ウィンブルドンが7月1日に開幕
いよいよシーズン中盤に差し掛かり、舞台は芝へと移る。全仏ベスト8という成績を残した錦織圭は右上腕部の痛みで前哨戦のノベンティオープン(ドイツ・ハレ)を欠場。右腕の状態は懸念されるが、ウィンブルドンに向け、すでにロンドンに到着し、芝での練習を開始した。
錦織と言えば、ハードやクレーに比べると芝が苦手と評されている。芝での勝率は61.0%で、ハードの68.2%、クレーの70.2%に比べれば少々苦戦している。錦織も「芝のコートに入ると、相手が強く見える」と述べており、ある意味、芝への「抵抗感」を口にしていた。
芝は足元をとられやすく球足も速いことから、錦織のフットワークを生かしたプレーが出しにくい。そのような状況の中でも結果を残すために、錦織はどのような課題をクリアする必要があるのだろうか。
課題はブレークチャンスを増やすこと
フットワークを生かしづらく、ビッグサーバーが有利になりやすい芝では、リターンゲームでの一瞬のチャンスを逃さないことがポイントになる。
ATPの公式サイトには各サーフェスでのポイント獲得率を示したスタッツが公開されている。今回は錦織の芝におけるリターンゲームのスタッツを他のサーフェスと比較しながら見てみよう。

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スタッツを見てみると、やはり芝ではビッグサーバーが有利になりやすいことから、リターンゲームに重要なスタッツが他のコートに比べて全体的に落ちている。
リターンゲームの勝率は、クレーの31%、ハードの27%と比べて22%とかなり低い。普段はリターンが得意な錦織が苦労している様子がうかがえる。それでも、2ndサーブのリターン率は52%と他と比較しても差はなく、ブレーク成功率も4割とそこまで悪い数字ではない。ただ、22%というリターンゲームの勝率を考えると、ブレークチャンスにまで持ち込めていないことが分かる。
最初に述べた一瞬のチャンスは逃していないので、ブレークチャンスを増やすことが、ウィンブルドンでの課題となる。
昨年のウィンブルドンを超えられるか
「芝は好きではない」と語っていた錦織は、昨年ケガからの復帰にも関わらず、自身初のウィンブルドンベスト8という記録を残した。準々決勝では天敵のノバク・ジョコビッチ(セルビア)に敗れたが、日本人男子では松岡修造以来23年ぶりの快挙だった。
錦織は昨年、ポイント間のルーティンを1球ずつもらうスタイルに変更するなど、とにかくサーブを安定させることに取り組んだ。2回戦では24本のエースを叩き込み、「一球入魂サーブ」で積極的に主導権を握るテニスを展開していった。リターンゲームがカギと述べたが、球足が速くなる芝のコートではサービスでのポイントも重要度が高まる。ハレ大会を回避し、全仏オープンの疲労を取ることにした錦織。
前哨戦の欠場により、芝の感覚を完全につかめるかどうかを心配する声も挙がっている。しかし、すでにプロ転向から12年。今回のウィンブルドンは錦織が苦手ながらも、培ってきた長年の経験を生かせるかどうかがグランドスラム制覇へのポイントになるかもしれない。
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