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パ・リーグの明暗を分けた「2番打者」 比較してみえてきたその重要性

2021 12/18 11:00浜田哲男
オリックス・バファローズの宗佑磨・千葉ロッテマリーンズの藤原恭大・福岡ソフトバンクホークスの今宮健太,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

得点力に大きな影響を及ぼす

犠打やエンドランなどの小技に長けた打者が起用される一方で、近年は長打力に優れた強打者が担うことも多い2番。1番打者が出塁すればチャンスの拡大、逆に凡退すればチャンスメイクが求められるなど、クリーンナップの前を打つ2番打者の働きはチームの得点力に大きく影響する。

今季、パ・リーグの各チームで最も2番打者に起用されたプレーヤーを比較しつつ、それぞれの打線においてどのように機能していたかを振り返る。

上位2チームは2番が機能

まずはリーグ優勝を果たしたオリックス。シーズン序盤は宗佑磨や太田椋、佐野皓大、大城滉二、安達了一、紅林弘太郎、中川圭太らのほか、吉田正尚やT-岡田といった強打者などさまざまな選手を起用していたが、5月14日の楽天戦以降はほとんどの試合で宗が2番に定着。宗は5月の月間打率.318(出塁率.408)をマークし、同時期に1番に定着した福田周平とともに打線を牽引。交流戦の優勝に大きく貢献し、チームは勢いに乗った。

宗は走者無しの場面では打率.251だが、走者一塁では.327、一二塁では.333、二塁では.289と高くなり、チャンスを拡大してクリーンナップへつなぐ役割をこなした。カウント0-0での打率が.407、4本塁打であることからもわかるように、時折見せる思い切りのいい打撃も相手の脅威となった。

ロッテで最も多く2番に起用されたのはレオネス・マーティン。シーズン前半は4番の安田尚憲が好調だったこともあり、OPS(出塁率+長打率)に優れた2番のマーティン(4月のOPSは1.017)との相乗効果で多くの得点をたたき出した。

その後に安田が不調となりマーティンが4番を務めるようになると、代わって2番に入った藤原恭大が大活躍(7月は打率.400、出塁率.488)。マーティンが担っていた2番を誰が打つかという問題を難なく解消し、チームは上昇気流に乗った。しかし、藤原の負傷離脱や復帰後の不振と波長を合わせるように打線全体が下降。打線における2番の重要性を改めて思い知らされることとなった。

2021年パ・リーグ 2番での出場最多選手の成績比較,ⒸSPAIA


2番が定まらないソフトバンクは低迷

楽天は開幕当初、2番には小深田大翔を起用していたが、4月25日の西武戦以降はほとんどの試合で鈴木大地が務めた。

左打者の鈴木の打球方向を見ると、右中間が26%と最多で次に多いのが23%の右翼。引っ張ることができ、三振を1つ喫するまでにかかる打席数を示す指標「PA/K」も12.31(リーグ2位)と高く、打線のつながりという面で優秀な数値をマークした。だが、主砲・浅村栄斗の不振や期待された外国人助っ人の不発も響き、”2番鈴木”が機能したとは言えなかった。

シーズンの最初から最後まで2番に試行錯誤を続けたのがソフトバンク。最も2番で出場したのは今宮健太の35試合で、次が中村晃の25試合、柳田悠岐の24試合、牧原大成の17試合と続く。そのほかにも三森大貴、栗原陵矢ら、前述の4人含め計17人が2番に起用されており、シーズンを通じて打線のやりくりに苦労していたことがわかる。

クリーンナップがしっかりとしている上で、柳田のような強打者を2番に置くならまだしも、やはりシーズン早々にジュリスベル・グラシアルが怪我で離脱し、アルフレド・デスパイネも故障や五輪予選出場で欠いていたことが響いた。

打線全体のバランスが重要

日本ハムで最も2番に起用されたのは西川遥輝。シーズン序盤は1番や3番などを任されていたが、7月上旬あたりから2番での出場が増えた。打率.233と打撃は低調に終わったものの、出塁率は.362と一定の存在感は見せた。

例年4番に座っていた中田翔の不振とトレード移籍の影響などもあり、主軸に迫力と厚みがなかったことで西川へのマークも厳しくなるなど、出塁を得点に結びつけることが難しい状況だった。

西武は源田壮亮の67試合が最多で、次に多いのが8月後半から2番に起用されるケースが増えた岸潤一郎の30試合。源田は10月こそ打率.352、出塁率.390と好成績をマークしたが、8月が打率.239、出塁率.271、9月が打率.221、出塁率.260と低迷するなど好不調の波があった。

シーズン前半、盗塁王争いを独走するなど1番打者として存在感を放っていた若林楽人が怪我で離脱してしまったが、やはり1番を固定できた上で2番に源田が入るのが、ここ数年を見ても西武の理想的な形だろう。

各チームを振り返ると、オリックスに代表されるように2番を固定できたチームの打線はよくつながり、勢いに乗ることができた。ロッテはシーズンを通じて固定していたわけではないが、シーズン前半に2番に入ったマーティンが打ち、後半の途中まで2番の藤原が好調な間は打線がつながり、一定の得点力を保持していた。

この2チームは、2番のやりくりに四苦八苦していたソフトバンクとはチームの成績も含めて対照的であり、改めて2番打者の重要性がうかがえる。

今季は打席数の違いはあれど、浅村や柳田、中田、森友哉といった強打者が2番に起用されるケースが散見された。前述したロッテのマーティンと安田が好調だった際の例でわかるように、クリーンナップがしっかりとしている上で2番に強打者を置くのは一考だが、そうでないのに2番に強打者を置いたとしても、その効果は薄いかもしれない。

どんなタイプの打者が2番に適しているかといったことよりも、打線全体のバランスが重要だと言える。

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