日本人野手の前に現れたライバル
今シーズンからメジャーリーグに挑戦する二人の日本人野手、筒香嘉智と秋山翔吾の前に強力なライバルが現れた。1月9日、筒香を獲得したレイズはカージナルスとのトレードでホセ・マルティネスを獲得。また、秋山が加わったレッズは同月27日、FAのニコラス・カステヤノスと4年6400万ドル(約69億8000万円)で合意した。
マルティネスと筒香、カステヤノスと秋山はそれぞれポジションが重なる。マルティネスはカージナルス時代、主に外野と一塁を守り、交流戦時にはDHで出場していた。カステヤノスはここ数年、主にライトとして出場。レッズの外野手には、ほかにもニック・センゼルやアリスティデス・アキーノ、ジェシー・ウィンカーといった有望株が在籍しており、熾烈なレギュラー争いが予想される。そこで、新たな挑戦を始める日本人野手が切磋琢磨することになるライバルの実力を紹介しよう。
マルティネス、ポテンシャルはMLBでも一流
筒香のライバルとなるだろうホセ・マルティネスのポテンシャルは高い。メジャーデビューを果たしたのは2016年、マルティネスが27歳になる年だった。デビューイヤーは12試合と機会に恵まれなかったが、2017年には106試合に出場。打率.309、長打率.518とブレークした。2018年にはレギュラーに定着し、打率.305、出塁率.364、長打率.457という好成績を収めている。
マルティネスの打撃のポテンシャルを知る上でxBA(Expected Batting Average)やxSLG(Expected Slugging Percentage)といった新しい指標は重要なデータになる。これらは、打球速度や打球角度といったトラッキングデータにより算出される予測値(xBAが打率、xSLGが長打率の予測値となる)であり、2018年マルティネスはこれらの数字が秀でていた。とくにxBAは500打席以上の選手のなかで4位(.309)と、マイク・トラウトやフランシスコ・リンドーアといったスーパースターよりも高かった。
2019年は、シルバースラッガー賞4度獲得の強打者ポール・ゴールドシュミットがカージナルスに加入したことにより出場機会が減少。レギュラーシーズンでは結果を残せなかったが、ポストシーズンでは打率.538、出塁率.538、長打率.692という驚異的な活躍を見せた。
また、マルティネスはフィールド外でも存在感がある。その陽気なキャラクターはファンやチームメイトから愛され、いつも周りを明るくさせた。カージナルスもトレードに出した際には、「君はチームに笑いと笑顔と、それからコーヒー(マルティネスの愛称は“カフェ“)をもたらしてくれた。タンパでも頑張れよ」とツイートし、新天地での健闘を祈った。
カステヤノス、トレード後に驚異の活躍
レッズが新たに獲得したニコラス・カステヤノスは、昨シーズンの途中にカブスに来る前まで、実力ほどには目立たない選手だった。タイガース時代の2018年は157試合に出場し、打率.298、出塁率.354、長打率.500という素晴らしい成績を残したが、ア・リーグ中地区が“弱い”地区だったために実力を過小評価されてしまったのかもしれない(その年、タイガースは64勝98敗。100敗目前だったにもかかわらず3位だった)。
だが2019年8月、ポストシーズン争い真っ只中のカブスに加わると、カステヤノスは地元テレビ局のNBCスポーツ・シカゴが言うように「ファンが最も打席を見逃せない選手」となった。カブスでは51試合に出場し、打率.321、出塁率.356、長打率.646、OPS1.002をマーク。とくにホームのリグレーフィールドではめっぽう強く、打率.384、出塁率.412、長打率.750、OPS1.162だった。結局カブスはポストシーズンを逃したが、カステヤノスの市場価値が高まったのはその大型契約の金額からでも計り知ることができる。
カステヤノスの加入により、レッズの外野手争いは熾烈を極めることとなった。一部ではセンターでの起用が考えられるセンゼルのトレードの可能性が報じられる一方で、贅沢税との兼ね合いから簡単にはことが進まないだろうという報道もある。また、サードのレギュラーであるエウヘニオ・スアレスが28日に負傷したが、レッズGMはマイナーでサードの経験を持つセンゼルを代わりに起用する考えはないと言う。
スプリングトレーニングが始まるのは、秋山、筒香ともに2月18日。レギュラー確保へ、アピールが期待される。
※日付は現地時間