2022新外国人投手で活躍するのは?
今季のNPBには楽天を除く11球団が22人もの新外国人投手を獲得した。野手は14人だ。かつては「外国人選手」と言えば圧倒的に野手が多かったが、すっかり逆転した。
その背景には、先発・救援の投手の分業が進んで投手の頭数が必要になったことがある。またMLBの一線級の先発投手は高額年俸のためNPBにほとんど来ないが、一時的にせよ通用したレベルの救援投手なら、比較的安い年俸で獲得できるということもある。
さらに今季は3年ぶりに「延長12回」までとなる。筆者は今年、糸満の千葉ロッテ二次キャンプで森脇浩司ヘッドコーチが「今年は12回やぞ、スタミナつけんとあかんぞ」とナインを叱咤しているのを聞いた。各球団は延長ルールの変更を非常に重要視している。救援投手は、昨年よりも1、2枚は余計に必要になるだろう。
そのような観点も含めて、今季の新外国人投手たちを見ていこう。
【前回記事】新外国人投手のMLB実績はあてにならない? 問われる日本野球への適応力
セは阪神の2投手が有望? 巨人の2投手は日本に適応できるか
まずはセ・リーグから
昨季のMLBの平均防御率は4.26だった。4点台前半であれば、まずまず活躍した投手と言える。
ヤクルトは左腕のアンドリュー・スアレスと右腕のA・J・コールを獲得。ともに先発での起用を検討している。どちらも変化球主体の投手だが、スアレスは昨年韓国のLGで10勝、奪三振率が高くやや期待が持てるか。
阪神は、伝統的によく働く外国人の救援投手を獲得してきた。カイル・ケラーは速球派、アーロン・ウィルカーソンは制球力が売り。どちらもMLBでの実績はないが、ともに昨年はAAAで実績を残している。
巨人はソフトバンクと並んでMLBの一線級の投手を獲得することが多い。マット・シューメーカーは、チェンジアップが武器の技巧派。2014年にエンゼルスでメジャーデビューし、16勝を挙げ注目を浴びる。2018年には大谷翔平とともに先発ローテ入りしていた。
マット・アンドリースも一時期、大谷翔平とチームメイトだった。低めにボールを集め打たせて取るタイプだ。ともに先発での起用を想定しているが、前のコラムで述べたようにMLBでの実績は、NPBではほとんどあてにならない。慎重に見極める必要があるだろう。
広島のニック・ターリーは速球とカーブの組み合わせで投げる救援左腕。MLBでの実績はほとんどないが、マイナーでは奪三振率が高い。ドリュー・アンダーソンは多彩な球種で打ち取るタイプ。MLBでは救援投手だったがマイナーでは先発投手だった。
中日のフランク・アルバレスはキューバ出身。速球派だが球団は育成でじっくり育てるつもりだろう。
DeNAのブルックス・クリスキーは、157㎞/hの速球とスプリットを武器にする典型的なクローザータイプ。MLBでの実績はないが、マイナーでは134.2回で178奪三振、K/BBも3.12と悪くない。
セ・リーグの新外国人投手では、阪神の2投手が有望ではないか。阪神の駐米スカウトはかつて「JFK」の一角で活躍したジェフ・ウィリアムスだ。救援投手の適性を見極めて獲得している可能性が高い。
巨人の2投手は、経験値、技術力は高いが、全く異なる日本野球に適応できるかどうか。広島のターリー、DeNAのクリスキーは救援投手に欲しい「奪三振力」があるのが魅力だ。
パでは救援投手の活躍に期待?
パ・リーグはどうだろうか。
オリックスのジェシー・ビドルは、2018年にブレーブスでメジャーデビューし、12ホールドを挙げた左腕。切れ味のあるカーブが持ち味だ。ジェイコブ・ワゲスパックは、2019年にブルージェイズで先発として5勝。マイナーでは救援での経験も豊富な右腕。198㎝の長身で速球が武器だ。
ロッテのタイロン・ゲレーロは身長203㎝の大型右腕で、100マイルの剛速球が武器。奪三振率は高いが、制球に難がある。
ソフトバンクのタイラー・チャトウッドは、今季の新外国人投手では巨人のシューメーカーと並ぶ大物。二けた勝利は一度だけだが主に先発として投げていた。近年は救援での登板が多い。2014年にトミー・ジョン手術を受けたが、復帰してからの方が安定感は増している。
アレクサンダー・アルメンタとマイロン・フェリックスは育成契約。自前で日本野球に適応できる投手に育てる予定だ。
日本ハムのジョン・ガントは、2019年に中継ぎで11勝19ホールド。2シームを武器とする。与四球が多いが、カージナルス時代の2020年とツインズ移籍前の2021年前半に好成績を残している。新庄剛志監督は動画を見て「思わずいいね!を押しそうになった」と語った。コディ・ポンセは、パイレーツで先発、救援両方の経験がある右腕。速球派だが、やや被本塁打が多い。
西武のバーチ・スミスは当初は先発、近年は救援。5年にわたりメジャー5球団で投げるも定着できず。ただマイナーでは奪三振率、K/BBともに優秀だ。
ディートリック・エンスは、カッターボーラー。メジャーではツインズ、レイズで投げるも結果が残せず。マイナーでの経験が長いが、主として先発だった。ボー・タカハシはブラジル出身の日系三世。マイナーから昨年は韓国のKIAに移籍。主として先発で投げていたが、西武では中継ぎで起用される方針だ。
パ・リーグではロッテのゲレーロが制球力を身に着けることができれば、中日のライデル・マルティネスのようなクローザーになる可能性があるだろう。また西武のスミス、日本ハムのガントは救援での経験が豊富で、適応すれば活躍するのではないか。
外国人投手は「投げてみないとわからない」部分があるが、一方で滑り出しが順調だとそのまま調子に乗ることも多い。開幕から注目していきたい。
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