「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

バント名人の菊池涼介が犠打0の異変!今季セ・パ犠打数ランキング

2021 6/24 06:00広尾晃
広島東洋カープの菊池涼介ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

1試合平均でセは0.57犠打、パは0.63犠打

犠打は打撃の記録の一つ。バントによって走者を進塁させるプレーだ。成功した打者は「犠打」の数字が付き、打席数は増えるが打数は増えないから、打率は下がらない。

犠打がうまい打者は「つなぐ打者」「巧打者」と評されるが、犠打は純粋な個人記録とは言えない部分がある。犠打は、打者の意志ではなく「ベンチの指示」で行われることが多いからだ。いくら犠打の技術が高い打者がいても、監督が犠打を選択する意志がなければ、数字は増えないのだ。

よく知られているように、MLBはあまり犠打を使用しない。セイバーメトリクスでは、犠打は1アウトを相手に進呈する割には、得点に結びつく確率が低い。ビッグイニングを志向するMLBの野球では、1点2点を刻むための戦術である犠打は効率の良い作戦とは思われていないのだ。

2021年6月22日時点では、NPBは404試合で両チーム合わせて484個、1チーム1試合当たり0.60個の犠打が記録されているのに対し、MLBは1125試合で334個、1チーム1試合当たり0.15個に過ぎない。

また同じNPBでも、セは0.57個に対しパは0.63個と犠打の頻度がやや異なる。

さらに監督によっても犠打数は異なる。2016年から2020年までDeNAの采配を執ったアレックス・ラミレス監督は、犠打をあまり使わない監督で、監督をした5シーズンともリーグ最少。最終の2020年は120試合で51犠打、1試合当たり0.43個だった。

個人の犠打記録を見るときには、指揮官の方針なども頭に入れる必要があるのだ。

菊池の代役は羽月隆太郎、DeNA伊藤光もバント名人

今季、両リーグの犠打ランキングは大きく変わりつつある。2020年と2021年のセ・リーグのランキングが下の表だ。

セ・リーグ犠打数10傑


セ・リーグの場合、犠打が多いのは、下位を打つ打者、特に捕手と投手、さらに2番を打つことが多い「バントのスペシャリスト」と言われる打者だ。

広島の菊池涼介は現役2位の通算294犠打、2013年から昨年までの8シーズンで最多犠打7回と当代屈指の「バントの名手」だが、今季は56試合で1度もバントをしていない。開幕から打撃好調で、44試合で1番を打つなど持ち場が変わり佐々岡真司監督が犠打のサインを出さないのだ。今季、広島では菊池に代わって羽月隆太郎が「つなぐ野球」の役割を担っている。

昨年まで、犠打をあまり使わなかったDeNAだが、三浦大輔監督になった今季は捕手の伊藤光が25試合で8犠打を記録するなど増えている。伊藤は通算158犠打、オリックス時代からバントの名手として知られていたが、その技術が活きている。

菅野智之は通算67犠打

中日の京田陽太も犠打が多い打者だったが、今季は、守備、打撃ともに不振。代わって遊撃で出場することが多くなった三ツ俣大樹がすでに7犠打を記録している。

巨人は現時点でチーム犠打数が22とリーグ最低。これは犠打の多い打順である「2番」にゼラス・ウィーラーを入れて攻撃的な打線にしていることが大きいだろう。

セの投手にとっては、送りバントも重要な仕事だ。今季も阪神の秋山拓巳の6犠打を筆頭に多くの投手が並んでいる。巨人の菅野智之は通算67犠打と、バントの名手として知られている。今季も4犠打。巨人では戸郷が5犠打。ただ戸郷は3回バントを失敗している。4回企図してすべて成功の菅野の精度にはまだ及ばない。

今宮健太は歴代4位のバントの名手

パ・リーグ犠打数10傑


パでは投手は交流戦を除いて打席に立たない。犠打が多いのは、下位打線の捕手と2番を打つことが多い「バントのスペシャリスト」だ。

当代一の犠打の名手はソフトバンクの今宮健太だ。通算320犠打は歴代4位。最多犠打は4回。ここ3年故障もあって出場機会が減っていたが、今季はほぼフル出場。久々に最多犠打を獲得する勢いだ。

最近台頭してきたのが楽天の小深田大翔。1番を打つことが多い打者だが、犠打も多い。打順のめぐりによっては「つなぐ打者」にもなるタイプだ。

西武・源田壮亮は「失敗しない男」

今宮に次ぐバントの名手が西武の源田壮亮。ここ2年最多犠打。源田は「犠打の精度」が高い。ここ2年間、31回企図してすべて成功。失敗がないのが強みだ。

守備での貢献度が抜群のソフトバンクの甲斐拓也だが、犠打数も多い。ただ甲斐は昨年、5回犠打を失敗している。今季失敗は1回だけだが、甲斐の場合は精度アップが課題になるだろう。

NPBのある二軍コーチは「プロに入団する選手は、アマ時代は中心打者だった選手がほとんどだ。今宮健太でも高校時代は投打の中心選手で、バントなんかほとんどしなかった。だから、バントの技術はプロに入ってから身に着けるんだ。バントのセンスのある選手を見つけるのも我々の仕事だ」と言った。バントのスペシャリストはプロに入ってから誕生するのだ。

地味ではあるが、犠打はいろいろな評価ができる指標ではある。今季の最多犠打は誰が獲得するだろうか?

【関連記事】
セ・リーグ守備の名手は誰だ?見えにくい貢献度をデータで可視化
パ・リーグで守備面の貢献度が高い選手は?ポジション別「名手」を可視化
際立つ広角への打撃 広島・菊池涼介は二塁手としてローズ以来の首位打者なるか