左翼はチーム最多の9人をスタメン起用
7月31日、ヤクルトの「2番・左翼」に青木宣親が戻ってきた。
この試合では第3打席に復帰後初安打となる二塁打放つ。延長11回には三振を喫するも、捕手が後逸しているのを確認すると一塁を駆け抜け、振り逃げで生き残る。この青木の激走のおかげで村上宗隆に打席が回り、勝ち越しホームランが生まれた。
打順はその他の打者との兼ね合いもあり流動的になるかもしれないが、左翼のメインは青木がしばらく務めることになりそうだ。
実は、この左翼というポジションは昨シーズン優勝を決めた後から、今年の春季キャンプ、オープン戦、そしてシーズンに入ってからも多くの選手が起用されてきた。ここまでスタメンで起用された人数はなんと9人。ヤクルトにおいては、投手を除いた野手8ポジションで最多だ。
高津臣吾監督は青木に全試合フル出場を求めるのではなく、相手投手との兼ね合いや疲労の具合を見てスタメンから外す日を設けながら、高パフォーマンスでシーズンを走り抜くことに重きをおいた。もちろん次のレギュラー候補を見極めながら。
しかし現段階では青木を脅かすような存在は出てきていない。
青木は開幕から極度の不振
今シーズンの青木は開幕からとにかく苦しんだ。4月末の時点で打率.209、1本、3打点と全く調子が上がらない。5月に入ってからもさほど調子は上がらず、打順もメインだった2番から6番へと下がったほど。さらに6月1日にはコンディション不良を理由に登録を抹消されてしまう。
開幕からの不振に加えて40歳という年齢を考えると、次代を担う若手や中堅が青木からポジションを奪ってもおかしくない。しかし、併用されてきた選手が抜きん出ることはなかった。
青木は6月17日に一軍へ復帰すると、当たり前のようにスタメンへ復帰。「6番・左翼」で出場すると第2打席で安打を放つ。翌18日の試合は出場しなかったものの、19日の試合では5番に昇格。第1打席で本塁打を放ち、さすがの存在感を示した。
復帰から出場5試合連続安打を記録するなど調子を上げ、7月8日の時点では打率.241、4本、17打点まで戻してきた。全盛期の青木からすれば物足りないかもしれないが、それでも短期間で調子を整えてきたのは、よく知る青木だった。
しかし新型コロナウイルス陽性判定を受けたことで、7月10日に再び登録を抹消されてしまう。
6月と7月の青木は打率.333、3本塁打と復調
青木を含めここまで左翼を守ってきた9人の成績は、下記のようになる。
次世代左翼の筆頭候補は6本塁打を記録し、青木に次ぐ19試合でスタメン起用された濱田太貴だろう。しかし新型コロナウイルス陽性判定を受け離脱してしまった。レギュラーを取るには運やめぐり合わせも重要だ。
その他では丸山和郁が打率.324、OPS.843と目立つ数字を残した。しかしスタメンで出場したのは2試合(左翼1試合)のみ。主に守備固めとしての起用が続いている。丸山も新型コロナウイルス陽性判定を受けたことで二軍調整中だ。
山崎晃大朗も青木をはじめとした主力が離脱している苦しい時期を支えた1人ではあるが、左翼のレギュラーを掴むことはできなかった。
青木が2度も登録を抹消されたことで、左翼のポジションは1ヶ月以上にわたって空席となっていた。レギュラーを狙う中堅や若手にとってはチャンスだらけだったといっても差し支えないだろう。
しかし誰も──新型コロナウイルス陽性判定を受け離脱した選手もいるが──確固たる成績を残すことができず、結局は調子を整えてきた青木が定位置に収まっている。6月と7月の青木は15試合で打率.333(42打数14安打)、3本塁打なのだから文句のつけようもない。
打率3割が当たり前だった全盛期と比べると衰えを隠せないが、それでも実力でポジションを掴む青木の凄さが浮き彫りになった。やはり日米通算2500安打は伊達じゃない。田口麗斗が言う「#ノリはすげぇ」をまざまざと見せつけられている。
だがそれではチームとして少し寂しいのも事実だ。これからの夏場、優勝争いをしていることもあり、プレッシャーの掛かる試合が今まで以上に増えてくるだろう。そのなかで左翼を整えてきたベテラン青木に託すのか、はたまた濱田ら次世代の選手を育てていくのか──高津監督の起用法が楽しみだ。
※数字は2022年7月31日終了時点
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