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西武・高橋光成に求められるもの、初の開幕投手から真のエースへ

2021 3/24 06:00占部大輔
西武・高橋光成ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

飛躍に繋がった奪三振能力の向上と被打率改善

今季の開幕投手として順調に調整を続けている西武・高橋光成。プロ6年目の昨季は、自身初の規定投球回到達に加え、チームトップの8勝をマークし、ローテーションの柱として投手陣を牽引した。 飛躍の要因は、奪三振能力の向上と被打率の大幅な改善が関係していると考えられる。

西武・高橋光成の成績比較


2019年、6.55だったK/9(奪三振率)は、昨季7.48をマークした。同様に被打率も.300から.228に大幅に改善されている。

BB/9も3.42から3.29に向上しているが、成績が大きく伸びたという面では、打たれる割合が減り三振を奪えるようになった貢献度の方が大きいだろう。

さらなる飛躍に向け、真のエースを目指す背番号13に求められるものとは何か。

求められる“空振りが奪えるストレート”の習得

昨季、高橋の球種で最も投球割合(SPAIA参照=https://spaia.jp/baseball/npb/player/1400182)が高かったのはストレートの42.1%である。次いで、決め球のフォークが27.1%、カットボールが17.1%で、投球割合上位3球種だけで全体の86.3%を構成している。

西武・高橋光成の投球割合


3球種の被打率は、ストレート.259、フォーク.190、カットボール.215といずれも優秀な数字が並んでおり、高橋の投球を支えてきたことが見て取れる。

しかし、投球割合トップのストレートにはフォークやカットボールに比べて物足りなさがある。それは、空振り奪取率だ。 通常、10%を超えていれば優秀とされる空振り奪取率だが、フォークの14.3%、カットボールの12.1%に対して、ストレートは4.0%と著しく低いデータを記録している。

奪った三振の27.0%はストレートによって構成されているのにもかかわらず、ストレートで空振りはほとんど奪えていないのだ。これは大きなチャンスロスとも言えるだろう。

もし高橋がストレートで空振りを奪えるようになれば、奪三振能力はさらに向上することが想定され、2桁勝利にも手が届く可能性が高まる。そのためには、ストレートのスピン量を上げ、ホップ成分を高める必要があるだろう。

高橋自身もストレートの質の向上に取り組んでおり、75万円でトラッキングシステム・ラプソードを購入し、ストレートがジャイロ回転していないか等の研究を行っている。19日のオープン戦最終登板では、5回7奪三振と取り組みの成果が表れていた。

アウトコースの球質改善でさらなる成績向上を

高橋の投球にさらに要望があるとすれば、アウトコースへのボールの質の向上が挙げられる。

西武・高橋光成のゾーン別データ


昨季のゾーン別データ(SPAIA参照)では、左右の打者を通じて、アウトコースのベルトラインの被打率が一番高くなっている(左打者.344、右打者.370)。これは、アウトコース低めとアウトコース高めには力のあるボールを投げ切れているが、アウトコース真ん中には力のない抜け球が集まってしまっている可能性が考えられる。

アウトコースのストレートは、高橋の生命線のひとつでもあるので、ここはぜひクリアしておきたいところである。

開幕の26日までもうすぐ。昨季3勝1敗、防御率1.93と相性の良かったオリックス相手に、開幕勝利で弾みをつけられるか。今季こそ西武のエースの名を手中に収めるためにも、一皮むけた高橋光成の投球が期待される。

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