異例の無観客キャンプがスタート
2021年のプロ野球・春季キャンプがスタートした。今年は緊急事態宣言下のキャンプとなり、異例の無観客による静かなスタートとなった。
依然、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けるプロ野球界。その影響は報道陣にも及び、取材の自粛等の対応が取られ、例年に比べて選手たちの生の声を届ける機会は減りそうだ。
ロッテ、中日、巨人とNPBで19年間活躍した前田幸長氏(50)は、毎年のようにキャンプ地を訪れ、選手たちの生の声を全国の野球ファンに届けてきたが、コロナ禍の影響もあり、取材の自粛を決断せざるを得なかった。
「取材に行かないとキャンプがスタートしたという感覚もないし、正直なところキャンプの映像を見るだけではつまらない。選手たちもお客さんがいないとつまらないでしょうね」と語る前田氏。観客がいるかいないかでプロ野球選手のキャンプのモチベーションは大きく変わってくるという。
キャンプ前日に思う「次の日を迎えたくない」
春季キャンプといえば、その年のシーズンに向けた追い込みの場で、オープン戦前の大事なアピールの場であるというイメージを持っている野球ファンは多いのではないだろうか。
しかし、選手たちはそのイメージとは裏腹に、「できればキャンプはやりたくないもののひとつだ」と前田氏は話す。誤解があってはならないので補足しておくが「シーズンに向けて気合いを入れてキャンプに臨むが、可能ならば避けて通りたい」という思いも少なからずあるということだ。
「1年目の時は、何も分かっていないから『よし!やってやるぞ!』という気持ちしかない。そこで、開幕ローテーション決めてやるくらいの気持ちでキャンプインする。けど、2年目、3年目になるとしんどいのが分かっているから…」と前田氏。
同席していた元中日の後輩で、現在は中学ボーイズ野球チームの監督を務める都築克幸氏(37)は、「キャンプの前日、布団の中に入るときに『次の日が来てほしくない』って思いますよね」と同調した。
前田氏は、「そう!キャンプやばいもんね。やっぱりアピールしないといけないから張り切っちゃうんだけど、ただでさえ追い込んでるから身体がパンパンになって…。まぁ、結局誰よりも練習するんだけどね」とキャンプインする前とその後の心境の変化を語った。都築氏も「正直始まっちゃえばやるしかないですからね。始まるまでが大変ですけど」と話す。
その上で「やっぱりファンの目があるのとないのとじゃ違う」と両氏の意見は一致。「ファンが見ているともっと頑張らないとと思える。そういう意味でも、無観客のキャンプは選手たちにとっては大変だし、つまらないかもしれない」と無観客で行われるキャンプでの選手たちのモチベーションを前田氏は心配する。
都築氏も「ファンの目があるから頑張れるというのも、実際ありますからね」とコロナ禍のキャンプに臨む選手のたちの心境を慮った。シーズン同様、キャンプ中も選手たちはファンの力を感じているようだ。
シーズンを紐解くカギはキャンプの現場にある
キャンプ中の取材は、シーズンを占うのに重要だという前田氏は「実際に選手の感覚を聞いたり、生で投球や打撃を見ることは、映像を通して見るのとは違う。現場でしか得られないものがある」と語る。
「僕も1年目のキャンプ中、バレンタインデーにチョコを1500個もらって『チョコ』ってあだ名をつけられたんですけど、技術とは別にそういう情報も現場では見つかるんですよ。それって、その選手がチームでどんなポジションにいるか紐解くきっかけにもなりますよね。活躍するかどうかはそういうところから見えてくることもあります」と前田氏は現地で起こっていることの重要性を語った。
改めてキャンプの重要性を認識すると同時に、異例のキャンプが選手にどのような影響を及ぼすのか、キャンプ終了まで注目していきたい。
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