マイナス0.5ゲーム差でヤクルトが首位という珍現象
プロ野球もいよいよ佳境に入る。セ・リーグはヤクルトが8連勝で首位。2位がゲーム差なしで阪神が追い、3位・巨人は阪神に連敗して4ゲーム差となった。いずれにしても優勝はこの3チームのいずれかだろう。
ヤクルトが首位に浮上した22日、「マイナス0.5ゲーム差」という珍しい状況となった。貯金は阪神の方が多いものの、勝率でヤクルトが上回ったためだ。シーズン終盤に入って阪神の引き分けの少なさが順位に影響を及ぼしている。
9回打ち切りで延長のない今季は各チームとも引き分けが多い。セ・リーグでは巨人の17分けを筆頭に軒並み2桁ドローを記録しているが、阪神はここまで65勝48敗7分けと12球団唯一の1桁だ。
リーグトップ34セーブのスアレス
引き分けが少ない要因としては、クローザーのロベルト・スアレスが完璧に近いリリーフを見せていることが大きい。今季は51試合に登板して1勝1敗34セーブ(リーグトップ)、防御率1.43をマークしている。阪神の引き分け試合が下の表だ。
スアレスは9回の1イニングだけを任されており、引き分けた7試合のうち6試合で失点、自責点ともに0。救援失敗したのは、9月23日の中日戦(バンテリンドーム)で3-1と2点リードの9回に登板し、大島洋平と福留孝介にタイムリーを浴びて引き分けたのが唯一だ。
引き分けた試合以外でも、失点したのは51試合中5試合のみ。唯一の黒星は7月1日のヤクルト戦(甲子園)で、1-1の同点で迎えた9回に登板、宮本丈にタイムリーを喫して降板した。後を受けた馬場皐輔も打たれて0.2回4失点で敗戦投手となった。
引き分けに「勝ちに等しい引き分け」と「負けに等しい引き分け」があるとすれば、阪神はほとんどが「勝ちに等しい引き分け」と言える。クローザーが打たれて、せっかくのリードをフイにした試合が少ないからだ。
延長がない今季は9回になった時点でリードしているか同点であれば迷いなくスアレスを投入できるのは、矢野燿大監督にとっても大きいに違いない。
2014年パ・リーグは引き分けの少ないオリックスがV逸
他球団を見渡しても、開幕から22試合連続無失点の新人記録を作った栗林良吏がいる広島は11分け(47勝61敗)と12球団で阪神に次いで少ない。絶対的なクローザーがいる球団は引き分けが少ない傾向にあると言える。
首位を走るヤクルトも石山泰稚が前半だけで4敗を喫するなど不調のため6月に登録抹消されたが、来日3年目のスコット・マクガフが代役クローザーとして安定。ここまで53試合登板で2勝1敗23セーブをマークしているのも躍進の一因だろう。
逆に巨人は開幕からクローザーを務めたルビー・デラロサが米国の市民権申請手続きのために帰国後は、チアゴ・ビエイラが32試合連続無失点を記録したが、9月に入って一時戦線離脱するなど不安定。近年の課題となっている絶対的守護神の不在に泣かされた試合も少なくない。
9月24日の阪神戦(東京ドーム)では6-5でリードしながら9回に登板したビエイラが失点して6-6で引き分け。これこそ「負けに等しい引き分け」だろう。
ただ、阪神はクローザーの安定による引き分けの少なさが、勝率に微妙な影響を与えているとすれば皮肉な話。2014年のパ・リーグでは78勝60敗6分けのソフトバンクが、80勝62敗2分けのオリックスを勝率で上回って優勝した。同じ貯金18にもかかわらず、オリックスは引き分けの少なさに泣いた。
いずれにせよ、今後の試合では勝ち試合をいかに確実に勝つか、同点の展開なら最低でも引き分けに持ち込めるかが優勝争いに直結する。泣いても笑っても残り約4週間。史上稀に見る大混戦のペナントレースはいよいよ最終コーナーに入る。
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