オープン戦でのアピールはならず
ロッテの安田尚憲は、昨季2軍で4番として122試合に出場。打率は.258ながらも19本塁打、82打点をマークし、本塁打王と打点王を獲得した。打線の中心として堂々たる成績を残し、確かな手応えつかんだ。
また、昨オフにはプエルトリコで行われたウインターリーグに参加し、15試合に出場。打率.349をマークするなど外国人投手の動くボールにも柔軟な対応を見せていた。
期待されて迎えた今季のオープン戦だったが、9試合に出場して22打数3安打、打率.136、本塁打0と精彩を欠いた。2月19日に行われたDeNAとの練習試合では、第1打席で高めの直球をバックスクリーンまで運ぶ豪快な一発を見せたが、その後に3打席連続で空振り三振。脆さを露呈した。タイミングさえ合えばスタンドまで運ぶ能力は十分にあるが、まだまだきっかけはつかめていない様子だった。
井口資仁監督は、「今は1軍の投手の直球に対応しきれていない部分がある」と課題を挙げるものの、「ロッテの4番ではなく、球界を代表する打者を目指してほしい」と期待は大きい。2軍の今岡真訪監督も、「球界を代表するバッターに育てることは使命なんです」と井口監督とビジョンを共有。心技体が中途半端な状態では1軍に帯同させないという方針であることは明白だ。
自問自答しているような段階
首脳陣もファンも安田に期待しているのは本塁打。4回打席に立って3三振しても、ここぞの場面で一発を打てる打者だ。ロッテに生え抜きのスラッガーは久しく出ておらず、スラッガーとしての覚醒を誰もが夢見ている。
昨季、7月30日にZOZOマリンで行われたイースタン・リーグの巨人戦で、ライトスタンドの屋根の上にある照明を直撃する特大弾を放ったが、それほどの凄まじい当たりは、2004年にイ・スンヨプ(当時ロッテ)が放った来日第1号の場外弾以来だった。
体も年々大きくなり当たれば飛ぶわけだが、打撃フォームを変えるなど試行錯誤は続いている。照明直撃弾を放った時はグリップの位置は低くバットを立て、右足のかかとを上げながらタイミングをとっていたが、今季はグリップの位置を少々上げてバットのヘッドは軽く寝かせ気味。右足を地面につけたオープンスタンスだった。
オープンスタンスの長所のひとつがボールを両目で見やすくなること。しっかりとボールを見てから自分のポイントで打とうとする意識といい、スイングの始動をスムーズにするためのバットの角度といい、直球に差し込まれないための対応だろう。
今は投手と勝負する以前に、自問自答しているような段階なのかもしれない。
迷いを吹っ切ることができるか
昨季、同学年のヤクルトの村上宗隆は打率.231ながらも36本塁打、96打点をマークしてブレイクした。注目すべきはリーグダントツの184個の三振を喫したことだ。1軍で使い続けるというヤクルト首脳陣の考えで143試合に出場し593打席に立ったわけだが、村上自身に「三振か本塁打でいい」と腹をくくっている部分もあったはずだ。
打者としてタイプは違うが、かつてロッテに在籍した今江敏晃は1軍に出場し始めた頃に全くと言っていいほど打てなかった。だが、当時のボビー・バレンタイン監督の「お前はずっと1軍にいるんだ。2軍に行く心配はしなくていい」という言葉で吹っ切れ、2005年のブレイクにつながった。つまり、安田が今後飛躍していくためには精神的な部分も大きいように思う。
三振(結果)を恐れずに割り切ること。初球から思い切り振っていく安田は相手にとっても嫌なはずだ。昨季は2軍で最多となる73個の四球を選んだが(ルーキーイヤーは30個)、そのことには自信を持っていい。四球の多さは強打者の証だ。
打撃フォームやタイミングの取り方など突き詰めて考えていけば色々と課題はあるだろうが、まずは自分自身に打ち勝つこと、迷いを吹っ切ることが鍵を握っている。今季、オープン戦で垣間見られた打ちにいく際の始動の遅さも、精神面の影響が大きいのではないだろうか。
オープン戦では不振に陥ったが、開幕が延期となっていることを本人がプラスにとらえることができるかどうか。安田の覚醒なくしてロッテの未来はない。それぐらいの期待を持って、ファンはその成長を見つめている。
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