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ロッテの大型補強は直近の課題を解決し、未来へ向けた好循環を生む

2020 1/7 11:00浜田哲男
イメージ画像ⒸSPAIA
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課題を解決する的確な補強に成功

今オフ、ロッテは大型補強を敢行。楽天からフリーエージェント(FA)権を行使した美馬学を巨人、ヤクルトとの争奪戦の末に獲得すると、ソフトバンクからFA権を行使した福田秀平も西武、楽天、中日、ヤクルトとの争奪戦を制した。また、広島のリーグ3連覇に貢献したジェイ・ジャクソン、楽天のセットアッパーとして活躍したフランク・ハーマンという助っ人に加え、ドラフトでは4球団競合の末に、逸材中の逸材・佐々木朗希を獲得した。

その一方、鈴木大地がFA権行使、涌井秀章が金銭トレード、酒居知史が美馬の人的補償で楽天へ移籍した。大型補強と同時に、投打のチームリーダーと先発でもセットアッパーでもいける酒居を失うことになったが、2019シーズンまでの課題を解決する的確な補強に成功したという印象だ。

日本での実績があるという安心感

特に大きいのが、ジャクソンとハーマンの加入ではないだろうか。ロッテは2019年、開幕当初は7回に酒居、8回に唐川侑己、9回に益田という勝利の方程式を確立。しかし、安定感が長くは続かず、最終的にはクローザーの益田以外は、シーズンを通してやりくりをする状態が続いた。7回、8回に失点を喫するケースが多く逆転されるシーンも散見された。

そうした課題を解決すべく外国人助っ人の補強に成功したわけだが、ジャクソンにしろハーマンにしろ、既に日本での実績があることが大きい。ジャクソンは広島に3年間在籍し、通算175試合に登板。通算92ホールド、防御率2.10の好成績をマークし、広島のリーグ3連覇に大きく貢献した。ハーマンは楽天に3年間在籍し、通算153試合に登板。66ホールド、防御率2.59と、こちらも安定感抜群の数字を残している。

7・8回をジャクソンとハーマン、9回を益田と計算ができるため、種市篤暉や岩下大輝、二木康太といった若手先発投手は6回までと考えて思い切って投げていくことができる。球数をおさえつつ白星を重ねていければ自信も深まっていくだろうし、リリーフの安心感がもたらす作用は投手陣の好循環を生みそうだ。

近年のロッテは投打ともに外国人助っ人の不振に泣かされてきたが、2019年は日本での実績十分なレアードが期待通りの活躍を見せてくれた。特にシーズン前半はレアードのバットが幾度となくチームに勝利をもたらした。日本野球に慣れ、実績を残している外国人セットアッパーに的を絞ったあたりは、投打の違いはあれどレアードの成功事例が少なくとも影響していたはずだ。

機動力と長打力の融合

井口資仁監督の1年目は走塁革命を掲げ、チーム盗塁数が2017年の78個から124個と飛躍的に増加。しかし2019年は、その盗塁数が75個に激減した。レアードの加入もありチーム本塁打数は78本から158本に激増したが打線は水物。機動力でプレッシャーをかけていく効率重視の攻めを絡ませなければ、シーズンを戦う上で得点力不足の苦しい時期が長くなる。

そこで期待されるのが、入団会見時に「規定打席到達と30盗塁」を目標に掲げた福田秀平の存在だ。ソフトバンク時代には一度も規定打席に到達しておらず、経験的・体力的な側面から一抹の不安があり、やや怪我が多いものの、走攻守で光るものを持つ福田がシーズンを通して戦い抜いた時にどれくらいの数字を残すかという期待感も大きい。井口監督は2番での起用も示唆しており、1番荻野とのコンビがどのように機能するのかは見ものだ。また、荻野や清田育宏、角中勝也らベテラン外野手にとっては刺激となり、藤原恭大ら若手外野手にとっては良いお手本になるだろう。

荻野、福田、そして2018年は39盗塁をマークした中村奨吾らの機動力と、井上晴哉、レアード、マーティンらの長打力がうまくかみ合えば得点力も向上するはずだ。

若手が奮起せざるを得ない状況

懸念されるのが、投打の精神的支柱だった鈴木と涌井が移籍した影響。しかし、逆に言えば、鈴木が抜けたことは中村奨吾や井上晴哉らに野手を牽引していかねばらない自覚をもたらす上に、2020年には5年目を迎える平沢大河、3年目を迎える安田尚憲、即戦力内野手のルーキー・福田光輝、藤岡裕大、三木亮、松田進らにとってはチャンスとなる。

投手陣でいえば、涌井が抜けたことで、種市、岩下、二木、小島和哉、佐々木千隼らの若手先発投手陣の自立、奮起が期待できる上、佐々木朗希の加入などによる下からの突き上げも、種市らの起爆剤となりうる。また、経験豊富な美馬の存在は若手に安心感を与え、年の近い石川歩らにとっては刺激になるはずだ。石川や美馬が先発投手陣を牽引してくれれば心強いが、種市ら若手がローテーションの中心となり、石川や美馬がそれに引っ張られる形で勝ち星を重ねるという構図が、数年後を考えれば理想的だ。

近年のチームに足りなかったピースを的確に補強した今オフのロッテ。2020年の戦いぶりが実に楽しみだ。

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