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それでも阪神・藤浪晋太郎の復活を信じたいファン心理

阪神・藤浪晋太郎ⒸSPAIA
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新型コロナ感染に練習遅刻で二軍降格

もつれた糸がほどけることはないのだろうか。こんなはずじゃない。これくらいで終わらない。そう信じるファンも今では少数派かも知れない。

藤浪晋太郎。地元・大阪で生まれ、大阪桐蔭のエースとして春夏連覇を果たし、ドラフト1位で阪神に入団するとルーキーイヤーから3年連続2桁勝利。真っすぐにスターへの階段を駆け上がる姿は、あまりにも眩しく、誰もが大いなる未来を予感した。

しかし、4年目以降、上っていたはずの階段を下り始める。技術的な問題なのか、精神面が原因なのか、以前では考えられないような制球難に苦しむ姿が見られるようになった。

2019年はプロ入りして初めて白星なし。雪辱を期したはずの2020年に入っても、3月に食事会に参加して新型コロナウイルスに感染、5月には練習に遅刻して二軍落ち、6月3日の二軍練習試合では右胸の筋挫傷で途中降板…。かつてないほど、トラブルやアクシデントが続いている。

高3春のセンバツ1回戦で対戦し、本塁打を許した花巻東の大谷翔平は、プロ入り後も同じような上昇曲線を描いていた。しかし、4年目以降は徐々に水をあけられ、メジャーでも成功を収めている二刀流は、もはやライバルとは呼べない。

藤浪は過去の栄光は忘れて、新人のつもりで一から再スタートを切る必要がある。トレードの可能性に言及する報道もあるが、現状のままではトレードどころか、選手生命にかかわるピンチが訪れても不思議ではない。

小林繁に川尻哲郎…汗と涙が染み込んだ阪神の背番号19

藤浪が背負う阪神の背番号19には、屈辱と栄光の歴史がある。1978年、巨人が野球協約の盲点をついて「怪物」江川卓と電撃契約。しかし、契約は無効と判断された巨人はドラフトをボイコットし、ドラフト会議では1位指名した阪神が江川の交渉権を獲得した。すったもんだのあげく、コミッショナーの強い要望により、江川は一度阪神に入団し、トレードで巨人に移籍することになった。

そのトレードの交換相手となったのが小林繁だった。1979年、「プロ野球の正月」と言われる春季キャンプイン前日の通告。プライドを引き裂かれ、気持ちを切り替える間もないまま、小林はタテジマのユニフォームに袖を通した。

シーズンでは古巣に対して鬼気迫る投球を見せ、なんと巨人戦8連勝をマーク。自己最多の22勝を挙げて最多勝、沢村賞に輝いた。言葉ではなく、結果で示した小林の意地だった。

川尻哲郎も19を背負い、一時代を築いた投手だった。日産自動車から阪神に入団し、1年目の1995年に8勝、2年目には13勝をマーク。「暗黒時代」と呼ばれた阪神の低迷期を支えた。

しかし、1997年オフにプロ野球脱税事件への関与が発覚。1998年は開幕から3週間の出場停止処分を受けた。

処分が明けてグラウンドに復帰した川尻は頬がこけ、鋭い眼光が以前とは別人のようだった。5月26日の中日戦でノーヒットノーランを達成するなど、シーズン10勝を挙げ、防御率2.84の好成績をマーク。オフの日米野球でも好投した。

小林と川尻は状況は違うとはいえ、2人とも屈辱や悔恨、世間からの非難に耐え、歯を食いしばって努力を続けて結果を出したことには変わりない。背番号19には偉大な先達の汗と涙が染み込んでいるのだ。

諦め切れない高い能力とスター性

なぜ世間や球団が藤浪を諦め切れないのか。数年前ならまだまだ商品価値は高く、交換トレードに出せば相応の選手を獲得できただろう。しかし、高卒1年目から10勝を挙げた能力、恵まれた体格、地元出身のスター性など、このまま埋もれるのはあまりにも惜しい選手だからこそ、復活してほしいのだ。藤浪にはそれだけの魅力がある。

プロの世界は結果が全てだが、藤浪に対しては、どちらかというと寛容な意見が多い。大言壮語な選手がトラブルを起こせば、それ見たことかと世間の反応は冷ややかだろうが、真面目で謙虚な人柄もあって、応援したくなるのも一因だろう。

ただ、世間も球団もしびれを切らせかけているのは確か。転げ落ちた階段を、腐ることなく一歩ずつ上っていけるか。まだ26歳と若いが、藤浪に残された時間は決して多くない。

今シーズンに2桁勝利など望まない。まずは二軍で結果を出し続け、信頼を回復するしかないだろう。19番を背負う右腕として、小林や川尻が示したように男の意地を見せてほしい。再び甲子園のお立ち台に立ち、コロナ渦でストレスの鬱積した日本人に夢と感動を与えられるか。正念場のシーズンがいよいよ始まる。

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