木澤は回跨ぎもこなし既に5勝をマーク
2021年は史上稀に見るルーキーの豊作年だった。セ・リーグ新人王に輝いた栗林良吏(広島)をはじめ、佐藤輝明、伊藤将司、中野拓夢(阪神)、牧秀悟(DeNA)、伊藤大海(日本ハム)、早川隆久(楽天)といった名前が即座に出てくる。
彼らのように期待通り、もしくは期待以上の活躍を見せた選手がいた一方で、ドラフト1位という大きな期待を背負って入団しながらも苦しんだ選手もいた。しかし2年目の今シーズン、3人の大卒ドラ1投手たちがリリーフで輝きを放ち始めた。木澤尚文(ヤクルト)、入江大生(DeNA)、平内龍太(巨人)の3人だ。彼らの今シーズンの主な成績は以下の通り。
木澤は昨シーズン、3人の中で唯一、一軍登板がなかった。ファームでも22試合に登板したものの、2勝8敗、防御率6.07と苦しんだ。しかし今シーズンは開幕一軍を掴むと、3月、4月は8試合に登板して防御率0.00と好投。5月は9試合で防御率5.06、6月は8試合で防御率4.09、7月は8試合で防御率3.72と、安定した投球とは言えないものの、コンスタントに登板を重ねている。
33試合登板はマクガフに次いで、今野龍太と並んでチーム2位。45.1回を投げていることから回跨ぎが多いこともわかる。首位を走るチームのブルペンを立派に支えているのだ。
終盤の逆転劇が多いヤクルトだけにビハインドの展開でも粘り強く抑えれば、味方打線が試合をひっくり返してくれる可能性も高い。チーム2位タイの5勝はその表れだろう。まだ勝ちパターンを任されるまでには至っていないが、来シーズン以降にそのポジションを掴むためにも、後半戦ではより安定した投球を披露したいところだ。
奪三振能力、被打率が輝る入江
入江は昨シーズン開幕ローテーション入りを果たすも、4試合に先発して0勝4敗、防御率7.85と結果を残せず、再調整のために登録を抹消。その後右肘の手術を受け、一軍に復帰することなくシーズンを終えた。
悔しい1年目となったが、リリーフに転向した今シーズンは開幕から一軍で登板を続けている。3・4月は7試合で防御率7.56と打ち込まれるシーンが目立ったが、5月は8試合で防御率3.72、6月は10試合で防御率2.92と調子を上げ、7月は8試合無失点と好投。チームが好調なこともあり、勝ち試合や競った展開での登板が増えてきた。
各種指標を見ると、好投の理由もわかってくる。1.20を切ればエース級とも言われるWHIPでは1.11を記録。K%(三振数を対戦打者数で割ったもの)は、両リーグで30回以上投げたリリーフ投手で9位の29.1%を記録している。
BB%(四球数を対戦打者数で割ったもの)は10.8%とやや高いが、被打率は.193と、打者を抑え込む力は充分。これから勝ちパターンに食い込んでいくためには、無駄な四球を減らすことが課題となりそうだ。
平内はリリーフトップクラスのBB%を記録
入江同様、平内も昨シーズンは結果を残すことができなかった。開幕直後に2度一軍昇格を果たすも、3試合で防御率14.40と打ち込まれ、6月以降はファームで過ごした。
今シーズンも開幕一軍入りは逃したが、4月3日に昇格。4月は7試合で防御率3.68とまずまずの投球を見せると、5月は10試合で防御率1.80を記録した。しかし6月は11試合で防御率4.50、7月は8試合で防御率5.40と成績を落とし、前半戦終了間際に登録抹消となってしまった。
平内の投球で際立つのは、四球の少なさだ。BB%は5.6%を記録し、これは両リーグで30回以上を投げたリリーフ投手で9位の数字だ。K%は19.6%と特筆すべき数字ではないが、BB%が低いため、K/BBは優秀とされる3.5をマークしている。これは木澤、入江の数字を上回っている。
6月以降に防御率が悪化したのは、走者を置いた場面で一発を浴びたり、集中打を浴びてしまったため。被打率自体は5月から.250前後で推移しており、ここぞの場面で打たれてしまっていた恰好だ。
ここまでチーム3位タイの36試合に登板し、防御率も3点台とまずまずの投球を見せている平内。走者を背負った状況での投球が向上すれば、より競った場面での登板も増えてくるだろう。
冒頭で挙げた選手たちは今シーズンも活躍を見せ、いまやチームの主力へと成長している。この3人はまだその域には達していないものの、貴重な働きを見せていることは確かだ。今シーズン後半、そして来シーズン以降に、チームの主力と呼ばれていることを期待したい。
※成績は全て7月31日終了時点
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