続々と集結する球団OBたち
今オフ、いつになくストーブリーグを沸かせているのが、セ・リーグ最下位に終わったDeNAだ。10月に行われたドラフト会議では、阪神との競合の末に高校No.1右腕・小園健太(市和歌山)の指名に成功。
シーズン終了後には、1998年の日本一を知る鈴木尚典、斎藤隆、石井琢朗が揃ってコーチに就任。実業家としても活躍していた小杉陽太や、ヤクルト、巨人でも活躍した相川亮二のコーチ就任も決まった。さらにここに来て、楽天から戦力外通告を受けていた藤田一也を獲得するなど、続々と球団OBが集結してきている。
今オフだけでも多くの「出戻り」を実現させているDeNAだが、実はこれまでにも多くの選手たちが復帰を果たしているのだ。
小池正晃、鶴岡一成はトレードで移籍もFAで復帰
一度はDeNA(横浜)を退団しながらも、復帰した選手は意外と多い。この20年ほどで出戻りを果たした主な選手は以下の通り。
直近では、2020年の髙城俊人がそうだ。2018年途中に、白崎浩之とともに伊藤光・赤間謙とのトレードでオリックスに移籍した。その後、2019年オフに戦力外通告を受けると、直後にDeNAが獲得。わずか1年半での電撃復帰だった。
2019年には、2014年限りで一度は現役を引退しながらも、故障が癒えたことから独立リーグで現役復帰を果たした古村徹が再び入団。1軍登板は叶わなかったが、現在も球団職員としてチームを支えている。
2013年には、多村仁志、吉川輝昭の2名がソフトバンクとの大型トレードで古巣に戻ってきた。多村は2006年オフに寺原隼人と、吉川は2010年途中に井手正太郎と、いずれもトレードで移籍し、再びトレードで戻ってきた珍しい例だ。
2012年には、さらに珍しい例がある。2008年6月に石井裕也とのトレードで中日に移籍した小池正晃と、やはり2008年6月に真田裕貴とのトレードで巨人へ移籍した鶴岡一成が、いずれも国内FA権を行使して古巣に戻ってきたのだ。鶴岡は2013年オフ、阪神からFAで獲得した久保康友の人的補償として再びDeNAを離れることになったが、2019年からは古巣のバッテリーコーチを務めている。
2011年には、前年に自由契約となっていたスティーブン・ランドルフが、開幕後に復帰。東日本大震災の影響で一時帰国、再来日が困難なためプロ野球史上初の制限選手となったブレント・リーチの代役として、再入団となった。
メジャー帰りの選手も2名。クローザーとして1998年の日本一に大きく貢献した「大魔神」佐々木主浩は、1999年オフにFAでシアトル・マリナーズへ移籍。4年間プレーしたのち2004年に横浜に復帰した。1998年オフにメジャー移籍を希望して自由契約となった大家友和も、12年の時を経て2010年に復帰、現在はファームで投手コーチを務めている。
古巣を優勝に導いた黒田博樹、青木宣親
DeNAだけでなく、他球団でも印象的な出戻りはある。
今シーズン、開幕前に話題をさらったのは、楽天の田中将大(前ニューヨーク・ヤンキース)だった。8年ぶりの日本球界復帰は、コロナ禍で苦しむ野球界、ファンに多くの希望を与えてくれた。シーズンでは勝ち星こそ伸びなかったが、安定した投球でチームのクライマックス・シリーズ進出に貢献。来季の残留も発表し、期待も高まっている。
田中のほかにも、黒田博樹はヤンキースから広島へ、青木宣親はニューヨーク・メッツからヤクルトへ復帰し、黒田はリーグ優勝、青木は日本一へとチームを導いた。黒田と時を同じくして、新井貴浩も阪神から広島への復帰を決め、投打の精神的支柱として若手に背中を見せた。
今シーズン限りで引退した「平成の怪物」こと松坂大輔もその一人だ。1999年のプロ入りからタイトルを総なめにし、2006年オフにボストン・レッドソックスへ移籍。2015年にソフトバンクに入団すると、中日を経て2020年からは古巣・西武に復帰した。晩年はケガに泣かされたが、最後まであがき続けた姿は、後輩たちの手本となったことだろう。
藤田一也に期待されることとは
プロ入り後も堅実な守備を武器に活躍した藤田は、DeNA元年の2012年シーズン途中に、楽天へ移籍。レギュラーの座を掴むと、翌2013年には副キャプテンとしてチーム初のリーグ優勝、日本一に大きく貢献し、ベストナイン、ゴールデングラブ賞も受賞するなど飛躍を遂げた。
しかしここ数年は出場試合数を減らし、2021年はついに1軍出場なしに。戦力外通告を受け、選手以外のポストを打診されていたが、これを受けずに古巣復帰を決意した。
他球団での活躍を経て、ベテランとなってからの古巣復帰には様々な思惑がある。戦力としてはもちろん、その技術や経験値を若手に伝えること、プロとして長く戦うための姿勢を見せること、さらには引退後のコーチとしてのポストを見据えていることもあるだろう。きっと、藤田に期待されているのもこういった部分だ。
プロ入り前からの横浜ファンである藤田は、入団会見で「ベイスターズ愛は変わらない」と口にした。このひと言で、トレード時には「なぜ藤田を…」と悲しんだファンたちの心をグッと掴んだ。ともにプレーもした三浦大輔監督を胴上げすべく、円熟味を増した「ハマの牛若丸」が10年ぶりの横浜で躍動する。
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