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人気野球YouTube「トクサンTV」撮影の裏側、幻のメジャーリーグ企画も

トクサンこと徳田正憲さん(左)とライパチこと大塚卓さん,ⒸSPAIA
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徳田正憲さん(左)と大塚卓さん,ⒸSPAIA

チャンネル登録者数70万人

今や子供のなりたい職業にも挙がるYouTuber。数あるチャンネルの中で、野球ファンに圧倒的な人気を誇るのがトクサンTV【A&R】だ。

チャンネル登録者数は70万人を突破。プロ野球選手が自ら技術を伝える企画があれば、2人が体当たり取材を試みる企画、野球用具を紹介する企画など様々な番組を丁寧に作り込み、毎日午後6時30分に配信している。

トクサンこと徳田正憲さん(37)は帝京高、創価大で野球に打ち込み、大学4年時には主将として全日本大学選手権でベスト4に進出した実績の持ち主。相棒のライパチこと大塚卓さん(35)は高校時代に野球部で白球を追った根っからの野球好き。そんな二人が出会ったのが草野球チームだった。

大塚さんが1人で運営していた「ライパチボーイTV」に徳田さんが出演するようになり、「トクサンTV」を立ち上げたのが2016年8月15日。野球には詳しくても、YouTubeの運営については素人同然だったため、手探り状態でのスタートだった。

「最初は都内の街路樹の下からスタートしました。当初は筋トレとか、太っている方に太り方を聞くとか、そんな動画も散らばってましたね」と徳田さんは振り返る。

二人を指導したのが草野球のチームメイトで、「アニキ」の愛称で動画にも出演している平山勝雄さんだった。テレビ局のプロデューサーとして蓄積したノウハウを惜しみなく伝授。徳田さんは「編集のへの字も知らなかった」と当時を振り返るが、試行錯誤を繰り返しながら二人はスキルを上げ、再生回数も右肩上がりに増えていった。

迫力と臨場感のある映像を求めて

筆者が取材したのはポカポカ陽気の秋晴れの日、兵庫県西宮市内で行われた野球専門学校・関メディベースボール学院の練習だった。同学院・井戸伸年総監督(45)と二人の縁で、過去にもトクサンTVで注目選手や練習の様子などが取り上げられている。

球場に現れた二人は手際よく準備し、練習開始時に円陣を組んだ選手たちに徳田さんが挨拶。その様子を大塚さんが撮影する。

練習中は様々な角度から撮影しながら、ファウルグラウンドで選手に個別インタビューするなど、練習の流れを遮らず、決して邪魔にならないよう細心の注意を払う。

撮影中の徳田正憲さん

ⒸSPAIA


一瞬を逃さないよう時には走って、より良い角度から撮影したり、打撃練習では打撃ケージの中に三脚を立てて固定したカメラで撮影するなど、迫力と臨場感のある映像を撮るための苦心がうかがえた。

「狙いたい絵のイメージはありますが、人がやることなのでいつ飛び出るか分からない。常々難しさを感じてます」と徳田さん。いつ何が起こるか分からないのはスポーツの醍醐味であると同時に、YouTuber泣かせでもあるのだ。

アンテナ張ってネタ発掘、海外ロケも

それにしても毎日欠かさず動画をアップする苦労は相当だろう。登録者数70万人はその積み重ねだ。

公開スケジュールは週に1度の会議で決めている。徳田さんは「同じネタに偏ると飽きられてしまうので、例えば学童野球の翌日は野球ギアとか社会人野球などを入れて、毎日違うものを見せられるスケジュールにしています。それに合わせて編集していきます」と説明。時には収録した動画をその日のうちに公開することもあるという。

様々なネタを発掘する苦労は、メディア編集に携わる筆者も日々実感している。伝える手段が文章か動画かという違いだけだ。それに関しては大塚さんがアンテナを張り、常に情報収集していると語る。

「インスタをチェックしたり、ニュースを見たり、野球関連の情報は常に入れるようにしています。例えば練習方法をSNSに上げている人がいたら、SNS上でその練習の意図を聞いてみるんです。現役選手でも、元プロ野球選手でも、皆さん伝えたいからSNSをやってるので教えてくれる人は意外に多いです。それを代弁させていただくということです」

知名度も影響力も高まった今では、逆にネタが転がり込んでくることも少なくない。企業や団体からタイアップや宣伝効果のある動画を依頼されることもある。元々は単なる野球好きの素人が、巨人やソフトバンクなどNPB球団とコラボするなど、ジャパニーズドリームと言っても過言ではないだろう。

新型コロナの感染拡大によって延期となったが、ダルビッシュ有との対決企画など一時はメジャーリーグとのコラボ案も具体化していたという。

「コロナ前には中国、台湾、インドネシアにも行かせてもらいました。いろんな人とのつながりで幅が広がっていってます」と徳田さん。今や日本にとどまらず、世界を股にかけたYouTuber。野球への愛と人とのつながりを大切にしながら「トクサンTV」の撮影は今日もどこかで行われている。

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