圧倒的な成績で新人王に輝いた広島・森下暢仁
2020年のルーキーでは圧倒的な成績を残し、セ・リーグ新人王に輝いた広島・森下暢仁。1966年の堀内恒夫(巨人)以来となる、新人での防御率1点台&2桁勝利も達成した。リーグ3位の124奪三振も記録し、申し分ない結果だった。
沢村賞に輝き、最優秀防御率と最多奪三振の投手2冠の中日・大野雄大、最多勝と最高勝率の2冠の巨人・菅野智之ともタイトル争いを繰り広げ、1年目から球界を代表する投手に肩を並べた。
その森下が大野と菅野を超える指標がある。
チームの守備力や運が絡まない、純粋な投手の能力を表す「FIP」
2020年の投手3傑である中日・大野、巨人・菅野、広島・森下。NPBのタイトルに該当する成績では、やや大野や菅野が勝る印象を受ける。
しかし、セイバーメトリクスの「FIP」では、森下が大野と菅野を抑えてトップとなっている。
FIPとは、Fielding Independent Pitchingの略で、守備による影響から独立して、投手の責任である被本塁打・与四死球(故意四球を除く)・奪三振のみで投手を評価した指標である。
「守備による影響からの独立」とは、本塁打以外の安打やゴロ、フライ等の野手のプレーが関与するものを全て評価の対象外とすることである。チームの守備力や運が絡まない、純粋な投手の能力を表す指標として、近年では「真の防御率」と呼ばれることもあり、MLBではこの指標を重要視する傾向も見られる。
2020年の広島はリーグワースト2位の73失策を記録している。そのため、FIPで大野、菅野の両投手を上回ったということは、守備を除いた純粋な投手力だけで見たとき森下が一番打たれていない投手とも言える。
セイバーメトリクスは結果に基づいたデータから仮定して計算されるため、実際の試合と異なる場合もあるが、そのような側面も持ち合わせていることをご理解いただきたい。
森下のFIPは奪三振率の高さが好影響
FIPで森下が大野、菅野を上回ることができたのは、奪三振率の高さが影響していると考えられる。
奪三振率は、奪三振数×9÷投球回数で求められ、1試合9イニングで奪う三振数を示す。森下はこの数値でも大野、菅野を上回った。被本塁打数や与四死球数の関係ももちろんあるが、森下個人の能力で言えば、奪三振率の高さがFIPに大きく影響していると言えるだろう。
今オフ、MLBで活躍する元広島の前田健太(ツインズ)から伝授された「マエケンスライダー」の習得に励む森下。新球種でさらに奪三振率を伸ばし、2年連続2桁勝利、さらに先発の柱として低迷中のチームをAクラスに押し上げることができるか楽しみだ。
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