五十幡亮汰を4番打者候補に指名
監督就任会見で「優勝は一切目指しません。9月になって優勝争いをしていたら考える」と、周囲の度肝を抜いた日本ハムの新庄剛志ビッグボスがまたも新機軸を打ち出した。
「4番は俊足左打者、強打者は6番」。発想は自らが現役時代、内野を守っていたときのこと。二死満塁で俊足の左打者がゴロを打つと、焦って悪送球をすると2点が入ることから。自らが任されることも多かった6番は、走者がたまっていることから。
「6番重視」は今季の日本一監督・高津臣吾と同じだ。ヤクルトは日本シリーズMVPに輝いた中村悠平が終盤から6番に固定され、ポイントゲッターなりチャンスメーカーになった。
さて、その新4番打者候補一番手は今季のドラフト2位ルーキー、五十幡亮汰外野手だ。1番打者を中心に27試合18安打、打率.225、1本塁打、5打点、9盗塁(1盗塁死)。中3時、100メートル元記録保持者だったあのサニ・ブラウンに競り勝った超俊足。その後、栃木・佐野日大高から中大に進んだ。
「巨人の4番」と「阪神の4番」
巨人の4番打者は丸佳浩で第90代。対する阪神は佐藤輝明が第107代4番だ。巨人は長嶋茂雄・王貞治以降、落合博満やラミレスなど外様の4番打者もいたとはいえ、原辰徳(打点王)・松井秀喜(首位打者、本塁打王、打点王)・阿部慎之助(首位打者、打点王)・岡本和真(本塁打王、打点王)ら生え抜きの四番打者が出現している。
一方の阪神は田淵幸一・掛布雅之以来、オマリー・金本知憲・新井貴浩・ゴメスら外様の4番打者は多くいるが、岡田彰布・桧山進次郎ら生え抜き四番打者は打撃三冠のタイトルを獲得していない。掛布以来の「ミスター・タイガース」が誕生しないのだ。
4代目ミスター・タイガース掛布は言う。「セ・リーグにはヤクルト・村上隆宗、巨人・岡本、広島・鈴木誠也と4番の顔が見える打者がいた。阪神はチームの勝敗の責任を、大山悠輔が背負えなかった」とV逸の原因を語った。
掛布は「4番の条件」として、「打率.280、30本塁打、90打点」さらに「安打+四球=200」を挙げた。
つなぎの四番から「新たな得点パターン」
かつてヤクルトは古田敦也が97年にわずか9本塁打ながら打率.322、86打点でシーズンMVPに輝き、「4番打者像を変えた」と言われた。
ヤクルトではその古田の2007年の引退試合で青木宣親が初めて4番に座った。2009年クライマックスシリーズでも4番。メジャーから日本球界復帰の2018年にも4番を任された。しかし、稀代のヒットメーカー・青木をもってしてもシーズン最多が07年の20本塁打。「安打でつなぐ四番」ということになる。
ほかに過去「つなぎの4番」として思い浮かぶのは、サブロー(ロッテ)や2009年WBCに出場した侍ジャパンの稲葉篤紀(当時日本ハム)だろう。
打順と言えば、1番が出塁、2番がバント、3番が安打、4番が本塁打、5番が打点と相場は決まっていた。それが最近はメジャーにならい日本では坂本勇人(巨人=19年40本塁打)、本家のメジャーでも大谷翔平(エンゼルス=21年46本塁打)が「2番」で長距離砲ぶりを発揮している。
野球は時代とともに変わる。新庄ビッグボスの「4番・五十幡」構想は新しい得点パターンを作り出すかもしれない。
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