途中加入ながら及第点の活躍
今季シーズン途中から加入し、走攻守で印象的な活躍を見せるなど幾多のチームの勝利に貢献したレオネス・マーティン。下位にいたチームを3位争いできる位置まで引き上げた功労者のひとりと言っても過言ではない。その活躍から残留を求める声も多く、12月2日には来季の契約に合意したことが発表された。
7月26日に1軍に合流し、同日の楽天戦では2番右翼で即スタメン出場。安打は出なかったものの、9回の守備で自慢の強肩を披露。タッチアップで本塁に突入した三塁走者を見事に刺した。翌日の楽天戦では、同点で迎えた8回2死一塁の場面、楽天のセットアッパー・森原康平の高めのフォークを振り抜いて左中間スタンドへ。これが決勝弾となり、チームの勝利に早速貢献した。
デビュー戦からしばらく2番に座ったマーティンと、1番荻野貴司とのコンビが機能。荻野が出塁してマーティンがつなぐ、もしくは荻野を本塁へ返すというシーンが幾度となく見られた。走者一塁時の打率が.333、二塁時が.308と高いマーティンが2番に入ることで、打線に厚みが生まれた。しかし、シーズン後半は相手チームにも研究され打撃が低迷。打率.232で終わったが、52試合で14本塁打、39打点という成績は及第点だろう。
一方で課題は明確だ。真ん中高めの直球で空振りを奪われるケースが散見され、コース別の打率をみても.133と苦手としている。また、外角低めの変化球(打率.162)にも手こずっており、コース別で最も多い14個の三振を喫している。打率を向上させるには、この見極めができるようにならなければならない。
ヤマイコ・ナバーロ、マット・ダフィー、ジミー・パラデス、マット・ドミンゲス、ケニス・バルガスといった近年のロッテの助っ人外国人は、日本野球への順応に苦しみ1年でチームを去ることが多かった。しかし、マーティンは「メジャーリーグと違うなってところもありますけど、少しずつ日本の野球になれていきたいと思っています※」と、メジャーでの実績におごることなく日本野球にアジャストしていく姿勢をみせている。来季はよりいっそうの活躍を期待してもいいだろう。
※パーソル パ・リーグTV 公式YotubeチャンネルPacificLeague「2019年7月27日 千葉ロッテ・清田育宏選手・マーティン選手ヒーローインタビュー」より
最終戦で味わった悔しさ
一発を含む5打数2安打2打点と存在感を示した7月30日のオリックス戦。ヒーローインタビューを受ける前、ベンチ前でカメラを手に持ち球場全体の光景をおさめるマーティンの姿があった。
「本当に素晴らしすぎて。初めてみた光景なので、ぜひビデオにおさめたかったのです※」といった発言に代表されるように、マーティンは日本野球のプレーや技術面へ順応する努力を怠らないだけでなく、日本の野球文化に感銘を受け、日本で野球をすることに喜びを感じている。
「人生で一番素晴らしい声援をいただいていると思っています※」と、ライトスタンドから響いてくる応援歌にも感激。残留が決まった際にも球団広報を通じ、「私は皆さんがスタンドから歌ってくれる応援歌を支えにして頑張ります」と意気込みを表明している。
そんなマーティンを、ファンが受け入れるまでに時間はかからなかった。来日早々、出場10試合に満たない段階で3度お立ち台に上がる活躍を見せ、がっちりとファンの心をつかんだことも大きな要因だろう。それにもかかわらず、とある試合で「チームもファンも僕のことを気持よく受け入れてくれたのでとても感謝しています」という言葉を聞くことができた。そんなマーティンの人となりに、ほれ込んだ人も多いのではないだろうか。
シーズンが終わり帰国する直前には、今年でフリーエージェントになるのでどうなるか分かからないが戻ってきたい気持ちもあると語っていたマーティン。フリーエージェントという立場ではあったが、「人生で忘れられない素晴らしい時間になった」という日本での体験と、今季最終戦で味わった悔しさを晴らしたいという思いが残留の大きな要因であったことは想像がつく。
本拠地ZOZOマリンで行われた9月24日の西武戦。目の前で優勝を決められた試合で、マーティンは空振り三振を喫して最後の打者となった。呆然としたマーティンはベンチからしばらく立ち上がることができず、目にはうっすらと涙が浮かんでいた。シーズン途中からの加入ではあったが、いち早く日本野球に順応し、チームに溶け込もうとした姿勢に多くのファンは感銘を受けた。チームの勝利に執念を燃やし、悔しさを露わにして涙する姿には多くのファンが心を打たれた。
2005年以来のリーグ優勝、2010年以来の日本一を目指すロッテ。熱い気持ちをもつ男が、来季のロッテを走攻守で牽引する。
※パーソル パ・リーグTV 公式YotubeチャンネルPacificLeague「2019年7月30日 千葉ロッテ・岩下大輝投手・鈴木大地選手・マーティン選手ヒーローインタビュー」より