巨人・菅野智之に投げ勝ち13奪三振完封
もしかしたら偉大なる投手のプロローグを目の当たりにしているのかも知れない。阪神・髙橋遥人が25日の巨人戦(東京ドーム)でプロ初完封をやってのけた。巨人打線を相手に5安打、13奪三振、128球の完璧な内容。優勝争いの大詰めの中、球界を代表する右腕・菅野智之に投げ勝っただけに価値は高い。
亜細亜大からドラフト2位で入団して4年目。ゆったりしたフォームから繰り出すストレートは平均146.4キロで、変化球もシュート、カットボール、スライダー、チェンジアップ、カーブと多彩だ。
しかもコントロールが絶妙。ストライクゾーンを9分割したSPAIAのデータでは、左打者の41.1%が外角低め、右打者も計42.9%が外角低めか真ん中低めとなっており、被打率も低い。まだ今季3試合のため分母が小さいとはいえ、丁寧に低めをつくことができれば大崩れはないだろう。
元々期待は高かったが、今季はケガのため開幕を二軍で迎え、長いリハビリを経て9月にようやく一軍昇格。復帰戦となった9月9日のヤクルト戦は4回6失点とブランクが響いたが、同18日の中日戦は7回無失点で昨季の沢村賞左腕・中日の大野雄大に投げ勝って今季初勝利を挙げている。
先発ローテーションを担う左腕がルーキーの伊藤将司しかいなかった阪神にとって、高橋の復帰はこの上なく明るいニュースだ。
江本孟紀、石嶺和彦、井川慶が背負った「29」
背中には偉大なる背番号「29」をつける。そう、かつての左腕エース井川慶が背負った番号だ。
抜群の球威を高く評価されていた井川は星野仙一監督1年目の2002年に14勝。翌2003年には20勝をマークして18年ぶりの優勝に大きく貢献した。2005年も13勝で岡田彰布監督を胴上げするなど、阪神時代だけで86勝。その後、MLBヤンキースやオリックスでもプレーした。
井川が渡米した後は2006年ドラフト希望入団枠で入った小嶋達也が背負った。遊学館高時代からプロ注目左腕と騒がれ、大阪ガスから満を持してプロ入りした未来のエース候補だった。結果的にはプロ通算4勝9敗と大成せず、2016年にユニフォームを脱いだが、井川の後継者と期待されていたからこその背番号29だった。
さらにさかのぼれば、江夏豊らとの4対2のトレードで1976年から加入した江本孟紀や、オリックスからFA宣言して1994年から加入した石嶺和彦も背負った番号だ。長い阪神の歴史上でも重みのある背番号であることは間違いない。
大一番での強さはエースの条件
ヤクルト、巨人と優勝を争う阪神。熾烈なペナントレースを戦う上で高橋が重要なピースであることはもちろんだが、来季以降どこまで大きく育つのか楽しみでもある。
2018年4月11日に甲子園で行われた広島戦で挙げた初登板初勝利は、球団の新人では村山実以来59年ぶりだった。ここまでプロ通算12勝、シーズン最多は昨季の5勝と勝ち星は多くないが、大一番に強いハートは間違いなくエースの資質だ。
打席時の登場曲は「崖の上のポニョ」。童顔で憎めないキャラクターにはスター性も感じさせる。
今後、井川を超える大エースに成長するか。高橋にはスケールの大きな左腕になってほしいと願うばかりだ。
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