田中将大「納得はまったくしてない」
「勝ちも少ないし、負けも多いし、防御率も高いし…。納得はまったくしてないですね」
ヤンキースの田中将大がそう語ったのは1月2日、自身がMCを務めたラジオ番組「田中将大のオールナイトニッポンNY」でのことだった。
2019年シーズンの田中将大を簡単に振り返ってみると、先発として31試合に登板し11勝9敗、防御率4.45という成績だった。田中自身が「納得がいかない」と言うように防御率4.45は、メジャー6年間で2番目に悪い数字である。また、7月25日のレッドソックス戦ではヤンキース史上ワースト2位の12失点という不名誉な記録を残してしまった。
落ちないスプリット 苦戦のなか見せた修正力
田中将大が2019年シーズンに苦戦したのはなぜだろうか。その要因の一つとして、彼の“伝家の宝刀”であるスプリットが機能していなかったことが挙げられる。ただ、その原因はおそらく田中自身ではなく、ボール自体にあった。
シーズンオフにMLBの調査機関が発表したところによると、2019年に使われたボールの縫い目は、わずかながら2018年よりも低かったのだ。縫い目が低いとボールへの抵抗が失われ、下への変化が乏しくなる。MLB公式のデータサイト・ベースボールサーバントによると、2019年の田中将大のスプリットは2018年より2.1インチ(約5.3センチ)も落ちなくなっている。
12失点を喫したレッドソックス戦のあと、田中はスプリットの握りを大きく変更する調整をしていると発言。米スポーツサイトのジ・アスレティックによると、「指を縫い目に沿うようにする握り方から、指と縫い目がクロスする握り方」へと変更した。
月間の投手成績を見てみると、握りを変えたことが防御率の改善につながっていることが見てとれる。6月が5.08、7月が8.77だった防御率は、8月が3.31、9月・10月が4.32と安定した。また、自信の表れかスプリットへの依存度も増し、7月まで30%を切っていたスプリットの投球割合は8月が31.9%、9月が31.5%となっている。
苦戦しながらも見せた修正力は流石の一言。終わってみれば先発31試合はヤンキースのスターター陣の中で最多で、規定投球回に達したのはチームで田中だけだった。また、マジック1で迎えた9月19日のエンゼルス戦では7回1失点と好投。2014年に渡米して以来初となる地区優勝に輝いた。
2020年は最強ローテの一角に
今オフ、ヤンキースはFAのゲリット・コールを獲得した。9年総額3億2400万ドル(約353億円)は投手史上最高額である。いまさら説明するまでもないが、コールは現在のメジャーリーグにおいて最高の先発投手の一人である。昨シーズンは20勝(5敗)を挙げ、防御率2.50はア・リーグでトップ、326奪三振は30球団のなかで最多だった。
また、怪我の影響で昨年3試合しか登板できなかったルイス・セベリーノも今季は戻ってくる。セベリーノは17年に14勝6敗(防御率2.98)、18年に19勝8敗(防御率3.39)と好成績を残した実力者である。現在、25歳と年齢も若く、ヤンキースの未来を背負うエースと目されている。また、ジェイムズ・パクストンとJA.ハップのサウスポーコンビも忘れてはならない。
コール、セベリーノ、そして田中将大。ヤンキースの先発ローテーションは、アメリカの報道でも評判が高く、なかには「球界最高」という呼び声もある。メジャーリーグの名門、ヤンキースは松井秀喜氏がシリーズMVPになった2009年以降ワールドチャンピオンになっていない。悲願の世界一へ、田中将大が最強ローテの一角として活躍することを期待したい。
※日付は現地時間