「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

ラプソード直撃取材① ダルビッシュも使用するラプソードって何?

2022 3/19 11:00勝田聡
ラプソード製品一式,ⒸRapsodoJapan
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸRapsodo Japan

ラプソード担当者に直撃取材

ここ数年、NPBでもデータ分析が盛んになってきた。それに伴い、投球や打球などを測定・分析する機器の導入も進んでいる。トラックマン、ホークアイ、ラプソード……多くの野球ファンは、野球中継やメディアによる発信で一度は耳(目)にしたことがあるのではないだろうか。

これらのハイテク機器で、様々なデータを計測できることはわかる。けれども弾き出された数値が意味するものはよくわからない。なんだか難しそう、そんな印象を受けるファンも多そうだ。筆者ももちろんそのひとりである。

その疑問を少しでも解消するべく、ラプソードを手掛ける株式会社Rapsodo Japan(以下、ラプソード社)のプロダクトマーケティングマネージャー・花城健太さんにお話をうかがった。
(本連載は全3回を予定)

ラプソードは打球用と投球用の2種類ある

まず、よく耳にする”ラプソード”とは何を指すのだろうか。会社名なのかシステム名なのかもわからない。

「ラプソードはブランド名です。ファンの皆さまがメディアで目にしたことがある機器には、『PITCHING 2.0』、『HITTING 2.0』といった名称がそれぞれ付いています。両製品ともに高精度なカメラとレーダーを搭載しており、投球・打球から様々なデータを計測することができます」

PITCHING2.0(左)とHITTING2.0

投球計測用のPITCHING 2.0(左)と打球計測用のHITTING 2.0


投球を計測する『PITCHING 2.0』と打球を計測する『HITTING 2.0』と2つの機器があり、ラプソードはブランド名とのことだった。打球と投球で違う機器を使って計測することも知らなかった。

「投球・打球ともに一つのレーンごとに1台のみ必要で、マウンドとホームプレートの間の所定の位置に設置します。計測されたデータは数秒後に、iPad上のアプリからリアルタイムで閲覧が可能です。球場にカメラなどを設置する必要はありません」

カメラなどは不要でそれぞれの機器があれば計測は可能とのこと。球場や施設を巻き込んでの大掛かりな導入工事は必要なさそうだ。

実際の打球測定の様子

実際の打球測定の様子

ダルビッシュ投手の動画で認知度が大幅アップ

もともとラプソードというブランドは、野球のために開発されたものではない。2010年にゴルフの弾道やスイングを分析するシステムとして立ち上がり、2016年に野球向けの事業が始まったという。野球だけでみるとまだ5、6年しか経っていない。

また、日本法人が立ち上がったのは2021年3月でまだ1年余り。それでもここ最近は、その名前をメディアによる報道やネットニュース、ファンの間でもSNSを中心によく目にするようになった。ラプソード社でなにか仕掛けを打ったのだろうか。

「日本で追い風になったのは、ドライブライン(・ベースボール/シアトルのトレーニング施設)へ日本の投手が多くトレーニングをしにいったことでしょうか。ドライブラインでは、投球や打球を計測する機器としてラプソードが使用されています。そこでNPBの球団関係者やトレーナーさんたちが興味を持ち、そこから徐々に広まっていきました」

調べてみると、世の中がコロナ禍に陥る直前の2019年11月から12月にかけて、今永昇太(DeNA)ら複数の投手がドライブラインへと足を運んでいた。だが、それだけでここまで一般的に知られるまでになるだろうか。

ラプソード社が日本法人を立ち上げたのが、2021年3月のこと。実はこの直前に神風が吹いたのだという。

「去年の2月にダルビッシュ有投手(パドレス)が、ラプソードを使って投球練習を測定している光景をYouTubeにアップしました。それが数百万回(2022年2月末時点で333万回)再生されています。そこから爆発的に問い合わせが多くなり、メディアで取り上げられる機会が増えてきました」

ダルビッシュという超一流プレーヤーが自身の投球練習をラプソードで計測し、それを解説したことで露出が増え、知名度が急上昇したのだ。

ラプソードは感覚とデータの融合を促すもの

野球事業が立ち上がってからわずか5年ほどだが、日本国内での取り扱いも増えているようだ。

「NPBではDeNAやロッテ、中日など、ほとんどの球団で採用いただいています。社会人では昨年の都市対抗を制した東京ガスなど、大学では六大学野球の全6チームが導入済みで、高校では全国の約60チームに利用いただいています。最近では中学の硬式チームからの問い合わせも増えてきました」

日本国内でもほぼ全てのカテゴリーで導入されているのは驚きだ。また、ダルビッシュのように個人で購入する選手もおり、NPBでは平良海馬(西武)も個人ユーザーのひとりだという。

だが、ただ使用するだけで選手のパフォーマンスが向上するわけではない。「ラプソードは、指導者の経験や選手の感覚とデータの融合を促す、あくまで選手・指導者をサポートするためのものです」と、花城さんも選手と指導者をサポートするツールであることを強調していた。選手や指導者は数値の意味を理解し、それをもとにどう練習に取り組んでいくのかが大事になってくる。

数値の意味については、ファンも理解するに越したことはない。例えば、『HITTING 2.0』で計測できる項目のひとつに打球速度がある。投手の球速は球場でも表示され、テレビ中継でも当たり前になった。それもありストレートの場合、150キロを超えると速いといった感覚をファンも持っている。

ただ打球速度はピンとこない。150キロが速いのか、それとも遅いのか。NPBでは一般に打球速度などの詳細データが公開されていないため、MLBでのデータをもとに説明してもらった。

「打球速度については、速ければ速いほど安打になる確率が高まります。MLBの平均は142.9キロと言われており、昨季の平均打球速度のトップはアーロン・ジャッジ選手(ヤンキース)で154.1キロ。大谷翔平選手(エンゼルス)は150.6キロでした。最高打球速度で見ると、MLBトップがジャンカルロ・スタントン選手(ヤンキース)の196.6キロです」

最高速度は球速よりも打球速度のほうが圧倒的に速い。だが“速い”の基準は、投手の球速と同じように150キロ程度と考えて問題なさそうだ。

データが普及することでメディアにも計測された数値が登場する機会は増えてくる。その数値が意味するものを”なんとなく”でもわかると野球がより一層おもしろくなるだろう。

次回以降では、ラプソードで計測できる打球と投球のデータについて、もう少し深く切り込んでいく。

ラプソード公式サイト:http://rapsodo.com/ja/
ラプソード公式Twitter:@rapsodojp

【関連記事】
日本球界で話題のラプソードに迫る~第2回打球を計測する際に重要なこと