リーグ連覇最大の立役者
今季急成長を遂げた巨人・中川皓太。開幕から16試合連続無失点と最高のスタートを切ると、チーム最多となる67試合に登板。シーズン途中にはクローザーも任されるなど、中継ぎ陣の中心を担った。
中川はストレートとスライダーの2球種で投球の8割以上を占める。中でもスライダーの被打率は1割台と、リーグでもトップクラスの威力を誇っている。昨季のスライダーの被打率は.255だったことから、スライダーの威力が増したことが、今季の急成長につながっていそうだ。
中川は今季、スライダーを一塁側のコースに投げる割合が増えた。一塁側は右打者であれば外角、左打者であれば内角にあたり、左投手が左打者の内角にスライダーを投げるケースは珍しい。中川もこのコースに多投した訳ではないが、要所でこのコースにスライダーを投げ切る姿が印象的だった。
左投手が一塁側へスライダーを投げるということは、ボールゾーンからストライクゾーンへ変化させるということを表している。一見すると痛打のリスクも高そうな配球だが、中川のスライダーは高い確率で打者にスイングをさせておらず、ストライクを稼ぐことに成功している。中川は今季から腕の位置を下げるフォームに変えており、その結果スライダーが「打者の手元で小さく鋭く曲がるようになった」と本人は表現している。
一塁側へのスライダーがボールに見えてしまう一方で、三塁側へのスライダーはボール球でも打者のバットが止まらない。特に右打者の内角ボールゾーンへのスライダーは50%以上の確率でバットを振らせることに成功している。このコースへのスライダーの奪空振り率も昨季より顕著に向上し、打者の左右を問わず機能するウイニングショットに進化している。
ウイニングショットのスライダーを引っさげ、プレミア12で初めて侍ジャパンに選出された中川。大会では3試合で無失点、4奪三振の好投を見せて充実したシーズンを終えた。今後は落ちる球の習得にも意欲を見せており、開花した左腕はさらなる成長に向けて余念がない。
※文章、表中の数字はすべて2019年レギュラーシーズン終了時点
企画・監修:データスタジアム
執筆者:川畑 賢太郎