通算200勝まであと17勝
福留孝介と能見篤史が引退したことで、2023年のプロ野球最年長はヤクルト・石川雅規投手(43)となった。秋田商から青山学院大を経て2001年ドラフト自由獲得枠でヤクルトに入団。今季でプロ22年目を迎える左腕だ。
身長167センチの小柄ながら通算520試合に登板して183勝180敗3ホールド。昨季も6勝を挙げ、米田哲也、小山正明に続いて史上3人目となる入団1年目から21年連続勝利をマークした。
ドラフト同期組は阪神・安藤優也、西武・細川亨、ダイエー・杉内俊哉、寺原隼人、巨人・真田裕貴(いずれも球団は入団当時)らほとんどが現役を引退。高卒でプロ入りした西武の中村剛也と栗山巧がプレーを続けるのみとなっている。
2桁勝利を11度マークしているものの最後の2桁は2016年。あと17勝に迫る通算200勝まで早くても2年、常識的に考えれば順調でも3年はかかるだろう。
50歳まで投げ続けた山本昌のような稀有な例もあるが、石川もユニフォームを脱ぐ時が近付いていることは確か。「その時」までに200勝を達成できるだろうか。
外角低めに集める見事なコントロール
石川を支えているのが抜群のコントロールだ。ストライクゾーンを9分割した2022年のコース別被打率は以下の通りとなっている。
打者の左右を問わず、外角低めは投球割合15%以上を示す赤色に染まっており、最も割合が高い。逆に投球割合7%未満の青色は内角や真ん中に集中している。いかに丁寧に投げているかが分かるだろう。
ストレートは平均132.2キロに過ぎないが、変化球はシンカー、カットボール、スライダー、シュート、チェンジアップ、カーブと多彩。右にも左にも曲がる球があり、落ちるボールも持っているからこそ、球速はなくても打者の打ち気を逸らし、バットの芯に当てさせないのだ。
低い奪三振率が投球術の証明
昨季、NPB史上28人目の通算3000投球回を達成し、最終的に3037イニングまで伸ばしたが、奪三振は1746。9イニングで奪う三振数を表す奪三振率は5.17に過ぎない。2022年だけで見れば、84投球回で39奪三振のため、奪三振率は4.18だ。
2022年に規定投球回に達した投手で最も高かった千賀滉大(ソフトバンク)で9.75、最も低かった小川泰弘で5.34だから、石川の奪三振率がいかに低いかよく分かる。石川が最も奪三振の多かった2011年(127奪三振)でも奪三振率は6.41だった。
つまり、相手打者は手も足も出ないわけではなく、打たされているのだ。的を絞らせず、読みを外し、正確なコントロールで打たせて取る円熟の投球術こそ、石川が「小さな大投手」として長く現役を続けられている理由に他ならない。
先発ローテーションはエース小川泰弘、WBC日本代表に選ばれている高橋奎二、来日3年目のサイスニード、昨季8勝の原樹理、同7勝の高梨裕稔、ドラフト1位右腕・吉村貢司郎、新外国人の右腕エスピナル、左腕ピーターズらと争う。43歳のベテランにとって、限られたローテのイスを奪うことは自身の選手寿命を延ばすことにつながる。
3連覇を狙うチームにとってもベテランの経験が頼りになる場面は必ずあるだろう。200勝を目指す石川の「細腕繫盛記」はまだまだ終わらない。
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