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関メディが目指す中学野球1万人動員プロジェクト、“超中学級”スラッガーに注目!

井戸伸年総監督,関メディベースボール学院提供
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関メディベースボール学院提供

3月4日に大阪・舞洲で中等部の引退試合

スポーツにおけるプロとアマの最大の違いは何だろうか。お金をもらうか否かはもちろん、常にファンや観客から見られていることも大きな違いだ。

見られている意識が時として人を成長させることがある。多感な十代でそれを経験することは、その後の人生や人格形成に大きな影響を及ぼすだろう。

兵庫県西宮市にある野球専門校「関メディベースボール学院」の井戸伸年総監督(45)が中等部の生徒に大号令をかけている。2023年3月4日に大阪・舞洲にある大阪シティ信用金庫スタジアムで中学3年生の引退試合を予定しており、観客1万人を動員しようというのだ。

同スタジアムの収容人員は1万人とされている。高校野球大阪大会のメイン球場として使用されているが、満員になることはほとんどない。2015年夏の大阪桐蔭対履正社戦で観衆1万3000人と発表されたことはあるものの、舞洲は埋め立てられた人工島で交通アクセスが悪いこともあって、高校野球の決勝でさえ1万人が入ることは珍しいのだ。

それを中学野球、しかも公式戦ではない、3年生の引退試合で実現しようというのだから荒唐無稽にも見える。しかし、井戸監督には狙いがある。

「1万人を集めるためにどうすればいいかを生徒たちに考えさせています。今の中学生はみんなスマホを持っているのでSNSを使ってもいいし、友達やご近所さんに告知してもいい。うちの子供たちは甲子園に出てプロを目指したい選手ばかりなので、今のうちからファンやPRの大切さを知ることも必要だし、考えて行動することで自主性も養われます。今までのように言われた通りに野球だけやっていればいいという時代ではないんです」

関メディベースボール学院の選手に指示する井戸伸年総監督

関メディベースボール学院提供


もちろん、チーム関係者や選手の親、友人、知人などにも協力を要請。井戸総監督は親世代にはこう説明するという。

「例えば、挨拶が大切なのは当たり前ですが、“見られる意識”を高めれば自然と挨拶するようになるし、人間性が磨かれます」

口コミだけでなく、ツイッター、インスタグラム、フェイスブックなどSNSも駆使し、人が人を呼んで満員のスタジアムでプレーすることになれば生徒にとって貴重な成功体験となるだろう。単なる思い出作りではなく、自分たちの力で満員にできた達成感を味わい、満員の観客から見られる喜びと重圧を感じながらプレーする経験は、その後の人生で間違いなく役に立つ。

営利目的ではないため入場は無料。あくまで選手のことを考えての計画なのだ。

全国の強豪校に卒業生を輩出「進学率100%」

井戸総監督は兵庫・育英高から徳山大に進み、住友金属鹿島時代は都市対抗に出場して東京ドームの右中間スタンドに特大アーチを放り込んだ実績を持つ。

その後、渡米してホワイトソックスの1Aでプレーし、2002年ドラフト8位で近鉄に入団。26歳でようやく念願のプロ入りを果たしたものの、現役3年間で一度も一軍の舞台に立つことはできなかった。栄光も挫折も知る苦労人だ。

引退後は追手門学院大の監督やHonda鈴鹿のコーチなども務めながら、関メディ総監督として指揮を執る。肩書は「総監督」だが、学校の経営から選手を全国の高校へ送り出すためのパイプ作りまで全てをこなす。

同学院中等部の生徒を履正社、東海大相模、健大高崎、敦賀気比、盛岡大付、鳥取城北など全国の強豪校に輩出。「進学率100%」と胸を張るのも、持ち前の明るさと長い野球人生で培った人脈があるからだ。

侍ジャパンU-15の4番・金本貫汰

現在の中等部には金本貫汰(3年)という“超中学級”スラッガーがいる。中学生ながら身長180センチ、体重82キロの体格を誇り、U-15ワールドカップでは侍ジャパンU-15の4番を務め、甲子園で開催されたタイガースカップでは特大本塁打を放り込んだ。

関メディベースボール学院の金本貫汰

関メディベースボール学院提供


すでに多くのメディアで取り上げられており、コアな野球ファンからは知られた存在だ。近い将来、甲子園を沸かせるスターになる素質を持つことは間違いない。

引退試合はその金本を目玉に1年生、2年生も試合をさせることで全国の強豪高校のスカウト陣も集まる。見られているから選手たちも張り切るという好循環が生まれるのだ。

1月には明石ボーイズの剛腕・福田拓翔と対決

引退試合の前に、まずは1月14日に四国の強豪「高松庵治ヤングストーンズ」と、翌15日には「明石ボーイズ」と舞洲で試合を予定。明石ボーイズには、中3ながら最速142キロを投げる右腕・福田拓翔がおり、金本vs福田は将来の日本球界を担う可能性を秘めた強打者と剛腕の対決となる。

しかも明石ボーイズは、井戸総監督とドラフト同期で近鉄に入団した筧裕次郎氏が指導する。金本vs福田は「元近鉄戦士の同期対決」とも言え、話題性も高い。

1月の2試合で金本の存在を知らしめることができれば、3月の引退試合で1万人を集客することもあながち不可能とは言い切れない。中学野球に革命を起こす関メディのビッグプロジェクトに注目だ。

関メディベースボール学院の選手たち

関メディベースボール学院提供

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