6月7日、北九州市民球場で
福岡県屈指の県立進学校で、共に「文武両道」「質実剛健」を校是とする小倉高校と東筑高校の定期野球大会(定期戦)が、6月7日、北九州市民球場で行われる。
新型コロナウィルスの影響により、2019年(令和元年)以来、3年ぶりの開催となる「九州の早慶戦」は、今回が30回目の記念大会。依然として続くコロナ禍の影響で、名物である吹奏楽部の演奏や、声を出してのエール交換や応援合戦、一般客の観戦などは直前まで状況を見極めての判断となるが、両校合わせて2000人近い全校生徒は応援に駆けつける予定。甲子園出場経験を持つ名門校同士が夏の大会を前に火花を散らす。
両校全校生徒による統制のとれた壮大かつ荘厳な応援合戦
第1回大会は1991年(平成3年)。全校生徒やOB、地域住民の応援を通し、北九州市の活性化の一助になればと両校の同窓会が動き、市や企業団体などと協議を重ね、数年がかりで開催にこぎつけた。
入学した1年生はまず、定期戦に向けて、授業や放課後の時間を割いて応援練習が課されるのが伝統。小倉は紫紺、東筑はエンジのスクールカラーを基調として、統制のとれた壮大かつ荘厳な応援合戦はこうして歴史を紡いできた。
東筑高校野球部提供
コロナの影響で2年中止、ようやく行われる30回大会
だが、本来なら2020年(令和2年)に開催されていたはずの30回大会は延期を余儀なくされた。2021年(令和3年)も開催直前に中止となった。
昨年の東筑高校エースだった大越怜さんは、1年生だった2019年(令和元年)の29回大会を、北九州市民球場の三塁側スタンドから羨望の眼差しで見つめていた。
「盛り上がりが凄くて、先輩が本塁打を打って盛り上がる歓声を聞いて自分も1年後、2年後は定期戦に出たいというのがあった。同じ部員の中でも定期戦で本塁打を打ちたいとか、百何十キロ出したいとか、目標を口に出してやっていた。入学してすぐだったので、みんなのモチベーションになっていたと思います」と当時を回顧する。
その目標とした試合は2年間行われることなく卒業。現在、立教大学野球部1年生の大越さんは「(東京六大学の新人戦にあたる)フレッシュリーグが終わって、日程が合えば応援に行きたいです」。観戦が叶えば、3年越しの思いを後輩に託すつもりだ。
東筑高校・青野監督「夏の大会前に凄くいい経験」
指揮官にとっても大事な夏の大会前の試金石となる。東筑高校の青野浩彦監督は「全校生徒の応援で、たくさん観客がいる中でプレーするから、夏の大会前に凄くいい経験にはなる」と開催の意義を説明。3年生にとっては今回が最初で最後の定期戦となるだけに「お祭りの意味合いも強い。
あまり日の目を浴びていない3年生をできるだけ使ってやりたいという思いもある」。最上級生に得難い経験を積ませながら、全校生徒に2016年(平成28年)以来、6年ぶりの勝利を届ける。
1908年(明治41年)に創立された小倉高校は戦後すぐの高校野球界をリードしてきた。1910年(明治43年)に創部されると、1919年(大正8年)、小倉中学の名前で夏の選手権に初出場。1947年(昭和22年)センバツで準優勝すると、同年夏の選手権で初優勝。翌48年(昭和23年)夏の選手権では福嶋一雄投手が5試合連続完封、45イニング連続無失点の金字塔を打ち立て、夏2連覇の偉業を果たすなど、春11回、夏10回の出場回数を誇る。
対する東筑高校は1898年(明治31年)創立と小倉高校より歴史は古く、野球部は1900年(明治33年)に創部。のちに近鉄、オリックスで監督を務めた仰木彬投手を擁し、1953年(昭和28年)夏の選手権に初出場。夏6度、春3度のうち、石田姓の投手で夏に4度出場するなど「石田伝説」でも話題となった。
5月の北九州市長杯準決勝では東筑高校が勝利
小倉高校は1978年(昭和53年)センバツ出場を最後に甲子園から遠ざかっており、近年は東筑高校の方が戦績は優勢ではあるが、定期戦に限れば小倉15勝、東筑13勝(1引き分け)と小倉高校が勝ち越している。
両校は定期戦に先立ち、5月に行われた北九州市長杯準決勝で対戦。東筑高校が4-3で小倉高校を振り切り、その勢いのまま優勝を果たした。進学率でも部活動でも覇を競い合う両雄。今年はどんなドラマが生まれるのか。3年ぶりの開催をオールドファンも心待ちにしている。
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