三振を減らし、PA/Kは年を追うごとに良化
前半戦のセ・リーグで戦前の予想を覆したのがヤクルトだろう。貯金8で3位につけている現状は、パ・リーグ首位を走るオリックスとともに、今季前半戦の波乱の立役者と言ってもいい。
そのヤクルトを引っ張るのが若き主砲・村上宗隆だ。開幕戦から全試合4番で固定され、ここまで巨人・岡本和真と並んでリーグトップの24本塁打、リーグ2位の56打点、打率.262。ポイントゲッターの役割を十分に果たしている。
九州学院高時代に通算52本塁打を放ったパワーは元々定評があったが、プロ入り後も着実に成長しているのがデータで浮き彫りになっている。
36本塁打を放ってブレイクした2019年はまだまだ粗さがあり、歴代ワースト4位の184三振を喫した。
しかし、昨季は115三振。コロナ渦で試合数が減ったため単純比較はできないが、三振をひとつ喫するまでにかかる打席数を示すPA/Kで比較しても、2019年の3.22に対し、2020年は4.48と良化している。
今季もここまでは4.57と昨季よりもさらに良化しているのだ。
AB/HR は12球団トップ、平均11打数に1発
その他の指標でも軒並み「進化」の跡がうかがえる。本塁打を打つまでにかかる打数を示すAB/HRは2019年の14.2から2020年は15.1とやや下げたが、今季はここまで11.1。平均すると、およそ11打数に1本は本塁打を打っており、これはライバル岡本和真をも上回る12球団トップの数字なのだ。
また、「長打率-打率」で算出され、純粋な長打力を示すIsoPは2019年の.250から、2020年の.278、今季の.307と年々上昇。12球団でIsoPが3割を超えるのは、トップのDeNA・オースティン(.313)と2位の村上だけだ。
さらに「出塁率-打率」で算出され、選球眼を示すIsoDも、2019年の.101から、2020年の.121、2021年の.130と年を追うごとに上昇。12球団3位の村上を上回るのは、日本ハムの西川遥輝(.139)と近藤健介(.134)という巧打者2人だけとなっている。
パワーヒッターでボール球に手を出さず、甘い球は確実にスタンドに運ぶ村上の高い能力が改めて分かる。
50本塁打は2013年のバレンティンが最後
さて、今後の期待はチームともども、村上がどこまで成績を伸ばすかだ。仮に現在のAB/HRをキープした場合、今季と同じ143試合制だった2019年の511打数に当てはめると、46本塁打を打つ計算になる。
2019年に比べると四球が多く、後半戦になると歩かされる場面も増えることが予想されるため、単純に計算通りにはいかないだろうが、それでも50発を期待したくなる。
セ・リーグで50本塁打をマークしたのは2013年のウラディミール・バレンティン(当時ヤクルト)が最後。日本人では2002年に50本塁打でタイトルを獲得した松井秀喜(当時巨人)までさかのぼらなければならない。パ・リーグでも2003年に51本塁打を放ったタフィ・ローズ(当時近鉄)が最後だ。
止まることを知らない村上の進化。セ界の大砲の今後が楽しみだ。
※成績は7月6日現在
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