新型コロナ感染で離脱者続出
世間と同様、プロ野球界でも新型コロナウイルス陽性者が続出している。
7月20日までに巨人が大勢投手、菊地大稀投手、菅野智之投手、中田翔内野手、岡本和真内野手、元木大介ヘッド兼オフェンスチーフコーチ、阿部慎之助作戦兼ディフェンスチーフコーチら38人の陽性判定を公表。5人の球宴選出選手も含まれており、混乱は必至の状況だ。
そのほか、広島、日本ハムでも大量の陽性者が確認されている。20日の1日に限定してもNPBから50人以上の陽性者を確認。ネット上では「(26日、27日開催の)オールスター中止の方がいいんじゃないの」という声も挙がっているほどだ。
コロナ感染者大量発生の流れで最初の被害チームとなったのはヤクルトだった。7月8日から10日にかけて選手、スタッフを含む27人が陽性者に。大量のスタッフ異動、選手の入替を行い、高津臣吾監督の代行として松元ユウイチ作戦コーチを指揮官に据えた。
主力で感染を免れたのは村上宗隆内野手、ホセ・オスナ内野手、山﨑晃太郎外野手くらい。若手にとっては大チャンスだというプラス意見も出たが、チームにとってはやはりネガティブ要素の方が大きかった。8日の阪神戦をベストメンバーで落とすと、2試合の雨天中止を挟んで6連敗。松元監督代行は19日の巨人戦(神宮)に勝利し、6戦目にして初勝利を掴んだ。
高津監督も高評価「先輩のあるべき姿」
ただ、目立たなかったが密かに存在感を放っていたのが内川聖一内野手、坂口智隆外野手のベテラン勢。特に20年目、通算1523安打(21日現在)と、2000安打まで477本に迫っている坂口は気合が入っていたに違いない。
今季はキャンプ、開幕ともに二軍スタート。本職の外野には青木宣親、塩見泰隆、ドミンゴ・サンタナらライバル多数という厳しい立場だった。オプションとして守れる一塁に関しても、オスナがおり、チームも好調のため春先から出場機会に恵まれなかった。
だが、交流戦期間から流れが変わった。6月9日の交流戦、オリックス戦(京セラドーム)から、今季初登録されると「6番・左翼」で即スタメン。2回に四球を選び、先制のホームを踏むと4回には右中間への二塁打を記録した。そこから出場5試合連続で安打を放ち一軍に定着した。
昇格直後から存在感を発揮した坂口の姿を高津監督も評価している。
「何とかしてやろうというのがチームにすごく大事なところじゃないかな。『今たくさん若い選手がいるので、君のその姿を見せてくれ』というのは伝えました。スイングもすごく思い切って仕掛けるし、試合の状況、流れというのをやっぱりわかっているのかなと。役割もすごく理解して、ベンチで声出して、こういうのが本当の先輩のあるべき姿なんだろうなと」
コロナ禍での選手の大量離脱で、坂口に特別多く出場のチャンスが巡ってきたというわけではなかった。松元監督代行の元では代打の切り札としてベンチ待機する形が多かった。ただ、出場機会うんぬんではなく坂口のプレーへの姿勢がチームに必要な要素であることを首脳陣に印象づけた事実は大きい。
2000安打は「意識してない」
坂口自身1500安打をクリアし、次のマイルストーンである2000安打を目指さないわけではないが、厳しい数字であることは自覚している。今年の7月7日で38歳。残りの現役生活を逆算すれば…となってしまうが基本的な姿勢を崩してはいない。
1500安打を記録した2020年オフ、2000安打について問うと坂口らしい答えが返ってきた。
「そうやって話題にしてくれようとしてくれるのはありがたいけど、ホンマにそういう数字とかは意識はしてないよ。まずは試合に出るためにしっかり準備して、それでチャンスをもらったら全力で結果を出す。そこに関しては昔からずっと変わってないよ」
コロナ禍という混乱の時期、ヤクルトは連覇へ向けてセ・リーグ首位を独走している。外から見れば2位までの差が大きく離れ、余裕のあるペナントレースと思われがちだが当事者たちはそうではないだろう。
そんな中、チームの窮地で若手が躍動し、ベテランが裏から支えるいいバランスが見えてきた。ここから主力が復活となれば、ヤクルトの強さは盤石となるのではないだろうか。
2002年ドラフト1位で近鉄バファローズに指名された坂口。2年目のオフにはオリックス、近鉄の合併、球界再編騒動に巻き込まれオリックスでレギュラーとなった。ヤクルトへの移籍を経て振り返ればプロ20年の大ベテラン。今ではNPB唯一の近鉄いてまえ軍団の一員となった。幾多の逆境を跳ね返してきた男がみせる燕への孝行に、多くのファンが注目している。
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