トップの完投割合を記録
巨人・菅野智之らとの争いを制し、投手最高の栄誉である沢村賞に輝いた大野雄大。同賞の選考委員の一人である村田兆治氏は、当初は菅野を推薦していたが最終的に「大野の完投数を評価した」と、12球団最多となる10完投が受賞の一因となった。
最近20年間のリーグ投手と比較してもトップの完投割合を記録した大野。今回はその要因を探りたい。
巨人・菅野智之らとの争いを制し、投手最高の栄誉である沢村賞に輝いた大野雄大。同賞の選考委員の一人である村田兆治氏は、当初は菅野を推薦していたが最終的に「大野の完投数を評価した」と、12球団最多となる10完投が受賞の一因となった。
最近20年間のリーグ投手と比較してもトップの完投割合を記録した大野。今回はその要因を探りたい。
長いイニングを投げる条件のひとつは、球数を減らすことだ。今季の大野は1イニングあたりの投球数がキャリア最少の14.8球だった。そして、投球数を減らすための究極の方法が、打者の出塁を許さないことだろう。
今季のWHIPは0.87と、リーグの規定投球回到達者で最も優れていた大野。1イニングにかかる負担が少ないのだから、多くの投球回を投げきれたこともうなずける。
好成績の要因を球種からも探りたい。昨季と比べて最も明らかな変化がフォークの割合で、前年から大幅増となっている。力強いストレートや縦に落ちるツーシームも欠かせない武器ではあるが、割合を増やしたフォークが好成績のカギを握っていそうだ。
まず、一般的にフォークは大半が低めのボールゾーンに投じられる。2020年の大野も、フォークのボールゾーン投球割合は54%と、過半数がボール球だ。その一方で2019年までの同割合は例年70%前後となっており、今季は従来よりもストライクゾーンに集めている。
その結果、フォークのストライク率は持ち球でトップの73.1%を記録。2020年に自己ベストを大きく更新する与四球率1.39をマークした一因には、ストライクを稼げるフォークの存在があった。
投球をストライクゾーンに集めた場合、ボールゾーンと比較してヒットを許すリスクが高くなる。しかし、大野のフォークは被打率.161と、リーグの投手が操る各球種の中でも屈指の安定感を誇った。2020年はフォークの割合を増やし、制球面や被打率の向上につなげた大野。好成績にフォークがもたらした恩恵は大きいといえる。
FA権を取得し去就が注目された今オフ、大野は他の目玉選手に先駆けてチーム残留を表明した。その際、中日への熱い思いを語った左腕。強いドラゴンズを取り戻すため、2021年以降も竜のエースとしてナインを引っ張っていく。
※文章、表中の数字はすべて2020年シーズン終了時点
企画・監修:データスタジアム
執筆者:中村 碧聖