ダイヤの原石を次々に発掘するソフトバンク
プロを目指すアマチュア野球選手にとって、ドラフト会議は人生を変える、まさに「運命の1日」だ。今年は明桜高・風間球打、市和歌山・小園健太、高知高・森木大智の高校生投手が注目されているが、近年は上位指名だけでなく、育成ドラフトも大きなウエイトを占めつつある。
最近はアマチュア時代はそれほど評価されていなかったダイヤの原石がプロで磨かれ、眩い光を放つ例が増えている。最も典型的な例がソフトバンクの千賀滉大や甲斐拓也だろう。今や侍ジャパンとして東京五輪に出場するほどの選手も、元々は育成出身だったのだ。
多くの育成出身の大物を輩出しているソフトバンクは、2017年も成功した年のひとつだ。
各球団の育成ドラフト指名選手のプロ入り後の成績を比較しよう。
ロッテは陸上部出身の和田康士朗を指名
ロッテは1巡目でBCリーグ富山の和田康士朗を指名。埼玉・小川高時代は陸上部に入り、クラブチームで野球をしていた変わり種だが、俊足はピカ一だった。2020年に支配下登録され、開幕戦に代走として一軍デビューすると、71試合に出場して23盗塁をマーク。今季は西武・源田壮亮と並んでリーグトップの24盗塁をマークしている。
2巡目は都城商高の左腕・森遼大朗を指名。まだ支配下登録はされていない。
中日は1巡目で四国アイランドリーグ徳島の右腕・大藏彰人を指名したが、昨オフに戦力外。2巡目で指名した龍谷大の右腕・石田健人マルクは、2020年に登録名を「マルク」に変更し、一軍で3試合に登板した。
オリックスは三田松聖高の捕手・稲富宏樹、神戸弘陵高の右腕・東晃平、御殿場西高の捕手・フェリペは一軍出場を果たせていない。飛龍高の内野手・比屋根彰人は昨オフ戦力外となった。
巨人は8人指名も7人は戦力外
巨人は2015年から3年連続で大量8人を指名した。しかし、今季もユニフォームを着ているのは羽黒高の右腕・田中優大のみ。盛岡大付高・比嘉賢伸、常磐高・山上信吾、東北福祉大・笠井駿、立正大・広畑塁、関西大・小山翔平、新野高・折下光輝、関根学園高・荒井颯太の7人は一度も一軍出場のないまま昨オフに戦力外となった。
楽天は3人を指名したが、1巡目の九州産業大の左腕・井手亮太郎、2巡目の光南高の内野手・松本京志郎、3巡目の天理大の外野手・中村和希とも一軍出場を果たすことなくユニフォームを脱いだ。
DeNAは箕島高の右腕・中川虎大を指名した。2年目にフレッシュオールスターに出場し、支配下登録、一軍デビューととんとん拍子に出世。今季も7試合に登板しており、まずはプロ初勝利を目指す。
西武は真颯館高・高木渉を1巡目指名。2019年に一軍デビューし、2020年には12試合に出場して2本塁打を放った。2巡目で指名した北海道教育大岩見沢校の捕手・齊藤誠人も今年8月に一軍初出場を果たしている。
阪神は上武大の左腕・石井将希を指名。昨年9月に支配下登録され、10月に一軍デビューを果たしている。
「韋駄天」周東佑京はスピード出世
ソフトバンクは1巡目が学法石川高の右腕・尾形崇斗。球威抜群のストレートで昨年一軍デビューを果たし、今季は8試合に登板している。
東農大北海道オホーツクの周東佑京は同期の中でも一番のスピード出世を果たした。自慢の俊足で2019年に25盗塁をマークすると、日本代表としてプレミア12にも出場。2020年は50盗塁でタイトルを獲得するなど、パ・リーグを代表するスピードスターに成長した。9月に右肩手術を受け、現在は戦線離脱している。
3巡目の沖縄尚学高・砂川リチャードは身長189センチ、体重119キロの恵まれた体格で人並外れたパワーが自慢。昨年、登録名を「リチャード」に変更してウエスタン・リーグで本塁打と打点の二冠王に輝くと、今年9月に一軍デビューを果たし、広いPayPayドームに豪快なアーチをかけている。
4巡目は早稲田大の左腕・大竹耕太郎。1年目から一軍のマウンドに立ち3勝を挙げると、2年目には5勝。昨季も2勝で、すでにプロ10勝を挙げている。
5巡目の立花学園高・日暮矢麻人は同期の育成選手で唯一、一軍出場のないまま昨オフに戦力外。6巡目のBCリーグ新潟の左腕・渡邉雄大は昨年一軍デビューを果たしている。
ソフトバンクのドラ1吉住晴斗は育成契約
広島は1巡目で菰野高の右腕・岡林飛翔を指名したが、2年で戦力外。2巡目の大曲工高の右腕・藤井黎來は昨年一軍デビューを果たした。3巡目の小笠高の右腕・佐々木健は一軍出場を果たせていない。
2017年は早稲田実・清宮幸太郎が注目を集め、履正社高・安田尚憲、九州学院高・村上宗隆、広陵高・中村奨成らがプロ入りした。ただ、ソフトバンクはドラフト1位の抽選で3度外し、鶴岡東高の右腕・吉住晴斗を指名したが、一軍のマウンドに立てないまま現在は育成契約となっている。
2位は専修大・高橋礼、3位は横浜高・増田珠、4位は国士舘大・椎野新、5位は秀岳館高・田浦文丸だった。通常ドラフトより育成ドラフト出身選手の方が結果を残している珍しい年だった。
※成績は9月25日現在
【関連記事】
・村上宗隆、清宮幸太郎がプロ入りした2017年ドラフトの答え合わせ
・山口鉄也が巨人入りした2005年育成ドラフトの答え合わせ
・巨人・八百板卓丸が楽天入りした2014年育成ドラフトの答え合わせ
・千賀滉大、甲斐拓也がプロ入りした2010年育成ドラフトの答え合わせ
・西野勇士、岡田幸文がプロ入りした2008年育成ドラフトの答え合わせ
・石川柊太、砂田毅樹がプロ入りした2013年育成ドラフトの答え合わせ
・松原聖弥が巨人入りした2016年育成ドラフトの答え合わせ、オリックスも当たり年