栽弘義監督率いる豊見城が夏の甲子園3年連続8強
沖縄が本土に復帰して50年が経った。まだアメリカ統治下にあった1958年に甲子園初出場した首里ナインは、初戦敗退して甲子園の土を持ち帰ったものの、那覇港で検疫に抵触したため捨てられてしまった逸話が残る。先人たちの涙や苦労を乗り越え、今では高校球界でも全国屈指の強豪県のひとつとなった沖縄。歴代代表校の活躍を振り返る。
沖縄県勢の甲子園初勝利は1963年夏。2度目の出場となった首里が初戦で日大山形を下し、記念すべき1勝を挙げた。それから5年後、1968年夏に快進撃を見せたのが興南だ。現監督の我喜屋優主将が4番として出場し、岡谷工、岐阜南、海星を破って8強入り。準々決勝では盛岡一を10-4で下してベスト4まで勝ち進んだ。準決勝で優勝した興国に敗れたものの「興南旋風」は大きな話題となり、船で戻った沖縄では盛大に迎えられたという。
本土復帰となった1972年夏の甲子園には名護が初出場。初戦で足利工に敗れた。
1970年代後半から躍進したのが栽弘義監督率いる豊見城だ。1975年センバツに初出場すると習志野、日大山形を破ってベスト8。準々決勝で原辰徳のいた東海大相模に逆転サヨナラ負けした。
さらに1976年から3年連続で夏の甲子園ベスト8入り。1978年ドラフト2位で阪急入りしてプロ通算269本塁打をマークした石嶺和彦が4番として活躍した。
沖縄水産は2年連続準優勝
1980年からは興南が4年連続で夏の甲子園に出場。後に阪神入りする左腕・仲田幸司は1982年夏(3回戦進出)から1983年センバツ(初戦敗退)、同年夏(2回戦進出)と3季連続で出場した。
1980年代半ばから台頭したのが沖縄水産。栽監督が豊見城から転任し、1984年から5年連続で夏の甲子園に出場した。1987年ドラフト3位で中日入りする右腕・上原晃を擁して1986年夏にはベスト8進出。3年生だった1987年夏は2回戦で準優勝した常総学院に敗れた。
そして迎えた1990年夏。沖縄水産は高崎商、甲府工、八幡商、横浜商、山陽を撃破し、初めての決勝進出。長身右腕・南竜次を擁した天理に0-1で敗れたが、日本一に手の届くところまで来た沖縄水産の躍進は全国の野球ファンの感動を呼んだ。
さらに翌1991年夏もエース大野倫の力投で進撃。北照、明徳義塾、宇部商、柳川、鹿児島実を破って2年連続で決勝にコマを進めた。相手は初出場の大阪桐蔭。阪神にドラフト1位で入団した萩原誠に本塁打を許すなど13点を失い、8-13で敗れた。沖縄県勢が全国的に強豪県として認知されるようになったのはこの頃からだろう。
沖縄尚学がセンバツ2度の優勝、興南は春夏連覇
1990年代は浦添商、那覇商、前原なども甲子園の土を踏み、ついに全国の頂点に立ったのが1999年センバツだった。2度目の出場だった沖縄尚学は現監督のエース比嘉公也を擁して比叡山、浜田、市川を撃破。準決勝でPL学園を延長12回の末に8-6で振り切り、決勝では水戸商に7-2の快勝で紫紺の大旗をつかんだ。首里が初出場してから41年。悲願の初優勝に沖縄が沸いた。
2001年センバツでは21世紀枠で出場した宜野座がベスト4進出。2006年には石垣島の八重山商工が、卒業後にロッテ入りするエース大嶺祐太を擁して春夏連続で甲子園に出場した。
そして2008年センバツでは、沖縄尚学がエース東浜巨(現ソフトバンク)の力投で聖光学院、明徳義塾、天理、東洋大姫路を破って勝ち進んだ。決勝は聖望学園に9-0で完封勝ちし、2度目のセンバツ優勝を飾った。9年前にエースだった比嘉公也が監督としても頂点に立った。
さらに2年後には興南が偉業を成し遂げる。後にソフトバンク入りするエース左腕・島袋洋奨を擁して2010年センバツで優勝。関西、智弁和歌山、帝京、大垣日大、日大三にいずれも完勝する堂々の勝ちっぷりだった。
夏も鳴門、明徳義塾、仙台育英、聖光学院、報徳学園を破り、決勝で東海大相模に13-1と大勝して史上6校目の春夏連覇を達成。指揮を執ったのは返還前の1968年夏に「興南旋風」を巻き起こした時の主将、我喜屋優監督だった。
その後も2012年夏に浦添商が3回戦進出。2014年は沖縄尚学が春夏連続ベスト8入りするなど上位進出を果たしている。
では、「沖縄最強」はどの高校だろう。時代によっても違うのは当然だが、トータルで見ると甲子園出場回数は興南が春夏計16回、沖縄尚学が15回、優勝回数も2回ずつと遜色ないものの、興南が沖縄尚学を少し上回るだろうか。
いずれにしても沖縄水産や豊見城なども含め、各校がそれぞれの時代を彩り、高校野球史において存在感を放ってきたことは確かだ。本土復帰50年の今、改めて歴史の重みを認識し、野球ができる喜び、観戦できる幸せをかみしめたい。
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