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錦織圭とBIG3の試合時間はここまで違う 今後は省エネ試合を増やすことが必須

2019 6/11 11:00中村光佑
全仏オープンテニス2019での錦織圭Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

錦織に必要な「省エネ」での勝ち上がり

春先にはマイアミとモンテカルロで初戦敗退しており、異なるサーフェスだったとはいえ不調な時期があった錦織圭。ところが、2019年の全仏オープンでベスト8という好成績を収め、グランドスラム4大会連続で8強以上への進出という記録も残した。ファンも、このような「カムバック」は予想していなかっただろう。

ベスト8に残ったのは、ジョコビッチやナダルをはじめ全員が上位シード選手。ならば、そこに残った錦織も評価されるべきだ。また、もしも序盤から錦織が「省エネ」の勝ち方をしていれば、「ナダルに善戦できたのでは?」という見方もある。

そこで、2019年全仏の準々決勝までに、錦織が超えなければならなかった壁の一つ「BIG3(ジョコビッチ、ナダル、フェデラー)」と比べて、どのくらい長くコートに立っていたのか、落としたセット数や許したブレークの数はいくつなのか検証してみた。

サービスキープに安定感が欠けていた錦織

準々決勝までの合計試合時間と落としたセット数及び被ブレーク率ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

表を見れば、錦織の試合時間がBIG3と比べてはるかに長いことがわかる。

3回戦では4時間26分のフルセットマッチ、4回戦では2日間にわたって3時間55分のフルセットマッチと、準々決勝までに13時間22分もコートに立っていた錦織。一方、BIG3は全員が10時間以下。特にジョコビッチと錦織の合計試合時間には、約7時間もの差がある。

この原因は、まずは落としたセット数だ。BIG3は0か1に抑えているのに対し、錦織は5つのセットを落としている。

もう一つ、BIG3と比べて被ブレーク数が圧倒的に多いことも、試合時間を長引かせる要因として考えられる。

錦織のブレーク数は31と4人の中で最も多いが、BIG3が5以下の被ブレーク数も18と多い。このことから、錦織はサービスキープの安定感が欠けていると考えられる。

タイミングにもよるが、ブレーク数に対してこれだけ被ブレーク数が多いということは、相手を圧倒することは難しくなる。また、リードしていてもすぐに追いつかれる可能性もあり、簡単に1セットを取れなくなることにもつながる。

錦織の場合、3回戦の第2セットで4-2とリードしていながらも、第7ゲームでブレークを許したことで流れが変わってしまった。しかし、BIG3は試合がもつれるほどのブレークは許さず、盤石な試合運びで「省エネ」の戦い方を実現した。ブレークのチャンスを逃さないこと、要所でのサービスキープができるかどうかが省エネ試合のカギになることは間違いないだろう。

ウィンブルドンへの課題は明確

準々決勝後に記者会見に応じた錦織は、体力面について「15とか20のタンクしかなかった」と評しており、やはり原因はこれまでの勝ち上がり方にあったことが明確。自身の課題が明らかになった今、最低でもストレートで勝てそうな相手には盤石な試合運びが求められる。

今年で30歳。グランドスラム制覇までのチャンスや体力のリカバリー能力を考えると、体力をしっかりと残した状態でBIG3などの高いレベルの相手との試合に臨みたいところだ。

とはいえ、2012年全豪の4回戦や、2014年の全米4回戦でのフルセットマッチで最終的に勝ち切れる強さがなければ、グランドスラム全大会での8強進出以上はなかったとも言える。

錦織のフルセットの勝率を考えれば悲観することはないが、これからのシーズンに向けて体力を残す勝ち方は急務だろう。