「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

阪神・佐藤輝明はヤクルト村上宗隆級?球団に求められる「我慢」

2021 2/20 11:00楊枝秀基
阪神・佐藤輝明ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

広角に飛ばすスター候補・佐藤輝明

非常に分かりやすい。プロが見ても素人が見ても一目瞭然だ。遠くに飛ばす能力。単純ではあるが誰もができることではない。野球少年が憧れる飛距離という武器を携えた、スーパースター候補・佐藤輝明外野手(21)が猛虎の一員に加わった。

キャンプ初日から連日、スポーツ紙の紙面を賑わせたようにフリー打撃での印象度は抜群だった。2日目に見せた沖縄・かりゆしホテルズボールパーク宜野座のスコアボード上部に当てる、推定150メートル弾は衝撃だった。

引っ張りだけではなく、左中間から右翼方向へ広角にアーチを連発する。バットの芯で捉えれば確実にスタンドに運ぶ能力は、誰が見ても明らかだった。

4日からは早くも紅白戦が行われ、佐藤輝は1番・左翼で出場。実戦に入っても自分のスタイルを大きく崩されることなく、自然体の打撃を継続したのが印象的だった。

矢野監督は「普通よ」と持ち上げムードを牽制しつつ、しっかり佐藤輝の実力を評価していた。

「打者として一番強いのは常に相手に合わせることなく、自分のスイングをできるということ。俺なんかは相手に合わせて配球を読むとかせな、打たれへんかったからな。でも、これからどんどん相手投手のレベルが上がっていった時にどうするかとか、やることはまだまだあるから」と、佐藤輝の成長を期待しつつ気を引き締めた。

兼ね備える「鈍感力」

9日に宜野座で行われた日本ハムとの練習試合では2番・左翼で出場すると、プロ初本塁打を含む3安打、3打点の鮮烈の対外試合デビュー。さらに18日のDeNAとの練習試合では伊勢大夢からスコアボードを超える特大2ランを放って度肝を抜いた。連日、阪神を視察している中日・金子スコアラーは「本当にいいバッターだと思いますよ」とストレートに虎の新戦力を称賛していた。

井上ヘッドは佐藤輝を「言葉は妥当ではないかもしれないが天然」と表現する。いい意味で鈍感力がある反面、本当のプロの怖さに気付いてしまうと深刻なスランプに陥る可能性もあるというのだ。

ただ、誰しもが苦労して成長していくのがプロの世界。周囲の助けを借り自分の力で結果を出すうちに、ホンモノになっていくはずだ。

村上宗隆「日本を代表する打者になりたい」

球界を代表する同世代の左打ちスラッガーといえば、佐藤輝の1学年下にあたるヤクルト・村上宗隆内野手(21)の存在が際立つ。沖縄・浦添でのキャンプを取材したところ、自主トレ中の新型コロナウイルス感染の影響を全く感じさせない動きをみせていた。

5日には日本代表の稲葉篤紀監督(48)が視察に訪れ、「広角に本塁打を打てる」と、村上の魅力を改めて表現。村上自身も日本代表をモチベーションと捉えており「日本を代表する打者になりたいという目標を持ってこの世界に飛び込んできた。その思いをもっと意識して練習したい」と意気込んでいる。

セ・リーグ球団のあるスコアラーは「ほんの少し以前までなら追い込めば、内角のフォークか縦スラを投げとけば安全だったのにね。うちとしてはありがたくない成長だけど、日本代表という目線でいくと嬉しい成長だもんね」と急激な伸び率に目を見張る。

佐藤の心配はマスコミやファンの声

とかく、佐藤輝はソフトバンク・柳田悠岐(32)と比較されるが、1学年下ですでにヤクルトの4番を2年務めている村上と比べる方が妥当だろう。同一リーグ所属の良きライバルとして球界全体を牽引する立場となれば、日本球界の発展にもなるというものだ。

前出のスコアラーは「村上は強い下半身から鋭い回転力でスイングする。19年半ばから内角を捌けるようになった。佐藤はどちらかというとゆったりみえるスイングで、ヘッドが効いているので打球が思ったより伸びる印象。当然、現時点では村上がプロで経験があるので一歩リードだと思うが、どちらもスケールの大きい打者ですよ」と評価する。

阪神OBからの声が多いのは「阪神あるあるだけど、打てなくても佐藤輝をどれだけ我慢できるか。マスコミやファンの世論に左右されず育成方針を貫いてほしい。そのためには他の打者が佐藤が打てなくてもカバーしてやることだね」という内容。果たして佐藤輝がどういったストーリーを今後、描いていくのか。虎党にとっては楽しみな球春だ。

【関連記事】
佐藤輝明は阪神9人目の新人王なるか?岡田彰布以来の地元出身大砲候補
藤浪晋太郎より岩崎優と梅野隆太郎?侍ジャパン稲葉監督が阪神に熱視線
田中将大が指名された2006年高校生ドラフトの答え合わせ、外れ1位の成績は?