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NPBで成功する外国人打者の3つの条件 近年は右打者が圧倒的多数に

2022 3/8 06:00広尾晃
元プロ野球選手のA.ラミレスとW.バレンティン,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

近年は右打者の活躍目立つ助っ人外国人

NPBではこれまで1000人以上の外国人選手がプレーしてきた。今やプロ野球にはなくてはならない存在だ。では、どのような選手が活躍してきたのだろうか。

まずは、2000年以降の外国人選手の通算安打数を見ていこう。上位15人は下表のようになった。なお、今回掲載したのはMLBから移籍してきた選手のみで、台湾、韓国球界から来た外国人選手は含めなかった。

2000年以降の米出身外国人打者安打数15傑,ⒸSPAIA


この表から「成功する外国人打者」の条件がいくつか見えてくる。

1つ目は右打者であることだ。安打数15傑のうち、右打者が12人。確かに日本でもアメリカでも右打者の方が多数派だが、打撃成績の上位には左打者が並ぶことが多い。しかし2000年以降の外国人選手では、圧倒的に右打者の方が実績を残している。

1位のアレックス・ラミレスは、外国人では唯一2000安打を達成。本塁打、打点でも2000年以降は1位だ。2位のアレックス・カブレラは西武在籍時の2002年、当時のNPB記録に並ぶ55本塁打を記録。3位のホセ・フェルナンデスは12年にわたって5球団で活躍した。

これらはすべて右打者。左打者は安打数4位のタフィ・ローズと13位のロベルト・ペタジーニのみ。この2人はいずれも2000年代初頭に活躍した選手だ。

かつては2年連続三冠王を獲得したランディ・バース、通算打率.321を記録したウォーレン・クロマティ、4000打数以上で通算打率1位のレロン・リーなど、NPBで大活躍した左打者がたくさんいた。なぜ、NPBで左打ちの外国人打者が活躍できなくなったのだろうか。

日米ともに「優秀な左打者」は、試合出場の機会が多くなる。投手は圧倒的に右投げが多いから、左打者は有利なのだ。NPBからMLBに移籍して成功する打者も、イチロー、松井秀喜、大谷翔平など左の方が多い。

アメリカから日本に来る左打者は、端的に言えばMLBでは結果が残せなかった打者だ。かつてはそれでもNPBの投手相手には通用したが、近年は投手のレベルが上がってNPBでも通用しなくなったのではないだろうか。

その一方、右打者はMLBでも圧倒的に数が多いので、実力があっても出場機会に恵まれないケースもある。そういう右打者がNPBに来て活躍していると考えられる。

狙い目はMLB「出世前」?

前述の安打数上位15選手の、NPBでプレーを始めた年齢の平均は28.2歳。彼らの多くは20代半ばでメジャーデビューを果たしているが、そこでは十分に結果を残すことができず、来日している。

彼らはMLB時代も素質を高く評価される有望株だったが、様々な事情でMLBでは十分な活躍できなかった。いわば「出世前」の状態で、働き盛りの30歳前後で日本にやってきたのだ。そしてそのうっぷんを晴らすべくNPBで活躍したというストーリーが成り立つ。

アレックス・ラミレスはインディアンスでは大打者マニー・ラミレスの控え選手。コンタクトの良いシュアな打者とされたが、早打ちで四球が少なかったために評価が低かった。

ウラディミール・バレンティンはイチローがいた時代のマリナーズで走攻守揃った5ツールプレイヤーとして期待されたが、三振が多く、むらっけがあってメジャーに定着できなかった。

この中では2020年までDeNAで活躍したホセ・ロペスが、MLBでもレギュラーでオールスターにも出場している。イチローが262安打のMLB記録を樹立した2004年にMLBデビューし、正二塁手として5年間規定打席に到達したが、以後はレギュラー落ちした。彼もまだ働ける30歳で来日している。

数字を見る限り、メジャーで十分に実績を残し35歳前後でNPBに移籍する選手よりは「出世前」の選手の方が期待できると言うことになる。

なお、メジャー経験のないマイナーリーガーで2000年以降に500安打したのは、キューバ出身のアルフレド・デスパイネ(706安打)を除けば、アーロム・バルディリス(793安打)とタイロン・ウッズ(851安打)だけ(※)。可能性はないわけではないが、成功する確率は低いと言えよう。

※タイロン・ウッズは韓国球界経由でNPB入りしたため、前述の表には未掲載

長距離砲よりも中距離打者が活躍

前述の安打数上位の選手たちのMLBでの成績も見てみよう。MLBでは試合出場が少ないこともあり平均本塁打数は18.9本だ。NPB記録のシーズン60本塁打を記録したバレンティンもMLBでは15本しか打っていない。

2000年以降の米出身外国人MLB成績,ⒸSPAIA


また、本塁打よりも二塁打が多い中距離打者も多い。阪神で活躍したマット・マートンは、2006年に1試合4二塁打のMLBタイ記録を作っている。MLBではパワー不足、本塁打が打てないと言われた打者が、NPBの投手に適応して本塁打を量産するケースはよくあるのだ。

NPBで成功する打者は、必ずしも「メジャー通算何本塁打」などの肩書を引っ提げて来日する選手とは限らない、と言えよう。

以上から、NPBで活躍する外国人選手の条件として、「右打者」「出世前」「中距離打者」の3つが見つかった。この視点で今季の新外国人選手を査定すれば、面白いことが見えてくるのではないだろうか。

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