「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

楽天・田中将大の2桁は固い?メジャーから日本復帰した投手の1年目成績

2021 2/3 06:00SPAIA編集部
田中将大Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

楽天はソフトバンクに負けない豪華戦力に

田中将大が8年ぶりに楽天に復帰し、コロナ渦に沈んでいた日本球界が一気に盛り上がってきた。早くも楽天の優勝を期待する声も聞かれるが、その可能性は決して小さくないだろう。

実際、昨季の楽天打線はチーム打率がリーグ1位の.258、総得点も同じく1位の557点。主軸の浅村栄斗にロッテからFA移籍した鈴木大地、ルーキーの小深田大翔が加わり、打線は破壊力を増した。

心配の種はチーム防御率がリーグ5位の4.19だった投手陣だが、ドラフト1位で4球団競合した最速155キロ左腕・早川隆久(早稲田大)を引き当て、さらに日米通算177勝の田中が加わる。昨季最多勝に輝いた涌井秀章や通算132勝の岸孝之、通算85勝の則本昂大らが本来の力を発揮すれば、4年連続日本一のソフトバンクに勝るとも劣らない豪華戦力と言えるだろう。

メジャーから日本復帰1年目に2桁勝利は4人だけ

これからキャンプやオープン戦を通じて田中の状態が明らかになっていくだろうが、24連勝したのは8年前の話。同じような神がかった活躍はそう簡単にできるはずもない。

メジャーリーグを経験して日本球界に復帰した投手のNPB1年目の成績が下の表だ。

メジャーから日本復帰した投手のNPB1年目成績


日本でプロ経験のないまま渡米したマック鈴木や、太平洋を2往復した木田優夫、岡島秀樹らを含め、これまでのべ33人いるが、NPB復帰1年目に2桁勝利を挙げたのは4人しかいない。

2003年にレンジャーズから阪神に移籍した伊良部秀輝が13勝、2006年にメッツからヤクルト入りした石井一久(元楽天GM兼監督)が11勝、2015年にヤンキースから広島に復帰した黒田博樹が11勝、2016年にカブスからソフトバンクに復帰した和田毅が15勝を挙げている。

日本で輝かしい実績を挙げてメジャー挑戦したはずの投手が、日本に帰ってきた時には「別人」になっていたという例は少なくない。あの松坂大輔(現西武)でさえ、帰国して1年目は登板すらできなかったのだ。

メジャー特有の滑るボール、硬いマウンド、中4日の先発ローテーションなど要因は様々あるが、日本球界に復帰する投手はどこか痛めている場合も多い。またメジャー流の指導を受けて自分のフォームを見失う場合や勤続疲労もあるだろう。もちろん進化している部分も含めて、渡米前とは良くも悪くも違う投手であると認識する必要がある。

黒田博樹と相通じる古巣復帰

とはいえ田中の場合は、昨季こそ開幕前のキャンプでチームメートの打球が頭部を直撃した影響もあり、10試合の登板で3勝3敗に終わったが、2019年までヤンキースで6年連続2桁勝利を挙げた実績がある。バリバリのメジャーリーガーのまま帰国したという点では、ドジャースとヤンキースで5年連続2桁勝利をマークしながら古巣・広島に復帰した黒田博樹と相通じる。

では、田中の日米それぞれの通算成績を比較してみよう。

田中将大の日米通算成績比較


田中は日米ともに7年ずつプレーしており、楽天で175試合、ヤンキースで174試合とほぼ同じ登板数。投球回数は、投手の分業制が日本以上に確立しているアメリカの方が少ないが、9イニングで奪う三振数を示すK/9(奪三振率)は楽天時代が8.47、ヤンキース時代が8.46とほぼ同じ。1イニングに何人の走者を許すかを示すWHIPも楽天時代が1.11、ヤンキース時代が1.13とほとんど変わらない。

楽天時代の田中は力強いストレートで押す、力感あふれるイメージが強かったが、メジャーではスプリットを巧みに使って抑えていた印象がある。相手に合わせて投球スタイルを変えながらも、ほとんど同じパフォーマンスを出せているのは高い適応力の証明と言えるだろう。

唯一、1試合で打たれる本塁打数を示すHR/9(被本塁打率)は楽天時代の0.452に比べ、ヤンキース時代は1.358と高くなっており、それに伴って防御率も楽天時代の2.30からヤンキース時代は3.74に悪化している。ただ、パワーで勝る本場の強打者に芯で捉えられるとスタンドまで運ばれる確率が日本より高いため、そこまで悲観してなくてもいいのではないだろうか。

2013年までソフトバンク戦16勝3敗

8年ぶりの日本野球に慣れる、感覚を取り戻す必要はあるだろうが、田中の適応力なら本来の実力を発揮するのにそれほど時間はかからないと思われる。

しかも指揮官がメジャー通算39勝の石井一久監督ということも、田中にとっては心強いに違いない。全く知らない球団でもなく、思い入れのある楽天で力をフルに発揮できる環境は整っていると言えるだろう。

入団会見では「2013年で印象が止まっているファンの方も多いと思うので、求められるハードルは高いが、そこをまた飛び越えてやろうというのは自分の中でのやりがいのひとつ」と話している。ソフトバンクが2年連続スイープで4連覇中と強さを見せつけているが、その最強王者に対し、2013年までとはいえ16勝3敗という対戦成績を残しているのだ。いやが上にも打倒ソフトバンクの期待は高まる。

2013年には東日本大震災から復興途上の東北を勇気づけた田中。震災から10年経った2021年、東北だけでなく新型コロナに苦しむ日本中に元気を与える快投が期待される。

【関連記事】
田中将大が8年ぶり楽天復帰、背番号は「18」 打倒ソフトバンクへ救世主だ
楽天の黄金ルーキー早川隆久は10人目の偉業なるか?希少価値高い先発左腕
楽天の2021「年男」 オコエ瑠偉と津留崎大成、奮起と飛躍を期待される2選手に注目