”もっている”長岡は一軍キャンプ、球宴ともに代替選出
日本一2連覇を目指して快進撃を続けるヤクルトを語る上で欠かせないのが、開幕から遊撃のポジションを守り続ける長岡秀樹の存在だ。
7月に入ってから新型コロナウイルスの陽性判定を受けたことで一時離脱したものの、前半戦ではチーム2位の87試合に出場し打率.257(319打数82安打)、7本塁打、38打点とレギュラーの遊撃手として申し分ない成績を残している。
今年の長岡は、実力はもちろんだが、運も兼ね備えている。”もっている”と言いかえてもいい。振り返ってみると、今年の春季キャンプで長岡はもともと二軍スタート予定だった。しかし村上が新型コロナウイルスに罹ったことで一軍キャンプに滑り込んだ。
発表されたのはキャンプスタートの前々日となる1月30日のこと。今年はコロナ禍でのキャンプということで一軍と二軍の入れ替えは行わない方針だったため、村上のコロナ罹患がなければここまでの躍進はなかったかもしれない。
そのチャンスをものにし、オープン戦では打率.239(46打数11安打)と結果を出し、西浦直亨(打率.133)と新型コロナウイスの影響でオープン戦未出場だった元山飛優との争いを制した。
また、オールスターゲームに出場したのも運があった。坂本ら巨人の複数選手が出場を辞退したことによる代替選手として選ばれたのである。もちろん前半戦で実力を示したからこそだ。巡ってきたチャンスをものにし第2戦では安打を記録している。
セ遊撃手のなかで本塁打と打点トップ
セ・リーグ各球団の遊撃手の成績を見ると、長岡の7本塁打と38打点はともにトップ。坂本勇人(巨人)が離脱している事情はあるものの、ここまでの打撃成績は目を見張るものがある。
ポジションの枠を超えて比較しても7本塁打はA.マルティネス(中日)と同じで阿部寿樹(中日/6本)や宮崎敏郎(DeNA)よりも多い。さらに38打点はビシエド(中日/35打点)やポランコ(巨人/35打点)、ソト(DeNA/31打点)といった外国人選手たちを上回っている。
もちろん打順や前の打者に左右されることもあるため、打点の単純比較できない。しかし主に8番を任されている長岡が、これだけの打点を挙げているのは相手球団からしたら脅威だろう。
表にはないが、もしかしたら339打席で四球が7つしかなく出塁率.277と高くないのはひとつの課題かもしれない。しかし8番であることを考えると、これだけの打撃成績を残すことができるのであれば、投手の前に四球で出塁を勝ち取るよりも、強く振ることで本塁打、あるいは長打での出塁を狙うのは悪くない。
高卒3年目で山田哲人は3本塁打
チームメートに村上宗隆という規格外の存在がいることもあってあまり凄さを感じないかもしれないが、高卒3年目にして7本塁打を放っているのは、球界を見渡してもそういない。
高卒3年目時点での本塁打数を見ると、村上は2年目に36本塁打、3年目に28本塁打を記録しているが、チームのキャプテンである山田哲人は3本だけだった。現在、海を渡ってプレーしている日本人メジャーリーガーを見ても鈴木誠也(カブス)は5本、筒香嘉智(パイレーツ)も10本、大谷翔平(エンゼルス)は2年目に10本、3年目は5本だった。
長岡は91試合で7本塁打は143試合換算すると11本になる。長岡に長距離砲というイメージはないかもしれないが、高卒3年目の時点では山田やNPBでは圧倒的な成績を残した長距離砲たちと遜色ない成績なのだ。将来的に打率3割を残すようなアベレージ型ではなく、あっと驚く長距離砲になっていく可能性もある。
後半戦では優勝争いによるプレッシャーはもちろん、夏場の暑さや開幕から出場し続けていることによる疲労、さらには相手球団の研究も進んでくる。そのなかで前半戦と変わらぬ成績を残すこと。それが絶対的なレギュラーとなるための絶対条件になる。“もっている”長岡のこれからに注目だ。
※数字は2022年前半戦終了時点
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