被打率.196もトップ、スライダーとフォークは圧巻
昨季、最多勝と最高勝率のタイトルを獲得し、セ・リーグMVPに輝いた巨人・菅野智之。規定投球回に到達した投手でトップの被打率.196をマークし、開幕から13連勝に防御率1.97と圧巻の数字が並んだ。
持ち球を1球種ずつ見ても、被打率が.270を超えるものはなく、特に被打率.169・空振り奪取率15.3%のスライダーと被打率.126・空振り奪取率19.5%のフォークは圧巻だ。
ゾーン別データ(SPAIA参照、https://spaia.jp/baseball/npb/player/1200041)でも、真ん中付近のボールを除き、被打率が.280を超えるコースはない。BB/9も1.64をマークし、球界最高峰の制球力は伊達ではない。
被打率トップの明暗を分けた左打者への内角攻め
被打率1位の菅野にわずかに及ばなかった2位の中日・大野雄大(被打率.203)と3位の阪神・西勇輝(被打率.213)。3投手の配球には、大きな違いがあった。
大野雄大ⒸSPAIA
西勇輝ⒸSPAIA
ヒートマップからわかるように大野と西は、高い制球力を活かし、左右の打者に対して徹底したアウトコース攻めを行っている。
菅野智之ⒸSPAIA
これに対して菅野は、左打者に対してインコースの投球割合が高くなっている。左打者のインコース低めの被打率が.056であることから、得意のスライダーとカットボールを打者の膝元に集め、打ち取ったと考えられる。
セ・リーグ打率10傑には7人の左打者が並ぶ。菅野が僅差で大野と西に勝利できたのは、左打者への配球がカギだったのではないだろうか。
完全無欠へ残された最後のピース
セ・リーグの打者を封じ込んだ菅野だが、すべての打者を圧倒できたわけではない。昨季首位打者のDeNA・佐野恵太には8打数4安打・打率.500と打ち込まれた。昨季盗塁王の阪神・近本光司にも16打数7安打・打率.436。昨季、初黒星を喫した広島の松山竜平にも10打数4安打・打率.400を許した。
各打者に共通して言えるのは、全員が左打者で内角高めに強いことだ。昨季の各打者のインハイの打率を見ても、例外なく3割を超えている。
順調にいけば今季中に海外FA権を取得する菅野はMLB再挑戦の可能性もあるが、MLBで結果を残すには左打者のインハイで勝負できるようになることが、ひとつのポイントとなりそうだ。
実際に、MLBの並みいる強打者と対峙した楽天・田中将大とマリナーズ・菊池雄星も、ローボールヒッターやアッパースイングが多いとされるMLBで、インハイを効果的に使って勝負することの重要性を語っている。
セ・リーグで最も安打を許さない男が、完全無欠に向け最後のピースを埋めることができるのか、今季の投球に期待がかかる。
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