ダルビッシュ有も活用するラプソード
兵庫県西宮市にある野球専門校「関メディベースボール学院」が野球の投球や打球をカメラとレーダーで計測、分析するデータトラッキング機器「ラプソード」を導入した。
パドレスのダルビッシュ有が投球練習で活用している様子をYouTubeで公開して話題になったことがあるが、すでにメジャーリーグはもちろん、日本のプロ野球でも導入されており、アマチュアも含めて日本球界でも少しずつ浸透している。
とはいえ、中学野球で導入するのは異例だろう。同学院では中等部の投手のデータを計測し、感覚だけに頼らない科学的な指導に役立てている。
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データによって選手個々の課題が明確に
投手の能力を示すデータで最もメジャーなのは球速だ。アマチュア投手がドラフト候補に挙がると「最速150キロ」などといった数字が踊る。しかし、当然ながらスピードだけでは本当の能力やボールの質までは分からない。
そこで、球質を「見える化」するのがラプソードだ。捕手の前に設置し、ボールの回転数や変化量などを計測することで、どれくらいストレートが伸びているのか、あるいは変化球が曲がっているのか、より具体的に分かるようになる。
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例えば投手がストレートを投げた場合、指から離れたボールが空気抵抗を受けてバックスピンするため、回転数が多いほど自然落下に比べてホップする。ただ、回転数が多くても、回転軸が捕手方向と正対せず斜めになっていると風を逃してロスが出る。
たとえ150キロのストレートを投げる投手でも、変化量が少ないと空振りが取れなかったり、打ち返されたりする可能性も高まる。数値化によってそうしたことが浮き彫りになるため、選手一人一人の課題が明確になるのだ。
関メディでは、ラプソードで計測したデータや投球フォームを撮影した動画をすぐにモニター画面で確認し、選手たちに落とし込んでいく。
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そのデータに基づき、ダルビッシュ有や田中将大らを一流投手に育て上げた佐藤義則氏ら同学院が誇るハイレベルなコーチ陣が指導。選手たちは最短距離で理想のボールを投げる投手に近付けるというわけだ。
プロでも一から学んでいるようなことを中学生で学べる環境は、日本広しと言えどもそう多くはないだろう。
データ収集によってケガの予防にも役立つ
同学院の室内練習場のブルペンでラプソードを体感した井上友吾投手(14)は「自分の課題が明確になります。回転効率のいい投げ方を身に付けて、いつか150キロを出したい」と瞳を輝かせた。
井戸伸年総監督(45)は狙いをこう説明する。
「一番は個人のスキルアップですが、今の子供は球が速いので、成長期においてはケガのリスクがあります。そのリスクをいかに減らすかが課題でした。故障する危険性があるかどうか知るにはデータが必要。それによって球数や登板数を減らしたりすれば、故障の予防につながります」
さらに「数値として見えることによって目標を立てやすくなります。明確な目標があるとトレーニングの励み方も変わるし、コーチやスタッフも指導しやすくなりますね」と相乗効果をメリットに挙げた。
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同学院では今後も定期的にデータを計測し、体に負担をかけずに理想の投手となれるようラプソードを活用していくという。まだまだ成長途上の中学時代にデータに基づいた科学的な指導を受けて土台を作ることは、間違いなくその後の野球人生で大きなアドバンテージとなる。
同学院中等部から甲子園のスターや将来のドラフト候補が誕生する日を楽しみに待ちたい。
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