位と低迷し、クライマックスシリーズ出場権が得られる3位との差は6.5ゲームにまで開いていた。矢野燿大監督は我慢しきれなかった格好で、ファンも4番・大山に満足とまではいかなかっただろう。

本塁打と打点はチームトップ、チャンスにも強い

2019年の大山の成績は、それほどヒドいものだったのだろうか。あらためて成績を振り返ると本塁打14本、打点76、二塁打33本はいずれもチームトップである。

打率.258はチームでも5位と物足りないが、決勝打(結果的に試合を決めた安打、四死球、犠飛)は両リーグ3位の13本(1位は中日・福田永将とDeNA・ロペスの15本)。殊勲打(先制、同点、勝ち越し、逆転となる安打)は、両リーグ合わせて4位タイの28本(1位は西武の中村剛也の31本)を放っている。

得点圏打率もセ・リーグ9位の.318で、決して勝負弱い打者ではなかった。

大山の印象を悪くしているのは、開幕から得点圏で17打席連続無安打だったことと、満塁時の打率が.143と極端に低いこと。そしてチームトップとはいえ、14本塁打は4番としては寂しい。出塁率と長打を足し合わせたOPSも.714と、平均的な数字に終わった。

2020年は外国人野手が3人、ポジション争い激化

2019年の矢野監督には、大山を4番で育てようとの意図があった。しかし、2020年はチーム事情が変わる。2019年のドラフトで阪神は1~5位指名を甲子園出場組の高卒選手で固め、即戦力候補の新人を獲らなかった。その反動であろう。来季の阪神は異例の外国人選手8人体制で臨む。

そのうち野手は3人。昨季に打率.284、12本塁打の実績を残したジェフリー・マルテが残留し、メジャー通算92本塁打のジャスティン・ボーアと、今季の韓国打点王のジェリー・サンズが新加入した。なかでもボーアは4番候補と、早くも期待を集めている。大山にとって2019年の4番は与えられたものだったが、2020年の4番は、競争を勝ち抜いて奪い取らねばならない。

2020年に4番を奪い返すためには長打の増加を

2020年の大山に期待したいのは、やはり長打の増加。2019年の長打率は.401で、リーグ平均の.406と比較しても平凡な数字だ。右打者が長打にしやすいのは、引っ張っての左方向への打球。そこで大山の打球方向を見てみると、引っ張っての左方向が50%、センター方向へは19%、右方向は31%となっている。

引っ張り中心だが、投球のコースに合わせてセンター、右方向へも打ち返す意識がこの数字に透けて見える。本拠地の阪神甲子園球場に吹く浜風は、左打者にとっては逆風だが、右打者には追い風となる。左方向への打球が半分を占めることは悪くはないが、大山は浜風を有利に使える右打者である。そのことを考えると、引っ張って強い打球を打つことをもっと意識して、左方向への打球が60~65%程度にまで増えてもいいだろう。

コース別の安打傾向を見ると、ホットゾーンは真ん中高目(打率.418、以下カッコ内は打率)、真ん中(.302)、外角真ん中(.367)。一方で苦手としているのは外角高め(.167)、内角低め(.178)、外角低め(.181)。失投を見逃さず仕留めることには長けているが、ストライクゾーンの四隅に投げ分けてくる相手投手の勝負球には弱い傾向が見て取れる。チームから信頼され、ファンにも認められる4番は、勝負球を打ってこそだ。

6番あたりを打って、クリーンアップが残した走者を掃除する役目を目指すなら、現状のスタイルを極める方向でも良いかもしれない。しかし2019年の悔しい経験から、大山本人のなかに本気で4番を奪回する気持ちがあるのであれば、2020年は全力で長打力アップを果たしたい。

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