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新外国人投手のMLB実績はあてにならない? 問われる日本野球への適応力

2022 3/18 11:00広尾晃
元外国人プロ野球選手のR.メッセンジャー/D.サファテ/S.マシソン,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

NPBで活躍するのはMLBで実績のない投手?

外国人選手と言えば、昭和の時代は主として打者だった。投手もいるにはいたが、実績を挙げた投手は少ない。また、MLBで活躍した一線級の投手がNPBに来ることも少なかった。

アメリカから来た外国人投手の最多勝は、ジョー・スタンカ(南海、大洋)とジーン・バッキ―(阪神、近鉄)の100勝だが、スタンカはMLBでわずか1勝、バッキ―はマイナーリーガーだった。NPBに外国人投手が数多く来るようになったのは1994年、外国人選手枠が「2人」から「3人(投手か野手を1人は含む)」になってからだ。

2000年以降、NPBで投げた外国人投手のうちMLBで50勝、50セーブ、50ホールド以上を挙げた投手は8人いる。彼らMLBで一線級だった投手のNPBでの実績を見ていこう。NPBからMLBに復帰して以降の成績は含まない。

来日時点でMLB実績が50勝、50セーブ、50ホールド以上の投手のNPB成績(2000年以降),ⒸSPAIA


ブラッド・ペニーはドジャース時代の2006年に最多勝。しかし2008年に右肩を故障してからは成績が下降。2012年にソフトバンクに入団したがたった1試合に投げただけだった。

ビセンテ・パディーヤは、MLBでは先発、救援両方で実績を残し、二けた勝利5回。2013年にソフトバンクに移籍したものの、わずか16試合の登板に終わった。ダン・ミセリはメジャー時代セットアッパー、クローザーとして活躍。巨人でも期待されたが、開幕戦で敗戦投手、以後も成績が振るわず4月中に解雇された。

上記の投手は全員、1年未満で退団している。こうした「大物投手」の多くは、30代半ばで来日するため、ピークを過ぎてしまっていた。またアメリカでの成功体験が大きいので、なかなかNPBのスタイルに適応できないことも多い。

2000年以降活躍した助っ人たちの成績を振り返る

一方、2000年以降、実績を挙げた外国人投手は以下の顔ぶれだ。まずは先発。台湾、韓国などMLB機構以外からの外国人投手は含まない。

2000年以降のNPB通算勝利数5傑,ⒸSPAIA


ランディ・メッセンジャーはMLBではマリナーズでイチローのチームメイトだったが、先発ではなく中継ぎ。しかも二線級だった。2010年に阪神に来て、2014年には最多勝。最多奪三振も2回。毎年3000球以上を投げる抜群のスタミナで、スタンカ、バッキ―の持つアメリカ系の外国人選手の最多勝記録にあと「2」まで迫った。

ジェレミー・パウエルは2001年に近鉄入団。2002年に最多勝、最優秀防御率、最多奪三振。オリックス、巨人、ソフトバンクと渡り歩いた。ジェイソン・スタンリッジは2007年シーズン中にソフトバンクへ。阪神、ロッテでも活躍。セス・グライシンガーは韓国の起亜を経て2007年、ヤクルトでいきなり最多勝、翌年巨人でも最多勝。ロッテでも投げた。DJホールトンは2008年にソフトバンクへ入団し、2011年に最多勝を獲得。のちに巨人にも在籍した。

次は救援投手。セーブ数、ホールド数上位5傑は下表のとおり。

2000年以降のNPB通算セーブ数とホールド数5傑,ⒸSPAIA

デニス・サファテは2011年広島に入団し、クローザーとして活躍。西武を経てソフトバンクへ移籍すると、2015年から3年連続最多セーブ。2017年にはNPB記録の54セーブ、MVPを獲得した。

マーク・クルーンは2005年横浜に。当時NPB記録の球速162㎞/hをマーク。巨人に移籍した2008年には最多セーブも獲得した。

スコット・マシソンは2012年に巨人に入団、クローザー、セットアッパーとして活躍。最優秀中継ぎ投手2回。ジェフ・ウィリアムスは2003年阪神へ。勝利の方程式「JFK」の一翼を担い、クローザー、セットアッパーとして活躍した。

問われる日本野球への適応力

NPB球団の元投手コーチは「NPBとMLBの投手起用法は、全く別物だ」と語る。「先発はMLBは中4~5日、NPBは中6日だが、MLBは100球で降板。NPBはそうとは限らない。MLBの打者は長打を狙うが、NPBの打者は走者を進めようとする、打者への攻略法も違う。実績ではなく、日本の環境にいかに適応できるかだ」

また救援投手についてもいろいろ異なっている。元ロッテのクローザー荻野忠寛は「日本の場合、試合状況次第では、肩を作っても出番がなくて、いったん休んでいたら状況が変わって、急遽また肩を作らされるみたいなことがよくありますが、ボビー(バレンタイン監督)のときはそれがなかった」と語っている。

さらに、MLBではコーチの指導は限定的で、「選手から質問しなければ教えない」ことが多いが、NPBのコーチはフォームや配球、調整方法などについてアドバイスをする。外国人投手の中にはそのアドバイスによって劇的に進化することもあるのだ。

NPBに来るまでは無名だった投手がNPBで投球術に開眼し、MLBに復帰して一線級の投手になるケースもある。横浜で1年プレーした後、インディアンス、ロッキーズで救援投手として活躍したラファエル・ベタンコート(MLBで38勝75セーブ、149ホールド)や、巨人で3年投げたのちカージナルスでいきなり最多勝を挙げたマイルズ・マイコラス(MLB33勝27敗)などがそれだ。

そういう意味では、投手の場合は打者と異なり、MLB時代の実績では活躍が予測できないと言えるだろう。前出の元投手コーチは「メジャー経験はあった方がいい。それから注視しているのはK/BB(奪三振数÷与四球数)。この数値は良い投手は制球力があって即戦力になることが多い。でも何より大事なのは人の話を“聞く耳”を持っていることだね。日本の野球に適応する柔らかな頭があることが大事」と語る。

日米のプロ野球のスタイルは大きく異なっている。とりわけ投手は、そのギャップを自ら埋めることができる柔らかな感性が必要なのだろう。

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