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MLBで一番コントロールが良いのは誰か? 2019年成績をもとにランキング

2020 2/2 06:00棗和貴
ドジャース時代の柳賢振投手Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

コントロールがいいとは何か、MLBで使われる二つの定義

メジャーリーグではピッチャーの制球力を表すために二つの定義が用いられる。一つ目はコントロール。これは、当たり前かもしれないが、ストライク・ゾーンに投げる能力のことであり、いかにフォアボールを出さなかったかで判断できる。

二つ目はコマンドと呼ばれ、言ってみれば投球を自在に操る能力である。コマンドに長けている投手は、いわゆる「針の穴を通すような」制球力の持ち主であり、例えばバッターが有利なカウントでもストライク・ゾーンのギリギリに投げられる。米サイトのベースボール・プロスペクタスでは、コマンドを表すためにうってつけの指標を提供している。

CSAA(Called Strikes Above Average)と呼ばれるそのスタッツは、捕手や試合状況などを除外して、ピッチャーのみで生み出した追加的なストライクの割合を意味する。簡単に言えば、捕手で言うところのフレーミング能力の投手版であり、審判が思わずストライクとコールしてしまうほどギリギリのコースにどれだけ投げたかを表している。

今回、MLBで一番、制球力がいいピッチャーは誰か判断するうえで、このコントロールとコマンドを重視してみた。近年では制球力の指標としてK/BBも使われるが、この指標は制球力というよりは「三振も取れて、コントロールもいい」という、ある種ピッチャーの理想形を示すものとして参考にしたいと思う。

なお、今回のランキングは先発投手のみとした。

MLBで一番制球力があるのは誰か

表・制球力が良い先発投手ランキングⒸSPAIA


1.柳賢振(ブルージェイズ)
2019年、リーグ1位となる防御率2.32の成績を残し、サイ・ヤング賞レースで2位となった韓国人左腕。コントロールの良さは折り紙つきで、BB/9は150イニング以上投げた先発投手のなかで最も良い1.18だった。つまり、この数字はほとんどの試合で四球を複数出さないことを意味する。ドジャースから今季ブルージェイズに移籍し、エースとしての活躍を期待されている。

2ザック・グレインキー(アストロズ)
グレインキーに関して特筆すべきは、ストライク・ゾーンに投げる割合(ZONE%)がMLB全体の平均より低いにもかかわらず、BB/9やK/BBといった指標が素晴らしいという点である。それを可能にするのは、彼の多様な球種の精度。とくにチェンジアップとカーブのCHASE%(ボール・ゾーンを振らせた割合)はともに40%を超えており、ボール球で勝負ができる強みを持っている。

3カイル・ヘンドリックス(カブス)
「プロフェッサー(教授)」というニックネームがつくほどの技巧派ピッチャー。その正確無比な制球力は、同僚のダルビッシュ有が「図抜けている」と絶賛したほど。2019年5月3日、ヘンドリックスはその制球力によってある偉業を達成した。「マダックス(100球以内で完封すること)」を、わずか81球で成し遂げたのだ。「たまたまです」。試合後のコメントは、教授らしくクールだった。

4ザック・デイビーズ(パドレス)
BB/9が150イニング以上投げた先発投手のなかで44位と、下から数えた方が早いデイビーズを4位に入れたのは、ひとえにCSAAの高さ故である。CSAAは3.13%で、MLBの先発投手のなかで最も高い。ファストボールの平均球速が88.1マイル(141.8キロ)と最下層に入るデイビーズだが、その抜群のコマンド能力で昨シーズンは防御率3.55という好成績を収めた。

5マックス・シャーザー(ナショナルズ)
サイ・ヤング賞3度獲得の本格派ピッチャーで、制球力も抜群。BB/9もCSAAも先発投手(150イニング以上)の10位以内に入っている。K/BBは7.36で1位だった。ちなみに昨年150イニング以上投げた先発でK/BBが7点台だったのは、シャーザーとアストロズのバーランダーのみ。いまのMLBは、30代半ばのこのベテラン2人がピッチャーの理想形として君臨しているのだ。