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ロッテ・藤原恭大 打撃フォーム改造を機に急激な成長曲線を描け

2020 4/28 06:00浜田哲男
千葉ロッテマリーンズの藤原恭大ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

打撃フォーム改造に着手

昨季は、高卒ルーキーながら開幕スタメンの座を手にしたロッテの藤原恭大。開幕戦では快足を活かした内野安打を放ち、プロ入り初安打をマーク。以降も活躍が期待されたがプロの投手の変化球の前に歯が立たず、1軍での成績は6試合19打数2安打、打率.105で終わった。2軍では82試合に出場し、打率.227、4本塁打、21打点、16盗塁。走攻守で光るプレーも時折見せたが、シーズンを通じてプロのレベルの高さを痛感した1年だった。

変化球に苦しんだこともあり、今季から確率を上げるための打撃フォーム改造に着手。上から振り下ろしてボールを点でとらえるダウンスイングから、地面と平行にバットを振りボールを線でとらえるレベルスイングに変えた。肩や腰が上下せずスイングが安定することで無駄な動きが少なくなり、ミートポイントの幅が広がるためバットに当たる確率が向上する。

昨季にしても今季の対外試合でも、追い込まれてから粘れないケースが散見された。レベルスイングへの改造は、粘れる打撃を身につけるためにも効果的な取り組みだろう。バットの芯でとらえる確率を上げることで強くインパクトでき、鋭いライナー性の打球を飛ばせるようにもなる。

強風が多く本塁打が出にくい本拠地ZOZOマリンでは、高く打ち上げるよりも外野の間を切り裂くようなライナー性の打球を打てる方が好ましく、藤原の脚力を活かすこともできる。

井口資仁監督は、かねてから藤原を「1番打者として育てたい」と公言しており、2軍の今岡真訪監督ともそのビジョンを共有している。上位打線、特に1番打者に求められるのは出塁率であり機動力。レベルスイングへの移行が、近い将来の1番・藤原誕生へ向けたターニングポイントとなるかもしれない。

早い段階で化ける可能性も

打撃フォーム改造の効果は結果にも表れ始めていた。キャンプ地の沖縄・石垣島で2月8日に行われた楽天モンキーズ戦(台湾プロ野球)では、1番・中堅で先発出場すると、6打数4安打3打点と大当たり。昨季よりもタイミングで立ち遅れることがなく鋭い打球を飛ばしていた。

特筆すべきは9回に放った一撃。内角寄りのボールを豪快に振り抜くと、打球は右翼ネット上段に直撃する特大弾となった。トップの位置を下げたレベルスイングの感触が良いのか自分の間でタイミングがとれているため、振りにいく際も迷いがない。この時は打球の飛距離に注目が集まったが、タイミングの取り方とボールのとらえ方に感触をつかみ始めていることが大きい。

良い打者は、頭に描くイメージとして、「点」でボールをとらえようとするのではなく、「線」でボールをとらえようとする。落合博満にしてもイチローにしても、「ボールは線でとらえるイメージ」と口を揃える。

一方、打てない打者は「点」にバットをぶつけにいこうとする。ボールを長く見ることができないため自分のタイミングでスイングができず、余裕をもって際どいボールを見逃すこともできない。打撃フォーム改造をきっかけに、藤原が「線」でボールをとらえるイメージを持つことができれば、早い段階で化ける可能性は十分にあるだろう。

昨季の打者ヒートマップを見ると、藤原はストライクゾーンから大きく外れた低めのボールや高めのボールで空振りをとられる傾向があった。とにかくプロの球威に振りまけないようにとがむしゃらに強いスイングに傾倒していた感があったが、先ずは際どいコースのボールを見極めることが大切だ。

今季はある意味でチャンス

今季は開幕時期が不透明でレギュラーシーズンの試合数減少が濃厚だ。そのほかにも、有事に備え1軍公式戦に出場できる選手の登録人数が拡大される可能性も示唆されており、異例とも言えるシーズンになる雲行きだ。しかし、レギュラーを目指すプレーヤーにとって、こういった状況はチャンスになる場合もある。

外野は、昨季リーグ3位の打率.315をマークし、ベストナインとゴールデングラブ賞を獲得した荻野貴司を筆頭に、残留したレオネス・マーティン、新加入の福田秀平、ベテランの角中勝也や清田育宏、ルーキーの髙部瑛斗らライバルがひしめき競争が激しい。

だが、出場選手の登録人数が拡大されれば、代走や守備固めとしても戦力になる藤原の出場機会が増えるかもしれない。「2軍でフル出場させ、経験を積ませる」という考えの一方、若くしてレギュラーをつかむプレーヤーは少ないチャンスをものにして頭角を現す。

対外試合では特大弾を放ち、昨季は見られなかった柔らかい打撃も見せ、期待感を抱かせてくれた藤原。昨季の課題を経て取り組み始めた打撃フォームが、いかにフィットし、どれほどの成果を生み出すのか要注目だ。

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