429四球など与四球が絡む指標は軒並みリーグワースト
昨季、2年連続Bクラスに沈んだ広島。2016年からリーグ3連覇した後、4位、5位と低迷している。黒田博樹、新井貴浩らが引退したとはいえ、あれほど強かったカープが転落した理由はそれだけではない。
昨季の広島の打撃成績はリーグ2位の打率.262、リーグ1位の出塁率.331、リーグ3位のOPS.732(同率1位が2チーム)とどれも優勝してもおかしくない成績だ。
それに対して投手成績はリーグ5位の防御率4.06、リーグ6位の与四球429個、リーグ5位のWHIP1.40と、シーズン中に何度も俎上に上がった「投壊」を象徴する数字が並んだ。その中でも、ひと際目立った数字が与四球数だった。
K/BB(奪三振と与四球の比率を表す指標)が2.13、BB/9(与四球率、9イニングあたりの与四球の数を表す指標)が3.61、BB%(対戦打者に占める与四球の割合)が9.3%と、広島は与四球が絡む指標において軒並みリーグワーストを記録している。
広島が3連覇したときのBB/9は、2016年が2.93、2017年が3.32、2018年が3.76と、2018年を除き与四球率が昨季よりも低い。このことからも、与四球が投壊の原因のひとつであることは明らかだ。
与四球が多ければ、それだけ失点につながる確率も高くなる。当然だが、どれだけチームが打っても、それ以上に点を取られてしまっては試合に勝つことはできない。
12球団一チーム打率の低いロッテ打線は12球団最多四球を選んで2位躍進
プロアマ問わず野球界では「先頭打者の四球は失点につながる」とよく言われる。先頭打者の四球から失点につながる確率は約40%という調査結果もある。
実際に、昨年10月6日にマツダスタジアムで行われた阪神戦では、終盤、四球からの失策が失点につながり、4-4の引き分けで4連勝を逃した。四球が失点につながることを口酸っぱく言ってきた佐々岡真司監督も苦言を呈していた。
10月14日に東京ドームで行われた巨人戦でも、先発・遠藤淳志が与えた4四球のうち、敬遠を除く3四球すべてが失点につながり、5.1回4失点で降板している。試合後、遠藤本人も自らの四球が失点につながったと悔やんでいた。
「四球は安打と同じ価値がある」と言われることも多い。ロッテ打線は昨季のチーム打率が12球団ワーストの.235だったが、逆に12球団最多の491四球を選んで2位躍進につなげた。与四球が嫌がられるのは、自らの投球でわざわざ失点してしまうリスクを背負うことにあると言えるだろう。
遠藤淳志はセ・リーグ最多の52与四球
広島が投手王国と言われた1980年代、「精密機械」北別府学がエースとして君臨した。北別府の球速は140km/h前後だったが、針の穴も通すコントロールと言われるほどの制球力で広島を日本一に導いている。
昨季、途中離脱したエース・大瀬良大地と野村祐輔、退団したジョンソンはいずれも制球力に定評のある投手だ。不本意なシーズンながらも、大瀬良の昨季BB/9は2.00、野村も2.82と制球力でチームを引っ張っていた。試合を作る上で、制球力抜群の投手が相次いで離脱したことは、チームに大きな影響を与えたのではないだろうか。
先発ローテーションを担った投手たちを見ていくと、森下暢仁はBB/9が2.36と新人王に恥じない制球力を見せたが、飛躍のシーズンとなった九里亜蓮はBB/9が3.04とまだまだ改善の余地がある。
多くの課題が見つかった昨季5勝8敗の床田寛樹はBB/9が2.72と四球こそ少ないものの、甘いコースにボールが集まり痛打を浴びる場面が目立った。
昨季5勝6敗の遠藤淳志はBB/9が4.37、セ・リーグ最多の52四球を与えており、制球力の改善はマストだ。両投手とも力強いボールが増えてきているので、制球力改善による伸びしろは大きいだろう。
そして、即戦力として期待がかかるドラフト1位・栗林良吏(トヨタ自動車)が、今季から戦力に加わる。エース・大瀬良と野村の復活、九里と森下のさらなる躍進、床田と遠藤の成長に栗林の活躍がプラスされれば、広島はセ・リーグ屈指の先発陣を擁する球団として、Aクラス浮上のきっかけを掴む可能性も十分。投手王国再建に向け、広島投手陣の奮起が楽しみだ。
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