200イニングは2018年の菅野智之、3000球は2019年の千賀滉大が最後
オールスターゲームが終わり、26日から後半戦に突入するプロ野球。昨季から「投高打低」が叫ばれ、今季も前半戦で打率3割以上をマークしているのはセ・リーグで3人、パ・リーグでは1人しかいない。
逆に投手は防御率1点台がセ・リーグだけで5人おり、トップの大瀬良大地(広島)は0点台だ。個人成績を見る限り、「投高打低」になっていることは間違いないだろう。
ただ、投手成績でも昔より落ちている項目もある。先発投手の球数とイニング数だ。200イニングは沢村賞の選考基準のひとつでもあり、先発投手の勲章でもあるが、2018年の菅野智之(巨人)を最後に到達した投手はいない。
球数もシーズン計3000球を超えたのは2019年の千賀滉大(ソフトバンク)が最後。役割が細分化され、より分業制が進んだことも「投高打低」の一因となっているのかもしれない。
そこで歴代の12球団最多投球数投手を調べてみた。2004年以降は下の通りとなっている。
2009年の涌井秀章、2014年のメッセンジャーは3500球超え
表の通り、2019年までは毎年3000球を超えていた。中でも2009年の涌井秀章(西武)や2014年のメッセンジャー(阪神)は3500球を超えている。
3400球以上でも2005年の松坂大輔(西武)、2006年の一場靖弘(楽天)、2011年の前田健太(広島)、2013年の金子千尋(オリックス)と4度もある。
それがコロナ禍でシーズンが短縮された2020年以降は、最多でも2021年・高橋光成(西武)の2936球。昨季最多の戸郷翔征(巨人)は2715球だった。
かつては先発ローテーションの柱となる投手はベンチも簡単には代えず、本人のプライドも尊重しながらできるだけ長いイニングを引っ張る傾向があった。
しかし、先発投手が6回を自責点3以内に抑えるクオリティスタート(QS)の概念が浸透した近年は、チームがリードしているか否かにかかわらず100球前後に達すれば交代することが多い。
ローテーションを中6日で回る限り、シーズン30試合に登板する可能性は低く、必然的に3000球を投げる投手も消えているのが現状だ。
7回、8回、9回のイニング別防御率を10年前と比較
となると、中継ぎ陣の充実がより重要になる。そこで10年前の2014年と今季の7回、8回、9回のイニング別防御率を調べてみた。
まず今季のセ・リーグから見ていこう。7回の1位は防御率1.50の阪神。2位・広島も7回、8回、9回いずれも1点台と優秀だ。これが現在のチーム順位にも反映されていると言えるだろう。
逆に阪神は8回が2.83で5位。クローザー・岩崎優の登板が多い9回(防御率1.54で3位)に比べても、8回はやや悪化している。この辺が日本一に輝いた昨季に比べて抜け出せない一因でもある。
ヤクルトは7回が4.02、8回が2.96、9回が4.01で、いずれもリーグワースト防御率。オスナ、村上宗隆、サンタナの強力クリーンアップを擁しても最下位に低迷しているのは、ブルペンを整備できていないのも原因だ。
中日は29セーブのマルティネスがいるため9回は防御率1.02と抜群。それまでにリードを保っておけばチーム成績はさらに上がるだろう。続いて10年前の2014年も見てみよう。
一目見れば分かるが、全体的に防御率が高い。優勝した巨人でも7回、8回、9回いずれも3点台だ。マシソンが30セーブを挙げ、山口鉄也、西村健太朗、久保裕也らが中継ぎとして活躍したが、それでもこの数字だった。
和田豊監督3年目だった阪神は「石直球」で39セーブを挙げた呉昇桓がクローザーを務めていたため、9回は2.31で1位。しかし、7回が3.94、8回が6.00と安藤優也、福原忍らベテランが中継ぎに回っていた終盤に失点が多く、優勝には届かなかった。
最下位だったヤクルトは7回が4.03、8回は1位とはいえ3.65、9回は4.99とブルペン陣の不安定さがチーム成績に影響を及ぼしている。
高まるリリーフ陣の重要性
続いて今季のパ・リーグも見ていこう。
やはりソフトバンクの安定感が目立つ。7回が2.93、8回が1.88、9回が2.97と優秀な成績。モイネロは先発に転向し、オスナは戦線離脱したが、津森宥紀、藤井皓哉、松本裕樹らがきっちりと役割を果たしている。
リーグ3連覇中のオリックスは8回が3.60で5位。昨季大活躍した宇田川優希、山﨑颯一郎らの不振が響いている格好だ。
前半戦2位のロッテも7回は4.55、9回は3.70でリーグワースト。通算233セーブの益田直也も防御率3.51とやや安定感を欠いている。最下位の西武も7回、8回は4点台と悪い。
続いて10年前の2014年が下の表だ。
優勝したソフトバンクは7回が3.44、8回が1.94、9回が2.29と優秀だった。サファテが37セーブを挙げ、五十嵐亮太、岡島秀樹、森唯斗、森福允彦ら充実のリリーフ陣を誇っていた。
5位・西武や最下位・楽天はやはり終盤の防御率が高い傾向にある。つまり、10年前から中継ぎの重要性は変わっていないが、今は先発投手が球数を投げなくなった分、リリーフ陣の出番が増え、重要性は増していると言える。
かつてのように先発ローテーションから漏れた投手や球威の落ちてきたベテランが担うのではなく、現代野球におけるリリーフは若い一線級の投手が担う重要なポジションだ。この傾向が続く限り、「200イニング・3000球」を投げる投手は出現しないかもしれない。
【関連記事】
・セ・リーグ野手の2024前半戦MVP DeNAオースティンが中日・細川成也を僅差で上回る
・パ・リーグ野手の2024前半戦MVP ソフトバンク近藤健介が驚異のwRAA37.30でぶっちぎり!
・セ・リーグ球団別週間MVP オスナ、村上宗隆のヤクルト勢が急上昇!DeNA梶原昂希も大暴れ