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箱根駅伝で雪辱を期す東海大・名取燎太と青山学院大・吉田圭太の本音

2020 12/29 06:00鰐淵恭市
イメージ画像Ⓒlzf/Shutterstock.com
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全日本大学駅伝でアンカー勝負に敗れる屈辱

来年の1月2、3日に行われる第97回箱根駅伝で気になる選手がいる。2年ぶりの優勝を目指す東海大の名取燎太(4年、長野・佐久長聖)と、連覇を狙う青山学院大の吉田圭太(4年、広島・世羅)。まれに見る激戦となった11月の全日本大学駅伝で、アンカー勝負に負けた2人である。箱根路は「敗者」に雪辱の機会を与えてくれるだろうか。

「どこを走っても区間賞」東海大・名取燎太

勝負事は、勝者と敗者の光と影を如実に表す時がある。今年の全日本がまさにそうだった。

「3強」と呼ばれた駒大、青山学院大、東海大が最終8区で並走する展開に。3強の中で強い光を放ったのは駒大の田沢廉(2年、青森山田)だった。

残り1・2キロのスパートで東海大を振り切って優勝。雄たけびを上げながらゴールした田沢とは対照的に、敗れた東海大の名取と、最終的に4位まで順位を下げた青山学院大の吉田は、文字通り肩を落とし、うなだれる姿がそこにはあった。

東海大の名取は、レース後のオンライン会見では淡々と答えていた。

「想像以上に足が動かなくてついていけなかったです。引っ張っていたというのを言い訳にしてはいけないですが、わりと風が強かったのもあって消耗してしまったのが後半にも響いてしまったのがあります」。

そして、「勝ちきれなかったのは自分の力のなさ」と自らを責めた。

あれから1カ月。名取は屈辱の敗戦をどうとらえているのだろう。

「すごく精神的に追い込まれた部分があったんですけど、やっぱり勝ちきれるのが本当のエースなんじゃないかな」。

箱根も間近に迫り、全日本直後よりも前向きにとらえている名取がいた。

もちろん、そう思わせてくれたのは、仲間のおかげだろう。基本、個人種目になる陸上競技だが、駅伝は違う。たすきをつなぐメンバーだけでなく、レースに出られなかった選手たちの思いも背負いながら走る。だからこそ、感じる責任も重いが、励まされる力も大きい。

全日本の後、LINEですぐにメッセージが飛び交ったという。そして、「箱根駅伝では絶対勝とう」という思いになれた。そして、箱根では東海大のエースらしく、花の2区(23.1キロ)に配置された。

区間エントリーが決まる前には、「どこを走っても区間賞を取れるような成績を残せればいいなと思います」と語っていた名取。雪辱への気持ちは強い。

「笑って終わりたい」青学大・吉田圭太

全日本で、力が出せなかったという意味では、名取以上に悔しい思いをしたのが、青山学院大の吉田だろう。

アンカーとしてたすきを受けた時は、2位東海大とは39秒、3位駒大とは41秒差の1位だった。7区で同じ4年生の神林勇太(熊本・九州学院)が区間賞の走りで、6位から順位を上げ、さらに「貯金」までつくってくれた。

それなのに、9キロ付近で駒大、東海大に並ばれ、11キロ付近で置いていかれた。さらに明大にも抜かれ、4位でゴール。5000メートルで青山学院大記録の13分37秒34を持つエースが区間11位に沈んだ。

レース後の吉田はさすがに落ち込んでいた。「僕の不甲斐ない走りで途中から離れてしまって優勝争いができず、4年生として本当に悔しいです」

もちろん、不調の理由はあった。全日本の3週間前に軽いケガをしてしまい、調整に狂いが出た。とはいえ、それを言い訳にすることもできず、責任を強く感じた。

ただ、吉田の場合も、苦しい思いを振り払ってくれたのは仲間だった。

吉田はレース後すぐ、神林にLINEを送った。「本当に申し訳ない」という言葉があったという。ただ、神林は吉田を責めなかった。下級生時代からチームを支える活躍をしてきた吉田の姿を見てきたからだ。

「たぶん一生勝てない相手なんだろうなと思いながら、少しでも近づけるように4年間頑張ってきた」と神林。だから、神林は「お前のせいではない。まずは心と体をしっかり休めて」という言葉を返したという。

吉田にとって、最後の学生駅伝となる来年の箱根。「自分自身が悔いなく笑って終わりたい」。区間エントリーでは「スタートダッシュ」となる1区に配置された。チームを勢いづかせる走りが、仲間への恩返しになる。

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