仲間が口を揃える「良いやつ」
仲間は口を揃えて言う。「めっちゃ良いやつですよ」。チームメートほどの深い関係でない番記者の筆者でも実感を込めてうなずける。
そんな好感度ナンバーワンの男が眼前で腕を振っていれば助けてあげたくなるのも当然だろう。6月22日の中日戦で6勝目を手にしたジョー・ガンケルは開口一番、こう言った。
「良いピッチングをすることができました。ゴロを打たせることができて、守備のみんなもすごく良い守備をしてくれた。そのおかげかなと思います」
柔和な表情で謙虚に頭を下げていた。敵地のマウンドで今季自身最長の7回を投げて6安打無失点。特筆すべきは奪った21個のアウトの中身だ。実にゴロアウトが13個。カットボール、ツーシームを低めに集める丁寧な投球でバックを守る内野陣の足を小気味良く動かした。
リーグ2位の援護率の裏にあるもの
「攻守」が一体と考えるなら、テンポ良く守備の時間を短くした助っ人右腕の好リズムは打線にも好影響を与えた。
3回から3イニング連続で得点するなど終わってみれば6―0の快勝。チーム全体として苦手にしているバンテリンドームで前日まで2試合計4得点が嘘のようにスコアボードは忙しかった。ガンケルの快投が効果的な得点を呼び込んだと言える。
規定投球回に達していないものの、今季の援護点は5.73でチームトップ。リーグ全体を見渡しても巨人・戸郷翔征の6.28に次ぐ2位に相当する。
背番号49がマウンドにいる試合は打線がとにかくよく打つ。1964年のバッキー、2003年のムーアに並ぶ、球団の外国人投手では史上3人目となった開幕から無傷の6連勝の裏には、ゴロ凡打を量産するスタイルと打線との良好な関係が潜む。
人間性が回す勝利のサイクル
「チームメートがよく守ってくれた」「感謝してもしきれない」。今季の登板後、必ずと言っていいほどガンケルは守備陣への感謝を口にする。言葉は違っても、固い信頼関係が構築されている証と言えるだろう。
昨年から続くコロナ禍のシーズン。球場入りすると、一番に手洗い、消毒などを行い感染対策を徹底。米国時代はマイナー一筋でメジャーとは無縁のキャリアを歩んできた。29歳は、夢をつかむために日本にやってきた。そんな姿をナインも知っている。
中日戦後、6連勝の要因を問われると明解に答えた。「ゴロを打たせて、後ろで守ってくれている人たちがしっかり守ってくれて、攻撃陣は点を取ってくれている。チームのおかげかなと思います」。ここに「ガンケルの人間性」が加わって、勝利のサイクルは強く回っていく。
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