1シーズン最多は新垣渚の25暴投
プロ野球の投手が暴投するシーンはそう多くない。特に最近はカットボールやツーシームのような小さく曲げてバットの芯を外す変化球が増えたため、かつてのような荒れ球の投手は減っている印象がある。そこでシーズンごとのNPB最多暴投を調べてみた。
1シーズンで最も暴投が多かったのは、2007年のソフトバンク・新垣渚で、なんと25暴投。この年はNPBワーストタイの1試合4暴投を記録するなど、コントロールに苦しみ、7勝10敗に終わった。ちなみに2008年には自らのワースト記録を更新する1試合5暴投を記録し、この年の計15暴投も歴代5位タイとなっている。
「松坂世代」の新垣は沖縄水産高時代に甲子園で最速151キロをマークして注目を集め、九州共立大を経て2002年ドラフトの自由獲得枠でダイエーに入団。ルーキーイヤーから8勝を挙げ、2006年には13勝をマークした。
しかし、2008年以降は低迷。ヤクルトで現役を負えるまで通算64勝64敗という成績が残っている。
2位は1998年のヤクルト・石井一久(現楽天GM)。150キロを超えるストレートと切れ味抜群のスライダーを武器にメジャーでも活躍し、日米通算182勝を挙げた左腕。1998年は20暴投を記録したものの、自己最多の14勝、241奪三振をマークする活躍だった。
3位は1990年のロッテ・村田兆治と1996年の近鉄・酒井弘樹の17暴投。村田は「マサカリ投法」と呼ばれたダイナミックなフォークから投げるフォークを武器に通算215勝を挙げた右腕。1990年は現役ラストイヤーで10勝を挙げた。
ドラフト1位で国学院大から近鉄に入団した酒井は、17暴投を記録した1996年は8勝15敗だった。
5位は新垣のほか、1991年の近鉄・野茂英雄、2008年の巨人・越智大祐が15暴投で並んでいる。
通算では148暴投の村田兆治がダントツ1位
通算記録で見ると、1位は148暴投でダントツの村田兆治。40歳まで鋭く落ちるフォークボールを投げ続けた証明で、勲章と言ってもいいだろう。
115暴投で2位の石井一久、101暴投で3位の新垣渚に続くのが、84暴投の前田幸長。福岡第一高の左腕エースとして夏の甲子園で準優勝し、ドラフト1位でロッテ入団。中日、巨人と渡り歩き、プロ通算78勝110敗の成績を残している。
5位は81暴投の工藤公康(現ソフトバンク監督)。切れのいいストレートと落差のあるカーブを武器に47歳まで現役を続け、通算224勝を挙げた名左腕だ。歴代5位とはいえ、1シーズンでは1989年の9暴投が最多で、決してコントロールが悪かった訳ではない。
現役最多は77暴投の涌井秀章
現役で最多は77暴投の楽天・涌井秀章。通算133勝をマークしている右腕だが、2008年には自身1シーズン最多の11暴投を記録し、10勝11敗で防御率3.90と不振のシーズンだった。
2位は70暴投の阪神・中田賢一。昨季まで中日とソフトバンクでちょうど100勝を積み上げてきたが、14勝を挙げた2007年には13暴投を記録している。
3位は65暴投のヤクルト・石川雅規。プロ通算171勝を挙げている40歳の左腕は、1シーズンでは2010年の9暴投が最多となっている。
4位は同じくヤクルトの五十嵐亮太。剛速球とフォークを武器に日米を渡り歩いたベテランも、2020年5月で41歳。1シーズンでは2002年の8暴投が最多で、長く現役を続けているからこそのランキング入りと言えそうだ。
5位は巨人・大竹寛の58暴投。広島、巨人で通算101勝を挙げている右腕は、2007年の11暴投が自己最多となっている。
現役でシーズン13暴投以上は0人
シーズン最多暴投記録は25暴投の新垣以下、13暴投で13位タイが13人おり、計25人がシーズン13暴投以上を記録しているが、現役は一人もいない。ここ10年を年度別に見ても、外国人のメンドーサを除けば、12暴投の楽天・則本昂大と西武・高橋光成が最多。やはり荒れ球で「行き先はボールに聞いてくれ」という投手は減っていると見てよさそうだ。
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