不振のチームで孤軍奮闘
69試合を消化し22勝(42敗)、勝率.344。首位のソフトバンクと16ゲーム差の最下位に沈むオリックス。そんな中、打率.376(リーグ1位)、47打点(同7位)、OPS1.055(同2位)と打撃の各部門で堂々たる成績を残し、孤軍奮闘の活躍を見せているのが吉田正尚だ。
昨季は打率.322(同2位)、自己最多となる29本塁打を達成。卓越された打撃の技術とパワーを見せつけたが、今季はその打撃がますます進化。9月6日の楽天戦ではオリックス時代のイチロー(23試合連続安打)を超える24試合連続安打をマーク。効果的な2本の本塁打を放ち、5打数3安打5打点の活躍でチームを勝利に導いた。
シーズン最高打率に迫る勢い
吉田の打撃で特筆すべき点は、ここまでわずか16個という三振の少なさと選球眼の良さだ。三振をしにくい打者であることを示す指標PA/K(打席数÷三振数)は、18.38とダントツのリーグ1位(2位は楽天・鈴木大地の9.55)。また、選球眼の優れた打者であることを示すBB/K(四球数÷三振数)も2.94と同じく1位。
豪快なフルスイングのイメージの強い吉田だが、しぶとさがあり、いかに打ち取ることが困難であるかがわかる。
他の指標でもほとんどがリーグ屈指の数値となっている。例えば、パワーとスピードを兼ね備えた打者であることを表すPSは6.88(同3位)。長打力や出塁能力に加え、犠飛や犠打、盗塁といったOPSにはない要素も加味されているため、より精度の高い得点貢献能力がわかるRCは65.10(同2位)と、軒並み高い数値をマーク。非の打ち所がないとはこのことだ。
月間打率も6月こそ.270だったものの、7月は.358、8月は.430、9月は.417と右肩上がり。対右投手の打率は.393、対左投手の打率は.328と左右も苦にしておらず、もはや向かう所に敵なしといった状況。元阪神のランディ・バースが1986年に達成したシーズン最高打率.389にも迫る勢いだ。
苦手なコースと球種が皆無
吉田の凄みはゾーン別データを見ても明白。ど真ん中の打率が.526であるほか、内角高めは.450、外角高めは.405、外角低めは.368、最も低いのが外角中程の.294と、どのコースも満遍なく高い打率をマークしている。好打者でも苦手なコースがどこかにあるものだが、全てのコースに対応できる打者は珍しい。
球種別打率を見ても、その対応力に驚かされる。対直球の打率は.343とハイアベレージを残しているほか、対スライダーは.351、対カーブは.364。動くボールにも強く、対カットボールは.478、対ツーシームは.313と軒並み高打率をマーク。また、昨季は.185とフォークを苦手としていたが、今季は.348と克服。どの球種にも対応しており、ますます手がつけられなくなっている。
フルスイングをしながらも、点差やカウント、走者などの状況によってコンパクトなスイングに柔軟に切り替えていることも高打率を残せる大きな要因だろうし、どんな状況でも冷静さをキープして打席に入れていることも大きい。また、前後を打つ打者が不振で吉田が徹底的にマークされる中でこれだけの数字を残すことにも価値がある。
プロ入り1年目の2016年は63試合出場、2年目も64試合と故障がちだった。だが、2018年は143試合に出場し、打率.321、26本塁打、86打点と堂々たる成績を残している。以来、期待に違わぬ活躍を見せ続ける吉田。今後もどのような進化を見せてくれるのか目がはなせない。
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